食品添加物等における遺伝毒性・発がん性の短期包括的試験法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200939045A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物等における遺伝毒性・発がん性の短期包括的試験法の開発に関する研究
課題番号
H21-食品・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鰐渕 英機(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 今井田 克己(香川大学 医学部)
  • 辻内 俊文(近畿大学 理工学部)
  • 魏 民(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、がんの一次予防を最終目標とし、食品中の化学物質、特に食品添加物等の遺伝毒性と発がん性を短期間に包括的に検出できる新しい発がんリスク評価法の開発を目的とする。
研究方法
既知ラット肝発がん物質であるダンマル樹脂について、in vivo変異原性を検索できるgpt deltaラットを用いた18および32週間多臓器発がん性試験でその発がん性および変異原性を検討し、gpt deltaラットを用いた新規発がんリスク評価法の開発を行った。また、ダンマル樹脂の2年間発がん性試験で得られたラット肝細胞がんを用いてE-cadherinのメチル化状態を解析した。さらに、発がん性を検索できる新規早期前がん病変マーカーの開発の一環として、扁平上皮がんの早期検出マーカーの同定を行った。
結果と考察
ダンマル樹脂の18週間多臓器発がん性試験では、ダンマル樹脂の肝発がんプロモーション作用が認められ、これまでのF344ラットを用いた発がん性試験と一致した結果が得られた。gpt deltaラットを用いた本モデルは肝発がん物質の検出に有用であることが明らかとなった。他の臓器の病理組織学的検査およびダンマル樹脂の変異原性については現在検討中である。32週間多臓器発がん性試験の動物実験は現在進行中である。
ラット肝細胞がんにおけるメチル化解析では、ダンマル樹脂の肝発がん性にE-cadherin遺伝子DNAメチル化異常が関与しないことが判明した。
マウス肺扁平上皮がんおよび周囲正常組織のプロテオーム解析では、周囲正常組織と比較してがん部で有意に発現が上昇しているものが66種類、減少しているものが60種類であった。そのうち、cytokeratin (CK)19およびYWHAZが周囲正常組織では発現は認められなかったが、がん部および扁平上皮化生において過剰発現が認められた。このことより、CK19およびYWHAZは肺扁平上皮がんの早期マーカーとして有用である可能性が示唆された。
結論
本モデルを用いて、発がん性の評価とin vivo変異原性の検討を合わせて実施でき、化学物質の発がん性に対する遺伝毒性の寄与についても検討することができると考えられる。また、CK19及びYWHAZは肺発がん物質早期検出系の開発に有用であることが考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-06-08
更新日
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