遠隔医療の概念整理と遠隔連携に関する研究

文献情報

文献番号
200937074A
報告書区分
総括
研究課題名
遠隔医療の概念整理と遠隔連携に関する研究
課題番号
H21-医療・指定-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
川島 孝一郎(仙台往診クリニック 診療部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
在宅医療の進展に遠隔医療の導入・運用が寄与するか、逆に在宅医療の障害になるかについての検討が、今後の在宅医療の展開に重要な影響を与える。したがって在宅医療の場における遠隔医療の導入・運用に対し、調査研究に基づく十分な根拠を得ることを目的とする。医療提供体制における連携及び介護提供体制における連携の有無、情報共有等について検討し、医師の説明と生活支援内容如何によって変化する在宅医療の現場において、遠隔医療の有益性の有無を調査する。また遠隔医療の運用が有益となるための条件等について具体化する必要がある。
研究方法
1)全国在宅療養支援診療所11,881ヶ所の医師を対象に、遠隔医療の有効性・限界・在宅医療への影響、遠隔医療を導入した際の訪問診療や在宅看取り等との関係に関するアンケート調査を行った。
2)全国の自治体病院に対し、病院-診療所間における在宅医療適応となる患者の情報共有に関する遠隔医療の必要性に関して検討するデータを作成する。遠隔医療の導入・運用に対する施設体制、24時間の訪問等診療の対応、医師の看取り等を含めた調査項目を選定した。
結果と考察
病院医師は医師―医師間のデータ授受、在宅療養支援診療所医師は、医師―患者間での利用価値が高いと考えているものの、約8割の医師は、遠隔医療はあくまでも対面診療の補助であると考えている。技術進歩に期待を持つ一方、遠隔医療を導入しても24時間の体制をとることは困難であり、在宅での看取りとは関連しないと考えている。対面によって無意識に得ている豊富で重要な情報(患部の細部、立体感、匂い、家族の様子等)をIT技術のみで得ることは非常に困難であると言える。在宅医療の適応患者に対して、テレビ電話形式の遠隔医療を行うことによる、十分なメリットを生む理由はないと考えられる。
結論
遠隔医療が在宅医療に寄与することが可能となるためには、まず遠隔医療を利用する医師の側に、ICFの理念に基づいた「治す医療」から「支える医療」への転換、「最期まで在宅生活し看取られる」これらの基礎があって初めて遠隔医療を利用する理由と国民の利益が一致することになる。遠隔技術は「在宅での生活機能=生きることの全体を最期まで支える」ために必要な頻回の訪問をあくまでも補助するものであり、あくまでも在宅での看取りを十分に行い得る在宅療養支援診療所が、ツールの1つとして有効に利用できるものと言える。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200937074C