食品中の有害物質等の摂取量の調査及び評価に関する研究

文献情報

文献番号
200939003A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の有害物質等の摂取量の調査及び評価に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
松田 りえ子(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 杉山英男(国立保健医療科学院)
  • 堤 智昭(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
31,360,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品の安全性評価を目的として,食品中に存在する有害物質に関するデータを収集した.トータルダイエット(TD)試料を用いて,有機塩素系農薬,PCB,有害金属および放射性核種の摂取量を推定するとともに,ハイリスクグループと考えられる乳児における摂取量調査方法についての検討を行った.また,今後の摂取量推定を目指して種種の食品中の芳香族炭化水素(PAHs)の分析方法の文献調査を行った.
研究方法
46カ所の食品中汚染物検査データ64万件を収集し,データベースに追加した.10カ所でTD試料を調製し,有害金属,塩素系農薬,有機リン系農薬,PCBの1日摂取量を推定した.また,4カ所のTD試料を用いて放射性核種の摂取量を調査した.離乳の手引き等を参考にして,乳児の平均的な食事試料の作成を試み,鉛の1日摂取量を推定した.毒性が懸念されるPAHsを網羅的に分析できる分析法の文献68報を選定し,対象食品および分析方法について調査した.
結果と考察
64万件の汚染物検査データから,検出率・検出頻度の高い農薬等を明らかにした.有機塩素系農薬,有機リン系農薬,PCBの1日摂取量は非常に少なかったが,鉛・カドミウム等の金属はTDIの数十%程度の摂取量であった.摂取量が上昇傾向にある汚染物は見られなかった.放射線核種中40Kと210Poが被ばく線量に大きな比率を占め,諸外国に比べて210Poの寄与が大きいことが特徴であった.離乳期の鉛摂取量は0.18-0.24 µg/kg/dayと推定され,PTWIの10%以下であった.母乳の寄与を正しく見積もる方法を開発することが,乳児におけるリスク評価に重要と考えられた.PAHs分析は, GC/MS/MSと安定同位体を使用した内標準法を組み合わせた方法が有望と考えられた.
結論
汚染物モニタリング及び汚染物摂取量調査データは,食品の化学汚染状況を明らかとし食品の安全性保証の基礎的データとなった.試作したモデル離乳食により推定した鉛摂取量は,成人の結果と同程度であった.鉛摂取には調製粉乳からの寄与が多いことが示された.放射線核種摂取量を推定結果は,食品中の放射能に対する安心・安全確保推進対策における基礎資料となった.信頼性の高いPAHs測定結果が得られる方法を見いだし,今後のPAHs摂取量推定研究の基礎的知見となった.

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200939003B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中の有害物質等の摂取量の調査及び評価に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
松田 りえ子(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部 )
  • 堤 智昭(国立医薬品食品衛生研究所 食品部 )
  • 杉山英男(国立保健医療科学院)
  • 長岡恵(国立医薬品食品衛生研究所 食品部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品安全性評価のために食品中有害物質濃度データの収集,各種有害物質摂取量の推定を行った.摂取量推定方法の改良を目的として推定方法の調査,結果の比較,乳児の摂取量調査方法の研究を実施した.
研究方法
トータルダイエット(TD)試料を用い,有機塩素系農薬,PCB,有害金属等,放射性核種の摂取量を推定した.全国から汚染物検査データ170万件を収集しデータベース化した.摂取量推定方法の特性を調査し,種種の方法によるトランス脂肪酸(TFA)摂取量推定値を比較した.乳児における摂取量推定方法を検討する目的で,モデル離乳食を作成し鉛の摂取量を推定した.硝酸塩の主要摂取源となる野菜を特定し,この結果を基に,大根,レタス,ホウレンソウ中の硝酸塩濃度の周年変動を調査した.複雑なマトリクス中多環芳香族炭化水素(PAHs)を分析可能な方法の文献調査を行った.
結果と考察
有機塩素系農薬類,有機リン系農薬類,PCB1日摂取量の対ADI比は1%以下であったが,鉛は7%,Cdは47%であった.農薬等の検出率は,試料数を基準として15?20%であった.放射線核種中40Kと210Poが被ばく線量に大きな比率を占め,諸外国に比べて210Poの寄与が大きいことが特徴であった.TFA摂取量推定値は,推定方式により異なり,TD試料方式の補正方法検討の必要性が示された.離乳期の鉛摂取量はPTWIの10%以下であった.母乳の寄与の見積もりが,乳児におけるリスク評価に重要と考えられた.硝酸塩の摂取量の1/3以上がホウレンソウにより,その硝酸塩濃度の低減が摂取量の低下に有効であることが明らかになった. PAHs分析は, GC/MS/MSと安定同位体を使用した内標準法を組み合わせた方法が有望と考えられた.
結論
TD試料による汚染物摂取量調査及び汚染物検査データ収集は1977年から長期間継続して実施されており,食品の安全性を全体的に評価する重要な資料となっている.放射能摂取量中210Poの摂取が大きく寄与していることが明らかとなった.摂取量推定の信頼性向上について,多くの知見が得られた.我が国での硝酸塩摂取量はADIを超えているが,その原因と対処作を明らかにした.信頼性の高いPAHs測定結果が得られる方法を見いだし,今後のPAHs摂取量推定研究の基礎的知見となった.

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200939003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
汚染物摂取量は1977年から継続しており,食品衛生における貴重なデータとして審議会等で参考とされている.放射線核種摂取量において210Poが大きく寄与していることを明らかにした.我が国における硝酸塩摂取量が高いことは知られていたが,夏期にホウレンソウ中の硝酸塩濃度が非常に高い事が主要な原因であることを明らかにした.乳児における摂取量研究の基礎となる手法を開発した.
臨床的観点からの成果
臨床に係わる研究を実施していない.
ガイドライン等の開発
ガイドライン等は開発していない.
その他行政的観点からの成果
カドミウム摂取量データは薬事・食品衛生審議会規格部会の参考資料とされた.鉛摂取量データは食品安全委員会鉛WGの参考資料とされた.トランス脂肪酸摂取量結果は,消費者庁トランス脂肪酸に関する技術作業チームの参考資料とされた.
その他のインパクト
第7回食品安全フォーラム(平成21年11月30日)を開催し成果の一部を発表した.

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
「トータルダイエット試料を用いた食品汚染物の1日摂取量調査 1977?2007年度」(国立医薬品食品衛生研究所食品部編)刊行.第7回食品安全フォーラム(平成21年11月30日)開催

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
松田りえ子, 渡邉敬浩,  五十嵐敦子他 
トータルダイエット試料の分析による硝酸塩の摂取量推定
食品衛生学雑誌 , 50 (1) , 29-33  (2009)
原著論文2
Sugiyama H., Takahasi MN, Terada H., et al.
Accumulation and localization of cesium in edible mushroom (Pleurotus ostreatus) mycelia
J. Agric. Food Chem. , 56 , 9641-9646  (2008)
原著論文3
Iijima I., Takagi H., Tomura K., et al.
Evaluation of cesium-137 (137Cs) and elements intake from daily diets in residents of Kanagawa prefecture, Japan.
J. Health Sci. , 55 , 192-205  (2009)
原著論文4
Sugiyama H., Terada H., Isomura K., et al.
Internal exposure to 210Po and 40K from ingestion of cooked daily foodstuffs for adults in Japanese cities.
J. Toxicol. Sci. , 34 (4) , 417-425  (2009)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-