歯科分野における診療ガイドラインの評価とその普及に関する研究

文献情報

文献番号
200937026A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科分野における診療ガイドラインの評価とその普及に関する研究
課題番号
H20-医療・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
石井 拓男(東京歯科大学 社会歯科学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 杉崎 正志(東京慈恵会医科大学 歯科学教室)
  • 川崎 浩二(長崎大学病院 地域医療連携センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 近年,診療ガイドラインの作成においてペイシェント・クエスチョン(PQ)という患者の疑問の重要性が述べられていることから,本研究では歯科領域におけるPQ収集に関する知見を得たのでその概要を報告する.
研究方法
I.(社)日本顎関節学会のPQ収集方法の概要
・インターネット上で顎関節症に関する悩みを収集した予備調査
・一般開業医に受診する顎関節症患者にアンケート実施
・朝日新聞と毎日新聞でインタビュー対象者を募り,面接によるPQの収集
II.(社)日本補綴歯科学会『歯の欠損の補綴歯科診療ガイドライン 2008』の患者向けガイドライン作成に向けたPQの収集
1.患者アンケートによる収集
・岡山県老人クラブ連合会主催の研修会や講習会に参加している65歳以上の高齢者
・岡山大学病院補綴科(クラウンブリッジ)を受診した全患者
2.患者インタビューによる収集
 総義歯に関するPQの収集のための,インタビュー対象者の選考,インタビュー方法,分析方法について検討
結果と考察
 インターネットによる調査ではPQとしてまとめられないことも多かったが,今後の面接ならびに質問用紙に含めるべきキーワードの抽出に役立つと考えられた.一般開業医での調査では,マウスピースによる治療法が患者にかなり周知されていることを思わせた.また,雑音に対する見解の提出と啓発活動の必要性が学会に示されたと考えられた.新聞紙上への広告から参加した患者への面接では,患者の病識の乏しさが目立ち,学会の啓発活動の強化が必要と考えられた.
 患者アンケートによる収集では,補綴治療や歯の欠損について一般市民や患者が感じている疑問は,歯科医師が通常思い当たる範疇を大きく超えて広がっていることが明らかとなった.患者インタビューによる収集では,かつて治療を受けていた元患者や,これから患者になる可能性のある人も対象としたところ,PQ作成に有用であると考えられた.一方,患者の関心事をPI(E)CO形式で定型化することは難しいため,診療ガイドライン作成委員会への患者・支援者委員の参画等によって,PQの定型化を行うべきと考えられた.
結論
 それぞれの方法で集まる疑問に共通性と,反対に独自の疑問や問題点がみつかった.また,対象者の選択方法や質問形式にも問題点が多数見いだされた.どのような対象者の選択方法及び質問形式が適切なのかは明確には出来なかったが,今後,歯科領域の他の医療消費者向け診療ガイドラインを作成するにあたり,有益な知見を得た.

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200937026B
報告書区分
総合
研究課題名
歯科分野における診療ガイドラインの評価とその普及に関する研究
課題番号
H20-医療・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
石井 拓男(東京歯科大学 社会歯科学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 杉崎 正志(東京慈恵会医科大学 歯科学教室)
  • 川崎 浩二(長崎大学病院 地域医療連携センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医療技術の高度化・成熟化,国民の医療に対するニーズの多様化,医療財政の逼迫などを背景として,医療の質についての関心が高まってきている.医療の質の向上を図る方策として,EBMの手法に基づく一定の方法論の検討に基づく診療ガイドライン(以下,診療GL)が注目されている.我が国では,インターネット上で診療GLを公開するシステムづくりが行われ,多くの診療GLが公表されるようになった.一方,歯科領域においては,各専門学会が診療GLの作成に取り組んでいるものの,現在のところその周知及び評価が十分とは言えないことから,以下の研究を行った.
研究方法
 歯科領域における診療GLの現在及び今後の作成への取組を把握するために,歯科臨床系の25学会を対象にアンケート調査を行った.歯科診療GLの普及啓発及び患者参加による診療GLの作成について検討する基礎資料とすることを目的に,NPOを一般集団の代表として,診療GLに関するアンケートを実施した.歯科診療GLに関する情報の診療現場への一層の普及・理解・定着を促進するために,シンポジウムを開催した.患者向けGL作成のためのペイシェント・クエスチョン(PQ)収集の手段を確立することを目的として,(社)日本顎関節学会のPQ収集,(社)日本補綴歯科学会『歯の欠損の補綴歯科診療ガイドライン 2008』の患者向けガイドライン作成に向けたペイシェント・クエスチョンの収集 -患者アンケートによる収集・患者インタビューによる収集-について調査を行った.
結果と考察
 平成18年度時の調査と比して,既に作成された診療GLがある学会,現在作成中の学会,今後作成予定の学会いずれも増加した.また,学会間の連携や患者の参画など,診療GL作成上の課題が明らかとなり,歯科診療GL作成の優先順位については,高頻度の治療の優先度が高かった.NPOの歯科診療GLの認知度は低いものの,ニーズは高いことが明らかとなった.PQの収集にあたり,適切な対象者の選択方法及び質問形式は明確には出来なかったが,今後,歯科領域の患者向け診療GLを作成するにあたり,有益な知見を得た.
 今後,診療GL作成上の課題を解決しうるインフラの整備,早期の歯科診療GLの整備と,作成への患者参加をより一層推進すると同時に,国民向けの普及啓発の必要性が示唆された.
結論
 これらの研究により,歯科診療GLを作成するにあたり,種々の有益な知見を得た.今後,歯科領域におけるより一層のPQの収集と診療GLの整備が期待される.

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200937026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
学会間の連携や患者の参画など,歯科診療ガイドライン作成上の課題が明らかとなった.患者向け歯科診療ガイドライン作成のためのPQの収集にあたり,適切な対象者の選択方法及び質問形式は明確には出来なかったが,今後,歯科領域の患者向け診療GLを作成するにあたり,有益な知見を得た.
臨床的観点からの成果
アンケート及びシンポジウムを通じて,歯科診療ガイドラインに関する情報を歯科界の各臨床研究分野の方々に共有してもらい,診療現場への一層の普及・理解・定着を促進した.また,多くの歯科診療ガイドラインの作成をうながした.
ガイドライン等の開発
これらの取組を通じて,歯科臨床系の学会において多くの歯科診療ガイドラインが作成されつつある.日本歯科医学会歯科診療ガイドラインライブラリーに7編の歯科診療ガイドラインが公開(準備中を含む)された.医療情報サービスMindsには3編の歯科診療ガイドラインが公開されている.
その他行政的観点からの成果
歯科診療所における歯科保健医療の標準化のあり方等に関する検討会において,本研究班の成果を参考にとりまとめられた.その結果,今後の進め方として日本歯科医学会は、常置的な委員会を設けて具体的な内容について検討するとともに、各分科会等により作成された診療ガイドラインの評価・調整を行うことが必要とされ,歯科診療ガイドラインライブラリーが設置された.
その他のインパクト
日本歯科医師会・日本歯科医学会の後援の下,関係学会・歯科医師会・大学を対象に平成20年11月13日(木)東京歯科大学水道橋校舎 血脇記念ホールにて13:30から17:00にシンポジウムを開催した.

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
木野孔司,杉崎正志,湯浅秀道 他
顎関節症の診療ガイドラインにおける"Patient Question "の系統的把握のための患者・医療消費者予備的アンケート
日本顎関節学会雑誌 , 22 (1) , 9-14  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-25
更新日
-