生検材料による神経・筋疾患等の成因解明と治療に関する研究

文献情報

文献番号
199700710A
報告書区分
総括
研究課題名
生検材料による神経・筋疾患等の成因解明と治療に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
埜中 征哉(国立精神・神経センター武蔵病院)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本和季(国立療養所道北病院)
  • 石川幸達(国立療養所八雲病院)
  • 木村格(国立療養所山形病院)
  • 石原傳幸(国立療養所東埼玉病院)
  • 宮内潤(国立小児病院)
  • 斎田孝彦(国立療養所宇多野病院)
  • 高橋桂一(国立療養所兵庫中央病院)
  • 澁谷統壽(国立療養所川棚病院)
  • 岩崎祐三(国立療養所宮城病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 脳科学研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経・筋疾患を中心とする神経難病の病因解明には研究の対象をなる検体が必要である。例えば生検筋を凍結保存しておけば病理、生化学的研究だけでなく、DNA、RNAレベルでの研究、in situ hybridizationでの研究が推進できる。そのような研究資源を大切に保存(バンク化)し、さらにそれを全世界の研究者に情報公開、供与することは研究を進める上で極めて重要である。検体には患者情報が附加されることもあるので、倫理的問題が常につきまとう。以上のことを解決することを本研究の目的とした。
研究方法
まず筋生検、DNA診断などが日常的に行われている国立病院、療養所10カ所を選び、1)生検筋等のバンクシステムの樹立、2)バンク公開のためのデータベース作成、3)倫理問題の三項目について検討を開始した。
結果と考察
1)生検筋等のバンクシステムの樹立
神経・筋疾患の診断の際、生検された骨格筋、培養細胞、血液から分離したDNAを -80℃のディープフリーザー内で保管し、バンク化することをスタートした。国立精神・神経センターが中心となり、約850件の検体をバンク入りさせた。バンク入りさせるためには正しい診断を下すことが大前提で生検材料には色々な組織化学、免疫組織化学染色、DNA解析が行われた。また生検筋、皮膚の培養細胞も新たに28検体がバンク入りした。
2)バンク公開のためのデータベース作成
バンク内の検体は広く研究用に供さなければバンク樹立の意味がない。その内容を公開するためのデータベース作成の準備にとりかかった。検体の種類、最終診断名、供与可能検体、最小限の患者情報(年齢、性別)を入力する様式を作成し、Hospnetを通じての公開システムの確立を行い、平成10年度より運用することとした。
3)倫理問題
DNA診断のみならず病理学的診断に関わる倫理問題、また検体保存に関する倫理問題を法律家(矢島上智大学助教授)とともに検討した。診断に関する承諾書とそれを補充する役目をはたす患者への説明のガイドラインを作成し、平成10年度より運用開始することとした。
初年度からバンクシステムの樹立がほぼ完成し、多数の検体がバンク入りを開始したことは大きな成果であった。そのバンク情報を公開するHospnetを通じてのネットワーク化も基盤作りが完成した。平成10年度からデータベース作成がスタートし、いよいよ本研究班の研究は軌道に乗ることになる。
本研究班の最大の成果は倫理面での問題をほぼクリアしたことである。表1にみられるように簡単な書式ではあるが、それをバックアップするガイドラインも作成されている。過去にはDNA診断についてこのような書式での運用は本邦では皆無に近かった。本研究班で倫理問題に真剣に取り組み、このような書式を作り、運用開始したことは高く評価される。
結論
本研究班では研究方法に記載した三大目標を進めるため、精力的な研究を行った。初期の目標はほぼ達成され、今後数多くの検体が保存され、研究資源として活用される研究基盤が完成した。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)