重金属等を含む食品の安全性に関する研究

文献情報

文献番号
200939008A
報告書区分
総括
研究課題名
重金属等を含む食品の安全性に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
香山 不二雄(自治医科大学 地域医療学センター 環境医学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 兵剛(自治医科大学 地域医療学センター 環境医学部門)
  • 佐々木 敏(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻疫学保健学講座社会予防疫学分野)
  • 中井 里史(横浜国立大学大学院環境情報研究院環境疫学)
  • 吉田 貴彦(旭川医科大学健康科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)カドミウム曝露集団コホートの食品中カドミウムの曝露による影響評価をより精密に実施する。(2)小児(10歳児)、漁協女性、農家女性の調査集団に自記式食事歴調査票(DHQ)により重金属類の曝露評価を行う(3)海藻中を今回の調査地域の調理方法に基づき加工・調理を行う。前後の化学型ごとの濃度濃度を求める。また、海藻などの加工による海草類のヒ素の吸収率や代謝に関する国内外の知見を検索し、整理を行う。③ワラビ中プタキロサイドの存在量、灰汁抜きの残留率を調べる。
研究方法
(1)カドミウム高曝露地域で農家女性の調査を行った。(2)旭川市10歳児の食事歴調査票による魚介類摂取量と血中重金属濃度を調査し関連性を解析した。(3)ワラビ中プタキロサイドの存在量、灰汁抜きの残留率は、20年度の調査で、灰汁抜き後に検出下限以下となったため、21年度は行わなかった。
結果と考察
(1)鉱山による土壌汚染が残るX地区、Y地区にて、それぞれ40歳以上の農家男性36人と52人、農家女性45人、81人の調査を行った。戸別訪問で勧誘したので調査対象者の約80%が参加した。X地区男性では高齢の方が尿中α1MGとβ2MGは低い傾向にあったが、それ以外では高齢になるに従って高くなっていた。Y地区では70歳代以上になると非常に高い尿中α1MGとβ2MGの値が見られた。・Y地区では、特に70歳代以上で、女性の方が男性よりも高い尿中α1MGとβ2MGの値を示した。(2)旭川市にて10歳小児(男41人、女37人)の調査を行い、血中砒素、カドミウム、鉛濃度を測定し、毛髪中砒素、総水銀濃度は低かったが、毛髪中砒素が高い小児が3名居たが血中濃度は低く、外部からの汚染と考えられた。DHQを小児向けに改良した計算法を用いた。栄養摂取過不足の項目と同等の結果が小児においても相関が見られた。(3)ワラビ中プタキロサイドの存在量、灰汁抜きの残留率は、20年度の調査で、灰汁抜き後に検出下限以下となったため、21年度は行わなかった。
結論
(1)カドミウム曝露の高い地域の2地区で約80%の調査対象者を調べると、一地域で70歳以上の女性81人中5人にカドミウム腎症患者が見いだされた。汚染地域での農産物中カドミウム濃度スクリーニングとリスク・コミュニケーションが重要である。(2)旭川小児において水銀、カドミウム、砒素、水銀曝露は低く、魚介類摂取との関連性は低かった。食事調査と血中脂質などは相関が見られた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200939008B
報告書区分
総合
研究課題名
重金属等を含む食品の安全性に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
香山 不二雄(自治医科大学 地域医療学センター 環境医学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 兵剛(自治医科大学 地域医療学センター 環境医学部門)
  • 佐々木 敏(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻疫学保健学講座社会予防疫学分野)
  • 中井 里史(横浜国立大学大学院環境情報研究院環境疫学)
  • 吉田 貴彦(旭川医科大学健康科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)カドミウムなど重金属の高曝露コホート群について追跡調査を行う。また、その地域の部落単位で個別訪問し、健康影響調査に勧誘し全数調査を行う。(2)10歳小児、漁協女性で自記式食事歴調査を行い、砒素、水銀の曝露評価を行う。(3)ワラビ中発癌物質プタキロサイドの加工調理による減衰率を調べ、リスク評価を行う。
研究方法
(1) H19年度はE地域で尿中カドミウム濃度10マイクロg/gクレアチニン以上の農家女性42人に精密検査を行った。H20年度はF地域で5年後の追跡調査を行った。H21年度はE地域の未調査地区部落の全数調査を行った。(2)H19年度は旭川市で10歳児89人、千葉県漁協女性110人の調査を行った。H20年度は小児142人、漁協女性92人、H21年度は小児87人の調査を行った。(3)H20年に栃木県で採取したワラビを重曹で灰汁抜きのみ、灰汁抜き塩漬け、灰汁抜きなし乾燥のみの加工後にガスクロマトフィー法により定量を行った。
結果と考察
(1) E地域の24人の受診者中2人にカドミウム腎症があった。F地域は、50歳代以上の尿中カドミウムは地域Eよりも有意に高い値を示した。低分子量タンパク尿症は、対照地域と較べ、70歳代では有意に上昇した。E地域のX、Y地区で80%の調査した結果、Y地区では70歳代以上で高度な低分子タンパク尿症が見られた。 (2)小児では血中カドミウム濃度と血中鉛濃度 に相関が見られた。また、秋田農協女性で血中ヒ素濃度と血中水銀濃度とに相関が見られた。毛髪中の水銀とヒ素濃度とは相関は見られなかった。
ワラビ生鮮物のPT含有量は10.52mg%であったのに対し、塩漬け+塩抜きは0.34mg%と約96.8%減少、また重曹でのあく抜きを行ったワラビは0.02mg%と約99.8%減少した。
結論
(1)カドミウム曝露の高い地域の2地区で約80%の調査対象者を調べると、一地域で70歳以上の女性81人中5人にカドミウム腎症患者が見いだされた。汚染地域での農産物中カドミウム濃度スクリーニングとリスク・コミュニケーションが重要である。(2)旭川小児において水銀、カドミウム、砒素、水銀曝露は低く、魚介類摂取との関連性は低かった。食事調査と血中脂質などは相関が見られた。(3)ワラビの灰汁抜き、灰汁抜きおよび塩漬けにより、含有するプタキロサイドは大部分除去することが出来ることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2010-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200939008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
カドミウム長期に亘る経口曝露により尿中カドミウム濃度が10マイクロg/gクレアチニンを超えると不可逆性の腎尿細管障害が起こること、
臨床的観点からの成果
また、汚染地域を詳しく調べれば、カドミウム腎症と診断される高齢な女性がいることが明らかとなった。腎不全に陥らないように、カドミウム曝露の高い地域では健康診断を行う必要がある。
ガイドライン等の開発
暫定耐容週間摂取量(PTWI)は7マイクロg/kg体重/週は妥当であると考えられる。
その他行政的観点からの成果
、さらにこれ以上、カドミウム経口負荷がかからないように、自家栽培、自家消費の食品中のカドミウム濃度を測定し、曝露を極力減らす必要がある。
その他のインパクト
2010年度日本農芸化学会大会シンポジウム,2008年国際危機管理シンポジウム、2008年日本衛生学会環境リスク研究会、2007年日本衛生学会食品衛生研究会、2007年北里大学 公開シンポジウム「農と食」

