動物用医薬品等に関する畜水産食品の安全性確保に係る研究

文献情報

文献番号
200939010A
報告書区分
総括
研究課題名
動物用医薬品等に関する畜水産食品の安全性確保に係る研究
課題番号
H19-食品・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
三森 国敏(国立大学法人 東京農工大学大学院 共生科学技術研究院 動物生命科学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 渋谷 淳(国立大学法人 東京農工大学大学院 共生科学技術研究院 動物生命科学部門)
  • 梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 九郎丸 正道(東京大学大学院 農学生命科学研究科 獣医解剖学教室)
  • 古濱 和久(国立大学法人岩手大学 獣医薬理学・毒性学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①動物薬ピペロニルブトキサイド(PBO)の肝腫瘍形成過程における酸化的ストレスの関与について検索した。②PBOの発がん性について、DNAメチル化を指標としたin vivo短期肝発がん指標遺伝子を探索した。③PBOが引き起こす酸化的ストレスに対する生体内防御機構へのnrf2蛋白の関与を検討した。④BSE(牛海綿状脳症)の特定危険部位である牛の脊柱を資源として再活用をはかるため、背根神経節を脊柱から完全に分離する手法を確立することを目的とした。⑤腎糸球体濾過量(GFR)は腎排泄型薬物の体内挙動に大きく関与していることから造影剤iodixanolを用いた GFRの簡便な測定法について検討した。
研究方法
①と②に関する研究では、マウス二段階肝発がんモデルを用いて検討した。③の研究では、nrf2欠損マウスとその野生型を用いて検討した。④の研究では、神経節の枝肉あたりの除去率を調べた。⑤の研究では、5種動物のGFRを血中濃度推移から算出し、単回静注・1回採血法の妥当性を検討した。
結果と考察
①の研究では、ROSの産生に伴う二次的なDNA損傷は関与しないことが示唆された。②の研究では、Serpina3m、WD repeat domain6、CMTM6の発現変動が認められた。③の研究では、肝DNA中の8-OHdGレベルはnrf2欠損マウスで低用量より有意な上昇が認められたが、遺伝子型間で明らかな差異はみられなかった。④の研究では、全背根神経節の85%の除去が可能であった。⑤の研究では、本法と標準採血法の間に良好な関係がみられた。
結論
①の研究では、PBOにより過剰なROSが産生されることで細胞増殖機構に変調を来たし、結果的にPBOが肝腫瘍プロモーターとなる可能性が考えられた。②の研究では、
PBOの発がん促進によりメチル化制御機転の働く遺伝子群の出現が検出され、肝発がんへの寄与が示唆された。③の研究では、PBOが誘発するマウス肝における酸化的ストレスに対する生体内防御機構へのNrf2蛋白の関与の可能性は低いと考えた。④の研究では、背根神経節の完全除去には更なる技術の改良が必要である。⑤の研究では、IodixanolをトレーサーとしたGFR測定は薬理学的、毒性学的及び臨床学的に応用できる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-21
更新日
-

