剖検率に影響を与える諸因子に関する研究

文献情報

文献番号
200937050A
報告書区分
総括
研究課題名
剖検率に影響を与える諸因子に関する研究
課題番号
H21-医療・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 誠(藤田保健衛生大学医学部病理診断科1)
研究分担者(所属機関)
  • 相馬 孝博(東京医科大学医療安全管理学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
剖検の重要性は大多数の医師が認めるところであるにもかかわらず、近年減少傾向に歯止めがかからない。そこで、臨床医,病理医ともに医師の属性、置かれている立場、医師の意識などの変数を用いて、剖検数が近年減少傾向にある理由を考察した。
研究方法
臨床医編と病理医編とに分けてアンケートを作成し実施した。臨床医は2次以上の医療圏にて核となっている病院から選定した後期研修医以上のすべての医師を対象として、病理医は日本病理学会認定施設のすべての医師を対象として、臨床医2655名,病理医945名に剖検に関する意識調査を実施し結果をまとめた。
結果と考察
臨床医は内科,外科を中心に剖検に積極的に取り組んでおり、後進の医師に剖検を積極的に進めたいという医師が多い事実も判明した。病理医は剖検実施体制で、休日も実施するという回答が多く、積極的に取り組んでいる姿勢が判明した。全体として、剖検に対する意識は依然として高く、これは医師個人の問題ではなく、病院としての姿勢や遺族の理解といった因子が大きく関わっていると考えられる結果となった。臨床医,病理医ともに積極的に剖検に取り組んでいるにもかかわらず、剖検率の低下に歯止めがかからないという事実とは矛盾があるようにみえてしまうが、臨床医においてはサンプリング・バイアスが原因として考えられた。かつての高い剖検率を鑑みると昔日の感である。従って、本研究の結果、個々の医師は剖検に対して努力していても、という前提で、剖検率低下を論ずる必要があると考えられた。医師と患者およびその家族の信頼関係の構築が困難な時代になってきており、その背景でいかに剖検に対しての理解を深めていくかについては越えなければならないハードルが実に多い。しかしながら約50年前の沖中博士の調査から5回実施されている剖検結果と臨床診断の不一致率の研究では、驚くことにすべてが約10%程度であり、画像診断等が飛躍的に発達した現在でも、ほとんど変わっていないというもう一方の現実がある。今後の剖検のあり方に関しては、何をどのように取り入れていくかも大きな課題である。
結論
剖検に対する医師の意識調査の結果、個々の医師は積極的に剖検に取り組み、後進に伝えたいという意識を持っているが、科によってその意識にばらつきがある。個々の科で剖検の重要性を説くのでなく、病院全体で取り組むことによって、日本全体の剖検率の低下に歯止めをかけることが可能と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-07
更新日
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