国際的動向を踏まえた食品添加物の規格、基準の向上に関する調査研究

文献情報

文献番号
200939007A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的動向を踏まえた食品添加物の規格、基準の向上に関する調査研究
課題番号
H19-食品・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 陽二(金沢大学 学際科学実験センター トレーサー情報解析分野)
  • 杉本 直樹(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 久保田浩樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 扇間 昌規(武庫川女子大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品添加物の規格基準の向上及び国際的整合化と食品の安全性確保のため、調査研究を行った。
研究方法
赤外吸収スペクトル(IR)法:試料の性質に応じてペースト法、液膜法等によりIRを検討した。NMRを用いた新規定量法(qNMR):合成着色料についてqNMRと既定定量法の比較検討を行った。増粘安定剤の残留溶媒分析:高粘度試料について酵素処理-ヘッドスペース-GC法を検討した。香料化合物の自主規格:規格値に関する実態調査及び情報収集を行い、自主規格を策定した。天然香料基原物質の使用実態調査:アンケート調査結果の集計、解析を行った。生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量推定:既存添加物のアンケート調査及び指定添加物の再調査を実施した。塩素系殺菌料処理により生成する揮発性成分の解明:GC/MS法を用いて分析を行った。ソルビン酸(SA)の細胞機能へ及ぼす影響: SA存在下及び非存在下でのマウス・マストサイトーマP-815細胞株の細胞質の動態変化を比較測定した。また細胞質内SAのLCMS/MSを検討した。
結果と考察
IR法:ピロリジン等について、水分含量がIRに及ぼす影響を明らかにし、再現性の良い測定法及び標準IRを確立した。qNMR:迅速かつ正確な定量分析法であると考えられた。増粘安定剤中の残留溶媒分析法:HS-GC法では、粘性が分析に影響すると考えられた。香料化合物の自主規格:規格化を保留してきた香料化合物706品目について再調査等を行い、新たに99化合物の規格を策定した。天然香料基原物質の実態調査:平成20年に我が国で使用されていた天然香料基原物質は487(新規基原物質6)であることを明らかにした。塩素系殺菌料処理により生成する揮発性成分の解明:殺菌に用いる塩素系殺菌料の種類により、生成する揮発性化合物が異なることを明らかにした。SAの細胞機能へ及ぼす影響:SAが細胞質内に移行し、細胞内情報伝達系の要であるCa2+の濃度を変化させていることを明らかにし、LC/MS/MSによる細胞質内SAの微量定量法を確立した。
結論
IRや新規定量法等の検討、香料化合物自主規格の策定は食品添加物の規格及び試験法の向上に寄与するものであり、天然香料基原物質使用実態調査、食品添加物摂取量調査、塩素系殺菌料処理由来の揮発性成分及びSAの細胞機能影響に関する研究では食品添加物行政の安心・安全の確保に資する知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-03-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200939007B
報告書区分
総合
研究課題名
国際的動向を踏まえた食品添加物の規格、基準の向上に関する調査研究
課題番号
H19-食品・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 陽二(金沢大学 学際科学実験センター トレーサー情報解析分野)
  • 杉本 直樹(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 久保田浩樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 扇間 昌規(武庫川女子大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品添加物の規格基準の向上及び国際的整合化と食品の安全性確保のため、調査研究を行った。
研究方法
赤外吸収スペクトル(IR)法:試料の性質に応じた測定法によりIRを検討した。NMRを用いた新規定量法(qNMR):qNMRを構築し、香料及び合成着色料の定量を行った。増粘安定剤の残留溶媒分析:ヘッドスペース(HS)-GC法を検討した。香料化合物の自主規格:我が国で類指定されている香料化合物の規格実態を調査し,自主規格を策定した。天然香料基原物質の使用実態調査:データベースを作成し、アンケート調査の集計、解析を行った。生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量推定:食品添加物の製造、輸入事業者を対象に行った指定添加物及び既存添加物の生産量等調査を基に摂取量を推定した。塩素系殺菌料処理により生成する揮発性成分の解明:HS-GC/MS法を用いて分析を行った。ソルビン酸(SA)の細胞機能へ及ぼす影響: SA誘導体の構造決定及びSA存在下及び非存在下でのマウス・マストサイトーマP-815細胞株の細胞質の動態変化を比較測定した。
結果と考察