文献情報

文献番号
200939010B
報告書区分
総合
研究課題名
動物用医薬品等に関する畜水産食品の安全性確保に係る研究
課題番号
H19-食品・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
三森 国敏(国立大学法人 東京農工大学大学院 共生科学技術研究院 動物生命科学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 渋谷 淳(国立大学法人 東京農工大学大学院 共生科学技術研究院 動物生命科学部門)
  • 梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 九郎丸 正道(東京大学大学院 農学生命科学研究科 獣医解剖学教室)
  • 古濱 和久(国立大学法人岩手大学 獣医薬理学・毒性学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①オクスフェンダゾール(OX)、ジサイクラニル(DC)とピペロニルブトキサイド(PBO)の肝発がん機序を解明することを目的とした。②DNAメチル化を指標としたin vivo短期肝発がん指標遺伝子の探索を行った。③非遺伝毒性発がん物質に分類される動物薬の酸化的ストレスに対するNrf2の関与の可能性を検討した。④BSE(牛海綿状脳症)の特定危険部位である牛の背根神経節について、完全除去がと畜場で可能か否か検討した。⑤ガチフロキサシン(GFLX)の有害作用のうち血糖異常に注目した病態解析及び腎糸球体濾過量(GFR)の測定の基礎検討を行った。
研究方法
①の研究では、ラットおよびマウス二段階肝発がんモデルを用いて検討した。②の研究では、マウス二段階肝発がんモデルを用いて検討した。③の研究では、DC及びPBOについて遺伝子改変動物を用いて検討した。④の研究については、背根神経節の除去率の算定を行った。⑤の研究では、糖尿ラットを用いて血糖異常の解析を、また5種動物を用いてGFR測定の方法を解析した。
結果と考察
①の研究では、OXで酸化的ストレスマーカーの上昇、DCで羅漢果抽出物によるCyp1a1の発現・誘導抑制及びROSの発生抑制が確認された。PBOではROS産生に伴う二次的なDNA損傷はなかった。②の研究では、メチル化アレイにより遺伝子群の変動が認められた。③の研究では、DCの産生する酸化的ストレスへの防御機構にはNrf2蛋白の関連が示唆され、PBOにおいてはgpt遺伝子変異頻度に影響を与えないことが明らかになった。④の研究では、全背根神経節の85%の除去が可能であった。⑤の研究では、血糖異常は、GFLXの膵への高い移行性とKATPチャネル阻害により発現することが明らかになった。
結論
①の研究では、OX・DC、PBOの発がん機序には酸化ストレス、過剰ROS産生による細胞増殖機構の変調の関与が示唆された。②の研究では、PBOによる発がん促進によりメチル化制御機転の働く遺伝子群の出現が検出され、それらの肝発がんへの寄与が示唆された。③の研究結果から、この種の動物用医薬品のヒト危険度評価の精度向上に大きく貢献するものと考えられた。④の研究では、背根神経節の完全除去には更なる技術の改良が必要である。⑤の研究では、GFLXの血糖異常の病態を明らかにした。GFR測定法を確立した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200939010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
非遺伝毒性肝発がん物質と評価されている動物用医薬品の中には活性酸素種(ROS)が関与するものがあることを突き止めた。またその発がん機序にDNAのメチル化が関与することを明らかにした。牛神経節除去の研究では、第4腰〜第3仙骨神経の神経節の除去率が低く、除去法の改良が必要である。キノロン薬の安全性評価では、ラットと兎の腎糸球体濾過量の測定法を確立した。これらの成果は食品の安全確保の向上に役立つものである。
臨床的観点からの成果
今回の研究成果には、臨床的な事項に該当するものは含まれていない。
ガイドライン等の開発
ROSが関与する非遺伝毒性肝発がん物質の安全性評価については、閾値がない発癌物質として評価すべきなのか否かについて未だ詳細な審議は国内の審議会レベルでは実施されていないが、今後のガイドライン改訂に重要な基礎的資料となり得る。
その他行政的観点からの成果
非遺伝毒性肝発がん物質と評価されている動物用医薬品は畜産動物への使用が許可されていることから、ROSが関与する肝発がん物質が畜産食品中に微量に残留することが推測される。今回得られた成果は、肝発がん性が示されている動物薬を含有する食品を消費者が摂取した場合の健康影響をどのように評価すべきかについての基礎的資料となる。
その他のインパクト
食品中には微量ではあるが、農薬、添加物および動物薬が残留しており、ROSが関与する非遺伝毒性肝発がん物質について、閾値がない発癌物質として内閣府食品安全委員会で評価された場合は、これらの化学物質については残留基準値は設定できなくなる。今回得られた成果は、これらの発癌性ガイドラインの改訂に重要な基礎資料となるものと推察される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Dewa, Y., Nishimura, J., Mitsumori, K., et al.
Gene expression analysis of the liver in rats treated with oxfendazole
Arch. Toxicol. , 81 , 647-654  (2007)
原著論文2
Dewa, Y., Nishimura, J., Mitsumori, K., et al
Involvement of oxidative stress in hepatocellular tumor-promoting activity of oxfendazole in rats
Arch. Toxicol. , 83 , 503-511  (2009)
原著論文3
Matsumoto, S., Jin, M., Mitsumori, K., et al.
Suppressive effect of Siraitia grosvenorii extract on dicyclanil-promoted hepatocellular proliferative lesions in male mice
J Toxicol Sci. , 34 (1) , 109-118  (2009)
原著論文4
Nishimura, J., Shibutani, M., et al.
Antioxidant enzymatically modified isoquercitrin or melatonin supplementation reduces oxidative stress- mediated hepatocellular tumor-promotion of oxfendazole in rats
Arch Toxicol. , 84 (2) , 143-153  (2010)
原著論文5
Jin, M., Shibutani, M., Mitsumori, K., et al.
The threshold doses for liver tumor promotion effects of dicyclanil in ICR mice
J. Toxicol. Sci. , 35 (1) , 69-78  (2010)
原著論文6
Kawai, M., Shibutani, M., Mitsumori, K., et al.
Elevation of cell proliferation via generation of reactive oxygen species by piperonyl butoxide contributes to its liver tumor-promoting effects in mice
Arch. Toxicol. , 84 , 155-164  (2010)
原著論文7
Kawai, M., Shibutani, M., Mitsumori, K., et al.
Cytokeratin 8/18 Is a Useful Immunohistochemical Marker for Hepatocellular Proliferative Lesions in Mice
J. Vet. Med. Sci.  (2010)
原著論文8
Umemura, T., Kuroiwa, Y., Hirose, M., et al.
Detection of oxidative DNA damage, cell proliferation and in vivo mutagenicity induced by dicyclanil, a nongenotoxic carcinogen, using gpt delta mice
Mutat, Res. , 63 , 46-54  (2007)
原著論文9
Nishikawa, A., Umemura, T., Nohmi, T., et al.
In vivo approaches to study mechanism of action of genotoxic carcinogens
Genes Environ. , 30 , 101-107  (2008)
原著論文10
Umemura, T., Tasaki, M., NIshikawa, A., et al.
Possible participation of oxidative stress in causation of cell proliferation and in vivo mutagenicity in kidneys of gpt delta rats treated with potassium bromate
Toxicology. , 257 , 46-52  (2009)
原著論文11
Katayama, R., Yamaguchi, N., Furuhama, K., et al.
Calculation of glomerular filtration rate in conscious rats by the use of a bolus injection of iodixanol and a single blood sample
J. Pharmacol. Toxicol. Methods. , 61 , 59-64  (2010)
原著論文12
Nagai, M., Nagata, S., Furuhama, K., et al
Clinicopathological aspect of dysglycemia in naïve and diabetic rats induced by the fluoroquinolone antibacterial gatifloxacin
J. Vet. Med. Sci. , 72  (2010)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-