食品中のウイルスの制御に関する研究

文献情報

文献番号
200939015A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中のウイルスの制御に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
野田 衛(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 智之(堺市衛生研究所)
  • 小林 慎一(愛知県衛生研究所)
  • 斎藤 博之(秋田県健康環境センター)
  • 恒光 裕(動物衛生研究所)
  • 本村 和嗣(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
  • 横山 勝(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
  • 李 天成(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 岡 智一郎(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 白土 東子(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
35,280,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス性食中毒の主要な原因となっているノロウイルス(NoV)、サポウイルス(SaV)およびE型肝炎ウイルス(HEV)について、食品等からの検出法および迅速診断法の確立、伝播経路の解明、食品や環境での汚染実態調査および予防法の確立等をおこなう。
研究方法
NoV、SaV、HEVについて種々の検体を用いて、検査マニュアル(http://www.nih.go.jp/niid/reference/index.html)に従って実施した。食中毒事例に関与するNoVやSaVの頻度、感染経路、ウイルス遺伝子学的特徴を調査した。環境中のNoV、SaV汚染実態とヒト感染事例との関連、食中毒事例および環境由来NoV遺伝子の分子疫学的解析、食品からのNoV検出法やNoV診断法の改良、NoVレセプター分子の分離同定等を行った。各種動物のHEV汚染調査や豚でのHEV感染動態を調べた。また、中空粒子の作成と抗原性分析、迅速診断法の開発等を実施した。
結果と考察
NoVの流行疫学、遺伝子学的解析から、調査した2006/7以降は遺伝子型GII/4が主流であり、2008/9年~2009/10には、GII/6、GII/12なども流行した。調べたGII/4亜型は遺伝子組換えと変異を頻繁におこし、流行拡大のウイルス側の要因となっているものと推察された。継続した動向監視と詳細な遺伝子分析が必須である。開発中の食材からのNoV遺伝子検出法にさらに改良を加えるともに、GII/4以外の遺伝子型への適応を図った。NoV迅速診断用イムノクロマトに反応しない株を検出したため、診断キットの改良を試みた。SaVに対する抗血清、モノクローナル抗体を作成し、その分析を実施した結果、迅速診断法に応用できる可能性のある抗体を得た。HEVの熱安定性には遺伝子型に違いが認められた。熱安定試験には複数の遺伝子型を供試する必要がある。イノシシ由来遺伝子型4HEVは豚に感染性を有していた。牛はHEVの主要な宿主ではなかった。
結論
食品や環境からの迅速簡便なウイルス検出法を改良した。ノロウイルスGII/4流行株の全塩基配列を決定した。ヒト、環境、食品からNoV、SaV、HEVを検出し、汚染実態を明らかした。NoVの迅速簡便な抗原検出法を改良し、SaVの抗原検出法に適用できるモノクローナル抗体を得た。HEVの熱耐性の株間の違いや豚での感染動態を示した。

