カビ毒を含む食品の安全性に関する研究

文献情報

文献番号
200939009A
報告書区分
総括
研究課題名
カビ毒を含む食品の安全性に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小西 良子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 局 博一(東京大学大学院農学生命科学研究科 農学部)
  • 佐藤 敏彦(北里大学 医学部)
  • 杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 田中 敏嗣(神戸市環境保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国に流通している食品中のフモニシンB1、B2、B3(FB1, FB2, FB3)およびオクラトキシンA(OTA)の汚染実態調査、減衰評価、我が国の曝露量の推定、トリコテセンの毒性評価を行い、我が国の基準値策定の必要性に関する科学的根拠の提供を目的とした。
研究方法
実態調査は市販食品16食品目200試料についてFB1, FB2, FB3をLC/MS-MSを用いて、市販食品19食品目355試料についてOTAを、HPLC―蛍光検出器を用いて測定した。3年間の結果を基にモンテカルトシュミレーションで暴露評価を行った。カビ毒の減衰試験ではマウスおよびヒトのリンパ球培養細胞のバイオアッセイ系を構築した。デオキシニバレノールの毒性評価では、マウスを用いたin vivo実験を行った。
結果と考察
 FB1, FB2, FB3は、コーングリッツ類では測定したすべての検体から、コーンスナックから、90%の頻度で検出された。コーンフレークでも75%、ポップコーンでは約60%であった。一方 米、生とうもろこし、生アスパラガス、大豆においては定量限界未満であった。FB汚染の寄与率はとうもろこし加工品であることが示唆された。OTAは、コーングリッツ等のとうもろこし製品、大麦、紅茶、ウーロン茶、米からは検出されなかったが、小麦粉、そば(そば粉)およびパスタでは40?60%の検出率であった、OTAでは、主食として食される小麦粉、そば、パスタは寄与率の高い食品であるといえるが、ハーブ類や嗜好品においてもOTAの汚染が高いものも多かった。OTAの減衰による毒性評価法としてヒトマクロファージ様細胞を用いたアッセイ系の構築に成功した。FBsの暴露量推定値は、1歳ー6歳までの群で一日曝露量がもっとも高かったがJECFAが設けた耐容摂取量(2000ng/kg体重/日)を下回っていた。OTAの暴露量推定値も、 1歳ー6歳までの群で一日曝露量がもっとも高かったが1週間換算した場合でもJECFAが暫定的に設けた耐容摂取量(100ng/kg体重/週)を大きく下回っていた。マウスIgA腎症の病態メカニズムには, 糸球体係蹄における組織リモデリングの関与することが示唆された。さらにデオキシニバレノールは伝導障害や異所性刺激生成を主とする心機能異常を引き起こすこと、また投与直後の自律神経活動の著しい低下が生じることが明らかになった。
結論
我が国でまだ基準値のないオクラトキシンA, フモニシンを対象に、リスク評価を行った。これらは我が国の基準値策定の科学的根拠と資するものである。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200939009B
報告書区分
総合
研究課題名
カビ毒を含む食品の安全性に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小西 良子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 熊谷 進(東京大学大学院農学生命科学研究科 農学部)
  • 局 博一(東京大学大学院農学生命科学研究科 農学部)
  • 佐藤 敏彦(北里大学 医学部)
  • 杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部 )
  • 田中 敏嗣(神戸市環境保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品中のカビ毒に関する毒性評価を含めたリスク評価は、FAO/WHOのJECFA、EUのEFSAなど国際的には毒性評価または規格基準が設置されているが、我が国では基準値が未設定のカビ毒の中で、オクラトキシンA, フモニシン、トリコテセン(デオキシニバレノール)に関して、我が国の汚染実態の把握、その結果を基にした暴露評価、分析法の妥当性、調理加工におけるカビ毒の減衰、新規毒性の検討を行い、我が国の基準値策定の必要性に関する科学的根拠の提供を目的とした。
研究方法
本研究は、1) 我が国の汚染実態の把握、2) その結果を基にした暴露評価、3) 分析法の妥当性、4) 調理加工におけるカビ毒の減衰、5) 新規毒性の検討の5項目を行った。1)フモニシンは市販食品 3年間通して22食品目1226試料を対象にLC/MSを用いて測定した。オクラトキシンAは29食品目2093試料を対象にHPLC-蛍光検出器で測定した。トリコテセン(デオキシニバレノール)は単年度であったが国産麦を対象としてLC/MS/MSにより測定した。2)汚染実態調査結果を基に、国民栄養調査により各食品の摂取量を求めモンテカルロ確率法で暴露量を推定した。3)実態調査に用いた分析法の妥当性は、本研究事業で設立したカビ毒試験法評価委員会で評価した。4)カビ毒の減衰試験ではマウスおよびヒトのリンパ球培養細胞のバイオアッセイ系を構築した。5)ゼアラレノンおよびデオキシニバレノールの毒性評価では、マウスを用いたin vivo実験を行った。
結果と考察
オクラトキシンA, フモニシンの3年間の結果より、汚染頻度は 比較的高いもののそのレベルは低いことが明らかになった。暴露評価においても、フモニシン、オクラトキシンAともJECFAが設定した1日耐容摂取量を超えることはなかった。調理加工における減衰を評価するためのマウスおよびヒトのリンパ球培養細胞バイオアッセイ系の確立に成功した。これにより、体内に摂取された状態での毒性がより正確に測定することが可能となった。新規毒性としては、ゼアラレノンの次世代への毒性、デオキシニバレノールの自律神経系経の毒性、ニバレノールの腎炎メカニズムなどを見いだした。

