食品中成分から生成されるアクリルアミドのリスク管理対策に関する研究

文献情報

文献番号
200939046A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中成分から生成されるアクリルアミドのリスク管理対策に関する研究
課題番号
H21-食品・一般-012
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
今井 俊夫(国立がんセンター 研究所 実験動物管理室)
研究分担者(所属機関)
  • 梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
13,740,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加工食品中に含まれるアクリルアミド(AA)は遺伝毒性発がん物質あり、そのヒトへのリスクが懸念されている。一方、AAの発がん機序として遺伝毒性のほか内分泌環境の変化や酸化的ストレスの関与している可能性が指摘され、疫学的にも食品からのAA摂取量と子宮内膜がんとの関連性を示す報告がみられるが詳細は明らかではない。また、AAの職業暴露と膵がんとの関連性が否定できないとする報告があるが、マウス、ラットを用いた発がん性試験では膵管がんの発生はみられない。そこで本研究では、(1) 膵管発がん感受性を示すハムスターと非感受性のラットにおけるAAの発がん標的臓器および内分泌環境に及ぼす影響の種差 (2) AAによる酸化的DNA損傷の発がんへの関与 (3) AAの遺伝毒性の発現機序について検討することにより、AAの発がん機序およびヒトへの外挿性を明らかにし、AAのリスク管理対策に寄与することを目的とする。
研究方法
(1) ハムスターを用いたAAの飲水投与による発がん性予備試験を行い、発がん性試験を開始した。ラットについては内分泌環境に及ぼす影響を検討するための長期投与実験を開始した。(2) gpt deltaマウスを用いた AAの4週間投与実験を行い、肺における遺伝子突然変異と肺と肝臓における8-hydroxyguanosine量について比較検討した。(3) 幼若及び成熟ラットにAAを4週間投与した際の精巣などでの小核発生数とDNA付加体量、赤血球でのpig-A突然変異を比較検討した。
結果と考察
(1) ハムスターを用いた予備試験では、30 mg/kgで血液毒性がみられたが、精巣毒性はみられなかった(ラットでは20 mg/kgで報告されている)。(2) 発がん標的である肺では変異原性を示すが、その発現機序に酸化的ストレスの関与する可能性は低く、変異原性を示すとされる肝臓では酸化的DNA損傷が誘発された。(3) 幼若ラットの精巣における小核発生数とDNA付加体量が成熟ラットに比し高値を示したが他臓器で差はみられず、pig-A突然変異についても幼若及び成熟ラットに差は認められなかった。
結論
(1) ハムスターにおけるAAの精巣毒性や血液毒性に対する感受性がラットに比し低いことを明らかにした。(2) AAによる酸化的DNA損傷の変異原性に及ぼす影響には臓器特異性のあることを示した。(3) AAによる精巣における小核発生数とDNA付加体量に関連性のあることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-07
更新日
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