食品中残留農薬等の汚染実態把握と急性暴露評価に関する研究

文献情報

文献番号
200939011A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中残留農薬等の汚染実態把握と急性暴露評価に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-012
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
米谷 民雄(静岡県立大学 食品栄養科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 根本 了(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 坂井 隆敏(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ポジティブリスト制で基準値がある農薬数が大幅に増加し、対象食品が畜水産物にも拡大された。そこで、1)農薬の新スクリーニング分析法や2)畜水産物対象の農薬・動物薬共通スクリーニング分析法の開発を企図した。又、3)GCとLCを併用した一斉分析法を用いて、市販農産物中の残留農薬の種類や数を調査した。一方、4)残留農薬の急性暴露評価手法の確立が課題であるため、手法確立を目指した研究を実施した。
研究方法
1)GC-MS/MS条件の選択法を28農薬に適用し、最適条件を求め、又LC-TOFMS測定条件を検討した。2)畜水産物に基準値がある172化合物を選び検討した。3)各種茶の異なる地域の3製品を混合し、茶葉及び熱湯抽出液中の残留農薬を一斉分析した。4)短期暴露評価を今後実施するのに必要な各農作物のユニット重量のデータを拡充・整理し、摂取量データとユニット情報を統合し、暴露評価のシナリオへの適用可能性について検討・整理した。
結果と考察
1)昨年開発したMS/MS条件選択法を28農薬に適用し、妨害を受けにくく高感度な条件を得た。LC-TOFMS測定は化合物毎にコーン電圧等を設定するのが困難なため、農薬測定に適した代表的測定条件を求める必要があった。2)基本となる精製操作の追加を検討し、構築した分析法を用い、牛の筋肉及び肝臓を対象に、添加回収試験を行った。3)ツバキ科茶や他の茶製品において分析を実施し、熱湯抽出液(飲茶)への移行係数を得た。4)短期暴露評価のための農作物摂取量データベースにより、198食品につき年齢階級別摂取量分布の詳細データを示した。更に228食品グループに含まれる食品名の詳細と、摂取量データの要約、ユニット重量情報及び廃棄率、暴露評価シナリオの適用可能性等の情報を統合しデータベース化した。
結論
1)開発した条件選択法では高選択性と感度が期待できる。2)今の農薬・動薬一斉分析法の精製操作では夾雑物除去が不十分で、イオン化阻害が推察された。3)加工食品の分析値から原材料に戻り適否判定するための加工係数や茶用の一斉試験法拡充の必要性が再認識された。4)一点推定法での急性暴露評価のために前年度整理した食品分類を再構築し、ポーションサイズのデータと統合し、特に「ケース2」の作業を系統的・円滑に行うための基礎資料を整備した。このデータベースと評価手法の確立により、残留基準の評価が可能になる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200939011B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中残留農薬等の汚染実態把握と急性暴露評価に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-012
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
米谷 民雄(静岡県立大学 食品栄養科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 根本 了(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 坂井 隆敏(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ポジティブリスト制では基準値がある農薬数が大幅に増加し、対象食品が畜水産物にも拡大された。そこで、1)農薬の新スクリーニング分析法や、2)畜水産物対象の農薬・動物薬包括分析法の開発を企図した。又、3)GCとLCを併用した一斉分析法で、市販農産物中の残留農薬の種類や数を調査した。一方、4)残留農薬の急性暴露評価手法の確立が課題であるため、手法確立を目指した研究を実施した。
研究方法
1)スクリーニング法開発のため、抽出・精製法と測定法の迅速化を検討した。2)多くの農薬等に適用可能な抽出法と、効率的な精製法を検討した。3)同一農産物につき異なる地域からの3製品を混合し、GC/MSとLC/MSによる一斉試験法で429成分(茶では378成分)を分析した。4)急性暴露評価では各食品の多食者が1 日にどれ位の量を摂取するかが必要である。そこで摂取量パターンを慢性、急性暴露の両面から検討した。
結果と考察