公開日・更新日

公開日
2010-04-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200939015B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中のウイルスの制御に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
野田 衛(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 武田 直和(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 田中 智之(堺市衛生研究所)
  • 小林 慎一(愛知県衛生研究所)
  • 斎藤 博之(秋田県健康環境センター)
  • 恒光 裕(動物衛生研究所)
  • 米山 徹夫(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 本村 和嗣(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
  • 横山 勝(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
  • 李 天成(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 岡 智一郎(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • グラント ハンスマン(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 白土 東子(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス性食中毒の主要な原因となっているノロウイルス(NoV)、サポウイルス(SaV)、A型肝炎ウイルス(HAV)およびE型肝炎ウイルス(HEV)について、食品等からの検出法および迅速診断法の確立、伝播経路の解明、食品や環境での汚染実態調査および予防法の確立等をおこなう。
研究方法
NoV、SaV、HEV、HAVについて種々の検体を用いて、検査マニュアル(http://www.nih.go.jp/niid/reference/index.html)にしたがって実施した。食中毒事例に関与するNoV/SaVの頻度、感染経路、ウイルス遺伝子学的特徴を調査した。環境中におけるNoV、SaV汚染実態とヒト感染事例との関連、食中毒事例および環境由来NoV遺伝子の分子疫学的解析、食品からのNoV検出、NoV診断法の改良、NoVレセプター分子の分離同定等を行った。各種動物のHEV汚染調査、豚でのHEV感染実態調査を行った。また、SaV遺伝子の定量的解析および変異解析、迅速診断法の開発、HAV検査法の開発等を実施した。
結果と考察
NoVの流行疫学、遺伝子学的解析から、調査した2006/7以降は遺伝子型GII/4が主流であった。流行期ごとに新たな変異株が出現し、構造蛋白の解析から流行の規模と変異数に関連が認められた。継続した動向監視と詳細な遺伝子分析が必須である。食材からのNoV遺伝子検出法を開発した。抗血清の安定供給体制の確立が今後の課題である。NoV迅速診断用イムノクロマト、抗原検出ELISAを改良し、感度、特異性の向上を図った。SaVも迅速診断法の開発の目途がたった。これらの方法を用いることにより調理従事者のNoV等保有状況を常時把握し、ウイルス性食中毒予防に寄与できる。HEVでは培養細胞系を用いた増殖系が確立できた。不活化および安定性試験、増殖のメカニズム解明、ワクチン開発等の道を開いた。これらのデータをリスクプロファイルに還元し、食中毒防止対策の基礎資料とする。
結論
食品や環境からの迅速簡便なウイルス検出法を開発した。ノロウイルスGII/4流行株約200株の全塩基配列を決定した。ヒト、環境、食品からNoV、SaV、HEVを検出し、汚染実態を明らかした。NoVの迅速簡便な抗原検出法を改良し、SaVの抗原検出法に適用できるモノクローナル抗体を得た。HEVの培養細胞を用いた増殖に成功した。HEVの豚における感染動態を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2010-04-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-03-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200939015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HEVが増殖できる培養細胞系を確立したことから、ウイルス増殖、複製のメカニズムの解明に新たな道が開かれた。また、これによってHEVの不活化条件、消毒薬の評価、ワクチン効果、さらに治療薬のスクリーニング等をin vitroで容易に検討することが可能になった。ノロウイルスGII/4検出株約200株の全ゲノム解析を行い、国際遺伝子データベースに登録した。本情報を全世界で共有することにより、ノロウイルス流行株との疫学的関連性の解明や本ウイルスの感染・増殖メカニズムの解明に寄与する。
臨床的観点からの成果
食品の汚染実態調査、食中毒事例の疫学分析、食中毒検査における問題点とその改良などのデータは、ウイルス性食中毒の予防対策や検査に必要な情報であり、国及び地方自治体の行政機関(食品衛生担当)や検査担当者等に情報提供を行い、食中毒予防対策行政に資する。また、ノロウイルス、E型肝炎ウイルスのリスクプロファイルに還元し、本ウイルス制御のための基礎資料とする。食品からのウイルス検出法や迅速診断法の開発は食中毒の原因食品や汚染経路の究明、医療機関での迅速診断に大きく寄与する。
ガイドライン等の開発
平成19年10月12日にとりまとめられた薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会の「ノロウイルス食中毒対策について(提言)」を受け、「ノロウイルス集団発生事例に対して感染症及び食品部局が共同で実施する初期実地疫学調査および微生物検査のポイント」が取りまとめられたが、その中の「ノロウイルスの微生物学的検査」の部分の執筆を本研究班が担当した。同文書は、平成19年11月30日に都道府県等に対し通知され、各自治体のノロウイルス事例対応等に活用されている。
その他行政的観点からの成果
平成19 年10 月12日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会で取りまとめられた「ノロウイルス食中毒対策について(提言)において」および平成22年3月19日に開催された同部会において配付された「ノロウイルス感染発生動向」に関する資料に、本研究班の遺伝子型GII/4を中心とするノロウイルスの分子疫学解析に関する研究成果が利用された。
その他のインパクト
各地方自治体、学校給食会、日本食品衛生協会、食品開発展等の各種の団体や組織が主催する講演会・講習会や学会等が開催するシンポジウム等で、食中毒や集団感染症の予防や制御の観点から研究成果を取りまとめ、紹介した。

