トキシコキネティクス/トキシコプロテオミクス解析による食品ナノマテリアルの免疫毒性リスク予測・回避法の開発

文献情報

文献番号
200939056A
報告書区分
総括
研究課題名
トキシコキネティクス/トキシコプロテオミクス解析による食品ナノマテリアルの免疫毒性リスク予測・回避法の開発
課題番号
H21-食品・若手-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 靖雄(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター 大阪大学薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 康弘((独)医薬基盤研究所)
  • 吉川 友章(大阪大学薬学研究科毒性学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当該申請課題は、食品ナノマテリアルの有用性を最大限に確保し、OECD主導で実施されているナノマテリアル安全性ガイドラインの策定に必須の安全性情報の提供を目的に、ナノマテリアル特有の物理化学的性状に起因する免疫毒性や口腔/消化管粘膜面における動態の連関情報の収集・把握を試みるものである。
研究方法
平成21年度には主に、非晶質シリカの①物性評価、②免疫毒性評価、を実施した。
結果と考察
本検討で用いた一次粒子径が30 nm、70 nm、300 nm、1000 nmのシリカは、いずれも分散性に優れており、カタログ値と同等の二次粒子径を持った粒子であることが判明した。そこで、これら様々な粒子径のシリカをマウス腹腔内へと投与することで、in vivoにおけるシリカの粒子径と起炎性との連関を評価した。その結果、粒子径300 nm、1000 nmのサブミクロンサイズのシリカ投与群では、起炎性はほとんど観察されなかったのに対して、粒子径30 nm、70 nmのナノシリカ投与群においては、有意な細胞浸潤数・炎症性サイトカイン産生の増大が認められるなど、ナノメートルサイズのナノシリカは強い起炎性を有している可能性が示された。また、ナノシリカが、マクロファージの細菌・ウイルスに対する自然免疫応答に及ぼす影響を解析した結果、細菌刺激により惹起される自然免疫応答を正 (炎症増悪) あるいは負 (免疫抑制) の方向へと大きく撹乱することが明らかとなった。次に、様々な粒子径のシリカをマウスに連日経口投与し、体重変化・臓器重量・生化学検査を経日的に評価した。その結果、粒子径が70 nmのナノシリカ投与群において、腸管組織傷害など目立った異常所見は観察されないものの、有意な体重減少・脾臓の重量増大が認められたことから、ナノシリカの経口投与によって免疫異常など生体へ何らかの影響を及ぼす可能性が示された。さらに、ナノシリカ投与群において、リンパ球や血小板の減少傾向が認められたことから、血液機能に影響を及ぼす可能性も示唆された。
結論
以上の結果から、ナノシリカは粒子サイズの違いによって異なる生体影響を引き起こす可能性が示唆され、その特徴的な物性に基づいた安全性評価を実施する必要性が示された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-21
更新日
-