1)LC-MS対象農薬へのSFE法の適用性を検討したが、農薬のlog Powによらず回収率が低い農薬が多かった。測定の迅速化では農薬分析に適したGC-MS/MS及びLC-TOFMSの測定条件を検討した。2)農薬試験法をベースに、再度水相からも抽出する方法を採用し、精製法を加えた。3)果皮も含めた基準がある果実の分析、各種茶製品の分析等を実施した。茶では茶葉と熱湯抽出液を分析し、熱湯中への移行比率を求めた。4)多量摂取者を抽出するための半定量的な食物摂取頻度調査票を用いたデータを分析し、1 年4 季節の詳細な摂取量データを基に短期暴露評価のための摂取量データベースを作成し、JMPR の考え方に準じた短期暴露評価法を提唱した。21年度は前年検討した食品グループ、食品重量換算係数を詳細に検討し、ユニット重量や廃棄率情報の拡充と、データベースの統合を図った。これらデータベースを基に急性参照用量の観点からメタミドホスなどの残留基準値が妥当かを検討した結果、基準値の変更や調整が行われた。
結論
1)SFE条件検討やPLE法適用が必要と考えられた。2)現段階では精製操作が不十分で、イオン化阻害が推察された。3)加工食品中に残留農薬が検出されたが、原材料に戻り適否を判定する際の加工係数の必要性などが再認識された。4)摂取量データを整備しそれを用いた評価手法を確立すれば、残留基準の評価に反映させることができる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200939011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)ポジティブリスト制度に対応して、多数の残留農薬を検査するための新技術応用スクリーニング法を開発するため、新しいGC-MS/MS条件選択法を開発した結果、妨害成分からの影響を受けにくい高感度な分析が可能となった。
2)残留農薬の短期暴露評価のために、多量摂取量データベースとユニット重量データベースを整備し、それを基に国内で急性参照用量が設定されたメタミドホスなどの農薬について、急性参照用量からみて残留基準値が妥当かを検討した結果、残留基準値の変更や調整が行われた。
臨床的観点からの成果
特記事項なし
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
平成20年5月23日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会において、初めて急性参照用量について議論された際に、すでに当研究班が平成16年度から研究を継続している旨が報告され、資料として配付された研究要旨をもとに説明がなされた。その後、厚生労働省からの依頼により、分担研究者と研究協力者がメタミドホス・アセフェートとアセタミプリドの基準値が、急性参照用量の観点から妥当かを検証し、一部の作物について基準値の変更と調整が行われた。
その他のインパクト
平成21年度厚生労働科学研究(食品の安心・安全確保推進研究)シンポジウム「安全な食品で健やかな暮らし」の一般講演課題に選ばれ、研究班の研究内容を「食品と残留農薬」と題して、東京九段と福島県須賀川市で講演した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
Ishiwaki A, Yoshiike N et al.:J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 53(4):337-44. (2007)
その他論文(和文)
1件
米谷民雄:農薬等のポジティブリスト制度の告示及びその後の対応と海外の動き 食衛誌, 48(6), J402-J410 (2007)
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
1)アセタミプリドの急性参照用量の観点から、ほうれんそうの基準値を変更した。 2)メタミドホスの急性参照用量の観点から、ブロッコリー、カリフラワー等の基準値を部会提出前に調整した。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成21年度厚生労働科学研究(食品の安心・安全確保推進研究)シンポジウム「安全な食品で健やかな暮らし」で、研究班の研究内容を「食品と残留農薬」と題して2回講演を行った。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ishiwaki A, Yokoyama T, Yoshiike N et al.
A statistical approach for estimating the distribution of usual dietary intake to assess nutritionally at-risk populations based on the new Japanese Dietary Reference Intakes (DRIs)
J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo) , 53 (4) , 337-344  (2007)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-