自然毒のリスクプロファイル作成を目指した調査研究

文献情報

文献番号
200939033A
報告書区分
総括
研究課題名
自然毒のリスクプロファイル作成を目指した調査研究
課題番号
H20-食品・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
塩見 一雄(東京海洋大学 海洋科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 長島 裕二(東京海洋大学 海洋科学部)
  • 荒川 修(長崎大学 水産学部)
  • 近藤 一成(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 佐竹 元吉(富山大学 和漢医薬学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
12,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自然毒による健康被害の防止に資するために、自然毒のリスクプロファイルを作成する。近年問題になっている(あるいは今後問題になる可能性がある)新しい自然毒についても知見をできるだけ蓄積し、暫定的なリスクプロファイルを作成する。
研究方法
フグ、ハコフグおよび巻貝の毒性をマウス試験法で調べるとともに、毒成分はLC/MSで分析した。スギヒラタケ中の細胞毒成分α-eleostearic acidについては、オリゴデンドロサイト細胞に与える影響を調べた。アジサイ類については、シアン化合物含量を測定した。リスクプロファイルに関しては様式を決定し、概要版と詳細版を作成した。
結果と考察
(1)供試した3種フグのうち、カナフグの卵巣・消化管は既報値よりも強い毒性を示し、毒性評価を改める必要があると考えられた。(2)長崎県上五島沿岸で採捕したハコフグおよび上五島で身欠きしたハコフグの肝臓のうち、一部肝臓にマウス毒性が検出された。(3)沖縄県沿岸で採集した小型巻貝15種89個体のうち、キンシバイはすべて強いマウス毒性を示した。その他4種(サツマビナ、ヘコミマクラ、イボヨフバイ、カゲロウヨフバイ)にも弱い毒性が認められた。いずれの貝においても、毒の主成分はテトロドトキシンであった。(4)7種エゾバイ科巻貝の唾液腺は有毒で、そのうち3種の毒は高濃度に含まれているテトラミンであることを明らかにした。(5)スギヒラタケ中のα-eleostearic acidは、オリゴデンドロサイト細胞をアポトーシス性の細胞死へと誘導することを明らかにした。(6)3種アジサイ類(エゾアジサイ、ベニガクアジサイ、アマチャ)に少量のシアン化合物が検出されたが、健康影響はないと判断された。(7)国内外の文献調査ならびに近年問題になっている自然毒に関して得られた科学的知見に基づき、動物性自然毒(=魚介類の毒)については魚類、二枚貝および巻貝に大別して毒成分ごとに、植物性自然毒(キノコ毒、高等植物毒)については植物ごとに、リスクプロファイルの概要版と詳細版を作成した。概要版については平成22年4月に厚生労働省のホームページに掲載済みであるし、詳細版についても掲載に向けて準備中である。
結論
フグ、ハコフグ、巻貝類、スギヒラタケおよびアジサイ類の毒性および毒成分に関する知見を蓄積した。また、自然毒に関するリスクプロファイル(概要版、詳細版)を作成した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200939033B
報告書区分
総合
研究課題名
自然毒のリスクプロファイル作成を目指した調査研究
課題番号
H20-食品・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
塩見 一雄(東京海洋大学 海洋科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 長島 裕二(東京海洋大学 海洋科学部)
  • 荒川 修(長崎大学 水産学部)
  • 近藤 一成(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 佐竹 元吉(富山大学 和漢医薬学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自然毒による健康被害の防止に資するために、自然毒のリスクプロファイルを作成する。近年問題になっている(あるいは今後問題になる可能性がある)新しい自然毒についても知見をできるだけ蓄積し、暫定的なリスクプロファイルを作成する。
研究方法
フグ、ハコフグおよび巻貝の毒性をマウス試験法で調べるとともに、毒成分はLC/MSで分析した。テトラミン中毒患者の血中テトラミン濃度も調べた。スギヒラタケ中の細胞毒成分の単離・構造解析を試みた。アジサイ類については、シアン化合物含量を測定した。リスクプロファイルに関しては様式を検討し、概要版と詳細版を作成した。
結果と考察
