じん肺健康診断におけるエックス線デジタル撮影画像の活用に関する研究

文献情報

文献番号
200938002A
報告書区分
総括
研究課題名
じん肺健康診断におけるエックス線デジタル撮影画像の活用に関する研究
課題番号
H19-労働・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
村田 喜代史(国立大学法人滋賀医科大学 医学部放射線医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 相澤 好治(北里大学 医学部)
  • 岸本 卓巳(労働者健康福祉機構岡山労災病院 内科)
  • 坂谷 光則(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター 内科)
  • 日下 幸則(福井大学 医学部)
  • 志田 寿夫(なし)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 じん肺健康診断に用いられる胸部エックス線写真はアナログ画像からCR,DRといったデジタル画像に急速に転換されつつあることから、これらのデジタル画像に対応したじん肺健康診断システムの確立が緊急の課題となっている。特に、じん肺エックス線分類の比較対象は、今なお1980年代のアナログ標準写真であり、現在の胸部エックス線写真とは大きく異なっていることから、デジタル画像での標準写真を作成することが重要である。また、現在認められているじん肺デジタル表示条件は、心臓縦隔部の肺癌検出における問題点が指摘されていることから、改善策を検討した。
研究方法
 これまでの班研究において7施設から集積された1209例のCRおよびDR写真の中から、病変分布の均一性や胸郭変形の有無、CT画像での病変の有無ををじん肺専門医の合同会議によって行い、症例の絞り込みを行なった。また、じん肺条件における心臓縦隔部の描出能を改善するために、肺野の画質を大きく変えることなく、低濃度部の描出能を改善するダイナミックレンジ圧縮処理をじん肺表示条件に加えることが可能かどうかを検討した。じん肺患者63例において、じん肺表示条件とダイナミックレンジ圧縮処理付加条件の2枚の画像を作成し、12人の読影医によって両者の一致度を評価した。さらに、じん肺診断におけるデジタル画像活用の各国の現状と国際的標準化を推進しているILOの現状を調査検討した。
結果と考察
じん肺デジタル標準写真候補として、0型19例、粒状1型23例、粒状2型11例、粒状3型5例、4型11例、不整形1型8例、不整形2型4例、不整形3型2例の計83例を抽出した。じん肺デジタル標準写真作成に向けた症例収集が完了し、より多くの専門医の検証によって、最終候補を選択する予定である。じん肺表示条件での病型判定とダイナミックレンジ圧縮処理付加条件での病型判定の一致の程度は、フィルム評価で平均一致率が79.9%、カッパ値の平均が0.7364、モニターでの評価においても、平均一致率が83.1%、カッパ値の平均が0.7544、と良好な一致度を示した。じん肺診断におけるデジタル画像の活用は国ごとに大きな違いがみられたが、ILOではじん肺におけるデジタル画像利用のガイドライン作りが進行中であることが明らかになった。

結論
デジタルじん肺条件の短所を補うために、ダイナミックレンジ圧縮処理をじん肺表示条件に加えることが望ましいと考えられた。また、デジタル標準写真のたたき台が完成した。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200938002B
報告書区分
総合
研究課題名
じん肺健康診断におけるエックス線デジタル撮影画像の活用に関する研究
課題番号
H19-労働・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
村田 喜代史(国立大学法人滋賀医科大学 医学部放射線医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 相澤 好治(北里大学 医学部)
  • 岸本 卓巳(労働者健康福祉機構岡山労災病院 内科)
  • 坂谷 光則(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター 内科)
  • 日下 幸則(福井大学 医学部)
  • 志田 寿夫(なし)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、CRやDRといったデジタル画像撮影装置が急速に医療機関に導入され、じん肺患者の診療にも幅広く使われるようになり、デジタル画像に対応した、じん肺健康診断やじん肺診査システムの構築が緊急の課題となっている。また、現在の病型判定の基準となるじん肺標準写真は1980年代のアナログ画像で作成されており、デジタル胸部画像を用いた新たな標準写真の作成が必要不可欠である。本研究は、これらの種々の課題に対して基礎的な検討を行ない、新たなデジタルじん肺診査システムの構築を目指すものである。
研究方法
 じん肺診断に適切なデジタル画像の撮影表示条件を検討するために、現在のじん肺条件の問題点とされている心臓縦隔部の描出能の改善を目指して、低濃度部の描出能を改善するダイナミックレンジ圧縮処理を加えた画像と通常のじん肺条件画像との比較検討を63例のじん肺患者で、12名の診断医の読影で行った。またモニター診断を考慮し、適切なマトリックスサイズおよびカラーと白黒の違いについても検討した。さらに、現在のデジタル装置間の画像不整合の発生原因とその解決法についても検討するとともに、デジタル標準写真作成に向けて、7施設から集積された1209例のCR写真およびDR写真の絞り込みを行なった。
結果と考察
 ダイナミックレンジ圧縮処理画像と通常のじん肺条件画像の病型判定の一致度は、フィルム評価で平均カッパ値が0.7364、モニター評価で平均カッパ値が0.7544、と良好な一致度を示し、ダイナミックレンジ圧縮処理をじん肺表示条件に加える妥当性が証明された。じん肺診断に適切なモニターマトリックスサイズは3M以上で、白黒モニターとカラーモニターの間の比較読影実験では、じん肺判定における両者の平均カッパ値が0.7403 と良好な一致度を示し、カラ―モニターは白黒モニターと同等に使用できると考えられた。装置間の画像不整合の解決法として、画像生成装置から出力されるDICOMデータはP値で出力することを必要条件とし、DICOMビューワは一切変更せずにGSDFキャリブレーションが行われた高精細モニタに表示指示をするシステムを要求することによって画像表示の一貫性が確保されると考えられた。83例のデジタルじん肺標準写真候補の絞り込みが完成し、近日中に地方じん肺審査医の読影実験を通じて最終決定する予定である。
結論
 適切な撮影表示条件を用い、標準化された装置やデータ保存システムを用い、デジタルじん肺標準写真を対象とすることによって、じん肺健康診断をデジタル画像システムで行うことが可能である。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200938002C