食品添加物の確認試験において基準IRとなり得る標準的なIRとその測定法を確立した。構築されたqNMRは実用的であり、迅速かつ正確な定量分析法であると考えられた。増粘安定剤中の残留溶媒分析法における酵素処理HS-GCの有用性を示した。これまでに1491品目の香料化合物自主規格を策定し、世界最大級の流通実態を反映した規格集とすることができた。天然香料基原物質の実態調査により、平成20年には基原物質リストの612品目のうち481品目及び新規6品目が我が国で使用されていたことを明らかにした。生産量統計調査を基にした摂取量推定により、食品添加物の摂取の傾向を明らかにした。塩素系殺菌料処理により生成する揮発性成分の解明により健康影響を評価する上での基礎的知見が得られた。SA は一過性にP-815細胞の増殖を抑制し、また、細胞内情報伝達系の要であるCa2+の濃度を変化させていることを明らかにした。
結論
IR、qNMR、残留溶媒分析法の検討、香料化合物自主規格の策定は食品添加物の規格及び試験法の向上に寄与するものであり、天然香料基原物質実態調査、食品添加物摂取量調査、塩素系殺菌料処理由来の揮発性成分及びSAの細胞機能影響に関する研究では食品添加物行政の安心・安全の確保に資する知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200939007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国際整合性が確保された分析法の構築を目指し、国際単位系(SI)へのトレーサビリティを確保した定量核磁気共鳴法(qNMR)の構築を目的として、香料ピラジン類及びタール色素の絶対定量について検討した。その結果、qNMRが食品添加物の絶対定量法として実用的であることを見出した。また、確認試験として汎用されている赤外吸収スペクトル(IR)法について、日本国での規格基準向上のため、外国とは環境の異なる日本国において、再現性の良いIRを得るためのIRの測定法を確立し、標準IRを作成した。
臨床的観点からの成果
臨床的研究は行っていないため、成果はない。
ガイドライン等の開発
香料化合物の自主規格化では、1491化合物の自主規格を策定し、58化合物に準規格を275化合物に暫定規格を策定した。食品衛生法施行規則別表第1に収載されている個別指定香料98品目を含めると1589化合物に規格化が図られ、世界最大の流通実態を反映した規格集とすることができた。また、フルスペックではないが準規格・暫定規格として333化合物をまとめた意義も大きいものと考える。本調査研究の結果は消費者あるいは利用者の安全と安心に十分寄与できるものと考える。
その他行政的観点からの成果
本研究で作成されたポリソルベート20、60、65及び80の標準IRは新規に指定された食品添加物の参照スペクトルに採用された(薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会、平成19年7月4日)。また、生産量統計を基にした食品添加物の摂取量の推定については、過去8回の指定添加物についての調査の結果、ADIのある食品添加物毎の摂取量推定値は、そのADIよりも充分に低い値であった。我が国の調査結果が食糧農業機関(FAO)/世界保健機関(WHO)合同食品添加物専門家会議JECFAでも活用されている。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sugimoto, N., Koike, R., Furusho, N. et al.
Quantitative nuclear magnetic resonance spectroscopic determination of the oxyethylene group contents of polysorbates
Food Additives and Cntaminants , 24 (8) , 799-806  (2007)
原著論文2
Mine, T., Okada, Y., Semma, M.
The interaction of sorbic acid with amino acid may alter the quality of processed foods somewhere in the food chain from production to table
Japanese Journal of Food Chemistry and Safety , 14 (1) , 23-26  (2007)
原著論文3
Horiyama, S., Honda, C., Suwa, K. et al.
Sensitive and simple analysis of sorbic acid using liquid chromatography with electrospray ionization tandem mass spectrometry
Chem. Pharm. Bull. , 56 (4) , 578-581  (2008)
原著論文4
Tatebe, C., Kawasaki, H., Kubota, H. et al.
Analysis of residual solvent in thickeners by headspace gas chromatography using a standard addition method
Japanese Journal of Food Chemistry and Safety , 16 (2) , 78-83  (2009)
原著論文5
Horiyama, S., Honda, C., Suwa, K. et al.
Negative and positive ion mode LC/MS/MS for simple, sensitive analysis of sorbic acid
Chem. Pharm. Bull. , 58 (1) , 106-109  (2010)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-