下痢性貝毒のマウス・バイオアッセイの原理・機序の解明、および代替法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200939054A
報告書区分
総括
研究課題名
下痢性貝毒のマウス・バイオアッセイの原理・機序の解明、および代替法の開発に関する研究
課題番号
H21-食品・若手-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 穂高(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 町井 研士(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の下痢性貝毒の検査は、現在、マウスの生死によって判定するマウス・バイオアッセイ(MBA)が公定法とされている。諸外国においてもMBAは公定法、準公定法として広く用いられている。しかし、調べた限り、下痢性貝毒の腹腔内投与によりマウスが斃死する機序については報告がなかった。そこで、本研究ではまず、下痢性貝毒の腹腔内投与によるマウスの死因、すなわち、MBAの基本的な機序・原理について明らかにすることを第一の目的とした。
研究方法
下痢性貝毒の中から代表としてオカダ酸を選択した。致死量(MBAにおける1マウス・ユニットの4μg/匹)のオカダ酸を腹腔内に投与した後、マウスの致死率と致死時間、肉眼的な病理学的変化、血液学的変化、および体温変動等について経時的に調べた。
結果と考察
オカダ酸4μg/匹を腹腔内投与されたマウスの致死率は40~90%であり、ほとんどが投与後6時間以内に斃死していた。投与後10時間以降に斃死する個体は見られなかった。オカダ酸を投与されたマウスでは、消化管内に著明な液体の貯留が観察された。下痢性貝毒はヒトに経口的に摂取された場合にはヒトに下痢を起こすが、マウスの腹腔内に投与された場合にはマウスに死をもたらすことから、その毒性発現機序はまったく異なるという仮説の下に研究を始めたが、腹腔内投与によっても消化管に著明な病変が見られたことは非常に興味深い知見であった。この消化管の液体の貯留は投与後に飲水ビンを除去して絶飲状態にしても見られること、および血液のヘマトクリット値が投与後に急激に上昇を示すことから、血中の血漿成分が消化管内に漏出しているためと考えられた。また、オカダ酸を腹腔内投与されたマウスでは、投与1時間後に直腸温が35℃以下となるような急速な体温低下を示しており、投与3時間後には30℃を下回るような低体温状態となることが明らかになった。この著しい体温低下は、サーモグラフィーによる体表温の測定においても容易に検出可能であった。
結論
致死量のオカダ酸の腹腔内投与後数時間以内に、著明な消化管の液体の貯留や急激なヘマトクリット値の上昇が起こり、マウスの体温が著しく低下していることが分かった。致死率が24時間後の判定で40~90%なのに対し、体温の低下は投与2~3時間後に全てのマウスで例外なく認められたことから、体温低下を指標とすることでより迅速で高感度な判定となる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-