母乳のダイオキシン類汚染の実態調査と乳幼児の発達への影響に関する研究

文献情報

文献番号
200939016A
報告書区分
総括
研究課題名
母乳のダイオキシン類汚染の実態調査と乳幼児の発達への影響に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
多田 裕(東邦大学医学部 新生児学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 好一(自治医科大学地域医療学センター)
  • 近藤 直実(岐阜大学大学院医学系研究科)
  • 板橋 家頭夫(昭和大学医学部)
  • 岡 明(杏林大学医学部)
  • 宇賀 直樹(東邦大学医学部  )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
16,910,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
母親の体内汚染量を反映する母乳中のダイオキシン類濃度を、測定対象と測定地域を決めて定点的に測定することにより、わが国の汚染の実態を明らかにするとともに、児が摂取するダイオキシン類が乳児の健康に及ぼす影響について検討する。
研究方法
千葉県、新潟県、大阪府の初産婦の産後30日の母乳を採取し測定した。その母親が第2子以降の児を出産した場合にはその母乳も測定した。乳児の健康への影響は前年度の研究でダイオキシン類濃度を測定した母乳で哺育された児が1歳に達した時点で診察と採血を行った。採血では甲状腺機能検査、免疫能検査、アレルギ-に関連する検査等を行い、測定後の残余血清について単独あるいは複数の血清を合わせてダイオキシン類の濃度を測定した。1年以降の発育発達は郵送によるアンケートを分析した。

結果と考察
初産婦の産後1か月の母乳中のダイオキシン類濃度の平均値は14.1 pg TEQ /gfatと前年迄の測定値に比較してやや減少しており、第2子の哺乳する母乳中の濃度は低値であった。1歳時の血清中のダイオキシン類濃度は母乳から摂取したダイオキシン類の総量と有意な相関が認められた。児の健康への影響ではアレルギー疾患、甲状腺機能、免疫機能には影響が認められなかったが、出生時と生後1ヶ月の体重と身長、生後1年の体重にダイオキシン類摂取量が影響していた。ダイオキシンレベルと廃棄物処理場までの直線距離には負の相関があったが、母体および新生児の健康に影響を与えるほどのレベルではなかった。乳児期、学童期のアンケート調査では発達障害の疑い群で暴露量が多い傾向があったが有意な差ではなかった。
結論
廃棄物処理場からの距離や身体発育、精神発達に関しダイオキシン汚染の影響が示唆されたが、最近では母乳汚染が低下したため広い範囲のダイオキシン濃度の影響が検討できるようになったため、以前には認められなかった微細な影響が明らかになったためと考えられた。これらの結果よりダイオキシン濃度が減少した現在の母乳を哺乳することに問題はないが、胎児期を含めた児への影響は今後とも研究する必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200939016B
報告書区分
総合
研究課題名
母乳のダイオキシン類汚染の実態調査と乳幼児の発達への影響に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
多田 裕(東邦大学医学部 新生児学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 好一(自治医科大学 地域医療学センタ-)
  • 近藤 直美(岐阜大学大学院 医学系研究科小児病態学)
  • 板橋 家頭夫(昭和大学 医学部)
  • 岡 明(杏林大学 医学部)
  • 宇賀 直樹(東邦大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では母親の体内汚染量を反映する母乳中のダイオキシン類濃度を測定することにより、わが国の汚染の実態を明らかにするとともに、母乳中のダイオキシン類濃度と母乳哺乳量を調査することにより児が摂取するダイオキシン類量を推定し、ダイオキシン類摂取が乳児の健康に影響していないかを検討する。
研究方法
初産婦の産後30日の母乳を採取し測定した。その母親が第2子以降の児を出産した場合にはその母乳も測定した。乳児の健康への影響は前年度の研究でダイオキシン類濃度を測定した母乳で哺育された児が1歳に達した時点で診察と採血を行った。採血では甲状腺機能検査、免疫能検査、アレルギ-に関連する検査等を行い、測定後の残余血清は冷凍保存し単独あるいは複数の血清を合わせてダイオキシン類濃度を測定した。1年以降の発育発達は郵送によるアンケートにより調査した。
結果と考察
初産婦の産後1か月の母乳中のダイオキシン類濃度の平均は平成19年度は15.6、平成20年度は14.5、平成21年度は14.1 pg TEQ /g fatとやや減少していた。1998から2000年の濃度と比較すると61.1%に減少し、大阪府の1973年の母乳と比較すると17.3%に減少していた。第2子、第3子に授乳する際の母乳の濃度は低下していた。1歳時の血清中のダイオキシン類濃度は母乳から摂取したダイオキシン類の総量と有意な相関が認められた。児の健康への影響ではアレルギー疾患、甲状腺機能、免疫機能には影響が認められなかったが、出生時と生後1ヶ月の体重と身長、生後1年の体重にダイオキシン類摂取量は負の影響が認められた。最近の結果で微細ながら汚染の影響が明らかになったのは、汚染が低下したため以前の測定値を含め広い範囲のダイオキシン濃度の影響が検討できるようになったためと考えられた。
結論
母体の体格、性別等の因子に比較すれば微細とはいえ、身体発育、精神発達に関しダイオキシン汚染の影響が示唆されたことより胎児期を含めた児への影響を今後とも研究する必要があると考えられた。しかし、母乳汚染が軽減しているので現在の母乳を哺乳することには問題がないと結論された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200939016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
産後1ケ月の母乳中のダイオキシン類濃度は2007~9年度は平均14.9pgTEQ/gfatで1998~2000年度と比較すると61.1%、大阪府の1973年の母乳と比較すると17.3%に減少していた。1歳時の血清中の濃度は母乳からの摂取量と有意な相関が認められた。児への影響ではアレルギー疾患、甲状腺機能、免疫機能には影響が認められなかったが、出生時と生後1ケ月の体重と身長、生後1年の体重にダイオキシン類摂取量には負の影響が認められたが、母親の体格、在胎期間などに比較すると影響は少なかった。
臨床的観点からの成果
ダイオキシン類の耐容一日摂取量に比べ、乳児は毎日その24倍、最近では汚染が減少したが今でも14倍を超える量に汚染されており、児の健康への影響が懸念される。われわれの研究結果では、従来から懸念されていた免疫や甲状腺機能に対する影響などは認められなかったが、体重や身長などには負の影響が認められ、発育発達への影響も有意差はないが疑われた。しかし、これらの影響も母親の体格や在胎期間の影響に比べれば軽微であり、最近の汚染が減少した母乳を哺乳することには問題がないことが明らかになった。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
母乳中のダイオキシン濃度は母親の体内に蓄積している濃度を反映しているので、測定された母乳中濃度の経年的な低下は、ダイオキシン排出減少対策の効果を表している。比較的簡単に測定出来る母乳中のダイオキシン測定は今後ともわが国のダイオキシン対策の効果の指標として使用できる。また本研究班の研究成果により現在では安心して母乳哺育を推進することが可能であることが明らかになった。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
母乳中のダイオキシンと母親の喫煙の関係
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
1件
日本人の母乳中のダイオキシン濃度と甲状腺機能の関係をDioxin学会で発表
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
日本小児科学会栄養委員会の会員への啓発文書に収録

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Uehara R, Nakamura Y, Tada H et al
Dioxins in human milk and smoking of mothers.
Chemosphere , 68 , 915-920  (2007)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-