職業性石綿ばく露による肺・胸膜病変の経過観察と肺がん・中皮腫発生に関する研究

文献情報

文献番号
200938007A
報告書区分
総括
研究課題名
職業性石綿ばく露による肺・胸膜病変の経過観察と肺がん・中皮腫発生に関する研究
課題番号
H20-労働・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岸本 卓巳(独立行政法人労働者健康福祉機構岡山労災病院 アスベスト関連疾患研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 坂谷 光則(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
  • 井内 康輝(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 病態情報医科学講座病理学研究室)
  • 由佐 俊和(独立行政法人労働者健康福祉機構千葉労災病院)
  • 三上 春夫(千葉県がんセンター 研究局がん予防センター)
  • 水橋 啓一(独立行政法人労働者健康福祉機構富山労災病院 アスベスト疾患センター)
  • 荒川 浩明(獨協医科大学病院 放射線科)
  • 玄馬 顕一(独立行政法人労働者健康福祉機構岡山労災病院 呼吸器内科)
  • 芦澤 和人(長崎大学病院 がん診療センター)
  • 青江 啓介(独立行政法人国立病院機構山口宇部医療センター 第二腫瘍内科)
  • 加藤 勝也(岡山大学病院 放射線科)
  • 伊藤 秀美(愛知県がんセンター研究所 疫学・予防部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在および過去の石綿ばく露労働者の肺がんおよび中皮腫早期病変の発見に努める。
H18,19年に死亡した中皮腫例について、遺族の同意を得た上で医療機関に依頼し、職業性石綿ばく露歴等について情報を得、H15年からH17年までの中皮腫死亡者に関するデータと比較し、中皮腫の診断精度がどのように変化したかを調査する。そして、石綿ばく露を受けた労働者に対しての健康管理のあり方、診断能の向上、将来予測等の基礎資料に供する。
研究方法
石綿健康管理手帳を有する者および現役労働者に対して、低線量CT(腹臥位)を撮影する。その一部に対して、中皮腫診断のために血清ERC-Mesothelinの測定を行う。
H18,19年に死亡した症例のうち、遺族および診断病院の同意が得られた症例の臨床経過、画像、および病理組織を得て、研究班で再検討を行い、中皮腫かどうかの確定診断を行う。また、職業性石綿ばく露歴、ばく露年数と中皮腫発生までの潜伏期間について調査する。
石綿肺、胸膜プラークの診断上の留意点について、鑑別診断の関点から検討する。
結果と考察
胸部CT検診対象者1,635例のうち、14例(0.86%)の原発性肺がんと2例(0.12%)の胸膜中皮腫を診断した。
平成18,19年に死亡した症例のうち臨床データ、画像および病理組織が送付された119例について再検討を行ったところ、21例(17.7%)は中皮腫以外の疾患であった。職業性石綿ばく露を調査した196例中148例(75.5%)では職業性ばく露歴があった。石綿ばく露期間の中央値は30年、初回ばく露からの潜伏期間の中央値は46年であった。
石綿肺として診断を受けていた38例のうち、臨床・画像および病理の双方の診断が一致した症例は10例(26.3%)のみで、肺内石綿小体数はすべて10万本/g以上であった。
胸膜プラークを診断する際には、限局性で吸収値が高く、肺を壁側から圧迫するおよび多発性であるなどの特徴像が有意義であった。
結論
職業性石綿ばく露者に対する胸部CT検診での肺がんの検出率は0.86%で、一般人対象の検診に比べて高かった。H18,19年でも中皮腫以外の疾患を中皮腫と診断した誤診率が17.7%あり、H15-17年までと同様の結果であった。中皮腫発生に関わる職業性石綿ばく露率は75.5%であり、潜伏期間は46年であった。石綿肺診断には画像と病理診断の間に差があるため、慎重な判断が求められる。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
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