発表件数

原著論文(和文)
17件
原著論文(英文等)
56件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
110件
学会発表(国際学会等)
23件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
87件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kobayashi S, Fujiwara N, Takeda N, Minagawa H.
Seroepidemiological study of norovirus infection in Aichi Prefecture, Japan
Microbiol Immunol , 53 (6) , 356-359  (2009)
原著論文2
Motomura K, Oka T, Yokoyama M, et al
Identification of Monomorphic and Divergent Haplotypes in the 2006-2007 Norovirus GII/4 Epidemic Population by Genomewide Tracing of Evolutionary History
J Virol , 82 (22) , 11247-11262  (2008)
原著論文3
Oka T, Yokoyama M, Katayama K, et al
Structural and biological constraints on diversity of regions immediately upstream of cleavage sites in calicivirus precursor proteins
Virology , 394 (1) , 119-129  (2009)
原著論文4
Hansman GS, Oka T, Li TC, et al
Detection of human enteric viruses in Japanese clams
J Food Prot , 71 (8) , 1689-1695  (2008)
原著論文5
Matsuura Y, Suzuki M, Yoshimatsu K, et al
Prevalence of antibody to hepatitis E virus among wild sika deer, Cervus nippon, in Japan
Arch Virol , 152 (7) , 1375-1381  (2007)
原著論文6
Li TC, Suzaki Y, Ami Y, et al
Mice are not susceptible to hepatitis E virus infection
Virology , 70 (12) , 1359-1362  (2008)
原著論文7
Li TC, Miyamura T, Takeda N
Detection of hepatitis E virus RNA from the bivalve Yamato-Shijimi (Corbicula japonica) in Japan.
Am J Trop Med Hyg , 76 (1) , 170-172  (2007)
原著論文8
Hansman GS, Sano D, Ueki Y, et al
Sapovirus in Water, Japan
Emerg Infect Dis , 13 (1) , 133-135  (2007)
原著論文9
Hansman GS, Saito H, Shibata C, et al
Outbreak of Gastroenteritis Due to Sapovirus
J Clin Microbiol , 45 (4) , 1347-1349  (2007)
原著論文10
Oka T, Yamamoto M, Yokoyama M, et al
Highly conserved configuration of catalytic amino acid residues among calicivirus-encoded proteases
J Virol , 81 (13) , 6798-6806  (2007)
原著論文11
Hansman GS, Oka T, Takeda N.
Sapovirus-like particles derived from polyprotein
Virus Research , 137 (2) , 261-265  (2008)
原著論文12
Yoshida T, Kasuo S, Azegami Y, et al
Characterization of sapoviruses detected in gastroenteritis outbreaks and identification of asymptomatic adults with high viral load
J Clin Virol , 45 (1) , 67-71  (2009)
原著論文13
Iritani N, Kaida A, Kubo H, et al
Epidemic of genotype GII.2 noroviruses during spring 2004 in Osaka City, Japan
J Clin Microbiol , 46 (7) , 2406-2409  (2008)
原著論文14
Nobuhiro Iritani, Harry Iritani N, Vennema H, Siebenga JJ, et al
Genetic analysis of the capsid gene of genotype GII.2 noroviruses
J Virol , 82 (15) , 7336-7345  (2008)
原著論文15
Ishida S, Yoshizumi S, Miyoshi M, et al
Characterization of sapoviruses detected in Hokkaido, Japan
Jpn J Infect Dis , 61 (6) , 504-505  (2008)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-