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
疫学調査結果、カドミウム曝露による遺伝子発現に関する論文、イタイイタイ病の起きた神通川流域住民の最近の健康調査結果を報告した。
その他論文(和文)
2件
農と食のシンポジウムの内容を北里大学雑誌に掲載、
その他論文(英文等)
1件
WHO workshop report: Total diet study in Japan. Cadmium exposure assessment in Japan.
学会発表(国内学会)
4件
衛生学会にてカドミウム毒性に関する疫学調査結果を報告した。
学会発表(国際学会等)
4件
米国毒性学会Society of Toxicology年次集会で疫学の結果を報告。
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
カドミウムの耐容摂取量策定に役立てた
その他成果(普及・啓発活動)
4件
食品安全委員会、厚生労働省のリスクコミュニケーションに協力

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Dakeshita, S; Horiguchi H, Kayama F, et al.
Gene expression signatures in peripheral blood cells from Japanese women exposed to environmental cadmium.
Toxicology , 257 (1) , 25-32  (2009)
原著論文2
Machida M, Sun SJ, Kayama F. et al.
High bone matrix turnover predicts blood levels of lead among perimenopausal women.
Environmental Research , 109 (7) , 880-886  (2009)
原著論文3
Horiguchi H, Aoshima K, Kayama F. et al.
Latest status of cadmium accumulation and its effects on kidneys, bone, and erythropoiesis in inhabitants of the formerly cadmium-polluted Jinzu River Basin in Toyama, Japan, after restoration of rice paddies.
Int Arch Occup Environ Health. , 102 (2) , 122-130  (2010)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-