(1)アカメフグ卵巣、カナフグ卵巣・消化管は既報値よりも強い毒性を示し、毒性評価を改める必要があると考えられた。(2)2008年10月に長崎県で中毒を起こしたハコフグ3検体はいずれもマウスに致死活性を示すこと、その他に調べたハコフグ検体の一部も有毒であることが判明した。(3)長崎県、熊本県および沖縄県沿岸で採集した小型巻貝のうち、キンシバイは採集地に関わらずすべて強い毒性を示すこと、沖縄県産ではその他の4種も弱いながら有毒であることを認めた。いずれの貝においても、毒の主成分はテトロドトキシンであった。(4)7種エゾバイ科巻貝の唾液腺は有毒で、そのうち3種の毒の本体はテトラミンであった。また、テトラミン中毒は患者の血中テトラミン濃度の測定により特定できることが示唆された。(5)スギヒラタケから細胞毒性を示す脂肪酸を単離し、スギヒラタケに特有の脂肪酸α-eleostearic acidであることを明らかにした。本脂肪酸は、神経細胞ならびにオリゴデンドロサイト細胞にアポトーシスを引き起こした。(6)3種アジサイ類に少量のシアン化合物が検出されたが、健康影響はないと判断された。(7)国内外の文献調査ならびに近年問題になっている自然毒に関して得られた科学的知見に基づき、リスクプロファイルの概要版と詳細版を作成した。概要版については平成22年4月に厚生労働省のホームページに掲載済みであるし、詳細版についても掲載に向けて準備中である。
結論
フグ、ハコフグ、巻貝類、スギヒラタケおよびアジサイ類の毒性および毒成分に関する知見を蓄積した。また、自然毒に関するリスクプロファイル(概要版、詳細版)を作成した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200939033C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は自然毒のリスクプロファイルを作成することを目的としたが、近年問題になっている(あるいは今後問題になる可能性がある)自然毒についてもできるだけ知見を蓄積するように努めた。その結果、ハコフグの毒性と毒成分(パリトキシン)の解明、小型巻貝(特にキンシバイ)の毒性と毒成分(テトロドトキシン)の解明、スギヒラタケの細胞毒成分の単離同定など、自然毒分野において学術上貴重な新知見を得た。
臨床的観点からの成果
フグ中毒やキノコ中毒のように自然毒による食中毒は致命的なことが多いので、中毒が発生した場合、臨床現場では中毒患者に対して適切な処置を迅速に行う必要がある。その点、本研究で作成した自然毒のリスクプロファイルには、有毒動植物の写真、毒成分の本体とその諸性状、中毒の症例や症状などが含まれており、自然毒食中毒における臨床現場での迅速な対応にとってきわめて有益である。
ガイドライン等の開発
本研究では研究ターゲットを絞ってガイドライン等の開発を目指したものではない。しかし、本研究では多くの自然毒に関するリスクプロファイルを作成することができたので、本研究成果を基礎としてさらに知見を集積していけば、将来的には個々の自然毒について中毒防止対策といったガイドライン等の開発につながる可能性があると考えられる。
その他行政的観点からの成果
本研究では、自然毒のリスクプロファイルの概要版と詳細版の2種類を作成したが、このうち概要版については平成22年4月に厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/index.html)に掲載済みであり、詳細版についても掲載準備中である。このように本研究成果はすでに行政的に活用されており、自然毒による健康危害の防止につながると考えられる。
その他のインパクト
自然毒のリスクプロファイルの概要版は厚生労働省のホームページにすでに掲載されているが、厚生労働省の担当官からアクセスが非常に多いと聞いている。近いうちに詳細版も掲載される予定であるし、また多くの地方自治体や地方衛生研究所などがそのホームページからリンクできるようにしているので、アクセスがさらに増えると予想される。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
K. Kondo, A. Watanabe, H. Akiyama et al.
The metabolisms of agaritine, a mushroom hydrazine in mice
Food and Chemical Toxicology , 46 , 854-862  (2008)
原著論文2
谷山茂人, 諫見悠太, 松本拓也 他
腐肉食性巻貝キンシバイNassarius (Alectrion) glansに認められたフグ毒の毒性と毒成分
食品衛生学雑誌 , 50 , 22-28  (2009)
原著論文3
相良剛史, 谷山茂人, 高谷智裕 他
トカラ列島中之島産オウギガニ科カニ類の毒性と毒成分
食品衛生学雑誌 , 50 , 237-242  (2009)
原著論文4
谷山茂人, 相良剛史, 西尾幸郎 他
ハコフグ類の喫食による食中毒の実態と同魚類の毒性調査
食品衛生学雑誌 , 50 , 270-277  (2009)
原著論文5
K. Ikeda, Y. Emoto, R. Tatsuno et al.
Maturation-associated changes in toxicity of the pufferfish Takifugu poecilonotus
Toxicon , 55 , 289-297  (2010)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-