結論
我が国でまだ基準値のないオクラトキシンA, フモニシンを対象に、リスク評価を行った。これらは我が国の基準値策定の科学的根拠と資するものである。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200939009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
カビ毒を対象にした3年間通年(平成16年度成果を加えると通年6年間)の実態調査およびそれを基にした暴露評価は専門的分野からも貴重なデーターとなる。学術雑誌においても高く評価されている。減衰効果の評価法も従来の理化学的分析ではなく、体内の状態をそのまま反映するバイオアッセイ法の構築に成功したことも基礎学的にも応用学的にも評価出来る。カビ毒の毒性においても新規の毒性を見いだした。
臨床的観点からの成果
臨床的な成果は出ていない。
ガイドライン等の開発
本成果は今後食品安全委員会に提出され、リスク評価の科学的根拠として資する。
その他行政的観点からの成果
本報告書等を基に食品安全委員会においてリスク評価が終了した後,厚労省に答申後、食品衛生審議会食品規格部会にて、基準値が設定される。
その他のインパクト
食品衛生研究 2009年1月号(社団法人 日本食品衛生協会出版)に特集として本研究事業の成果が取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
食品衛生研究 2009年1月号(社団法人 日本食品衛生協会出版)に特集として本研究事業の成果が取り上げられた。シンポジストとして発表(2件)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kubosaki A.,Shibatani,M.,Sugita-Konishi,Y.,et al.,
Immunotoxicity of nivalenol after subchronic dietary exposure to rats.
Food Chem. Toxicol , 46 , 253-258  (2008)
原著論文2
Takahashi M.,Shibatani,M.,Sugita-Konishi,Y., et al.,
A 90-day subchronic toxicity study of nivalenol, a trichothecene mycotoxin, in F344 rats.
Food Chem. Toxicol , 46 , 125-135  (2008)
原著論文3
Sugiyama K., Shibatani,M.,Sugita-Konishi,Y., et al.,
A reduced rate of deoxynivalenol and nivalenol during bread production from wheat flour in Japan.
Mycotoxins , 59 , 1-6  (2009)
原著論文4
Dewa Y,Shibatani,M.,Sugita-Konishi,Y.,et al.,
Rapid deposition of glomerular IgA in BALB/c miceby nivalenol and its modifying effect on high IgA strain (HIGA) mice.
Experimental and Toxicologic Pathology  (2009)
原著論文5
Sugiyama KI, Muroi M, Tanamoto KI, Nishijima M,et al.,
Deoxynivalenol and nivalenol inhibit lipopolysaccharide-induced nitric oxide production by mouse macrophage cells.
Toxicol Lett , 192 (2) , 150-154  (2010)
原著論文6
Sugita-Konishi, Y. Sato, T., Saito, S., Nakajima, M et.al.,
Exposure to aflatoxins in Japan: Risk assessment for aflatoxin B1
Food Addit Contam Part A Chem Anal Control Expo Risk Assess , 27 (3) , 365-372  (2010)
原著論文7
Aoyama K, Nakajima M, Tabata, S Ishikuro, E. et al.
Four-year Surveillance for Ochratoxin A and Fumonisins in Retail Foods in Japan
J.Food Protection , 73 (2) , 344-352  (2010)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-