医学部教育、臨床研修制度、専門研修を縦断するカリキュラムの作成と医師養成の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
200937024A
報告書区分
総括
研究課題名
医学部教育、臨床研修制度、専門研修を縦断するカリキュラムの作成と医師養成の在り方に関する研究
課題番号
H20-医療・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
徳田 安春(国立大学法人筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 福井 次矢(聖路加国際病院)
  • 後藤 英司(横浜市立大学)
  • 大滝 純司(東京医科大学)
  • 小俣 富美雄(聖路加国際病院)
  • 高橋 理(聖路加国際病院)
  • 大出 幸子(聖路加国際病院)
  • 石田 也寸志(聖路加国際病院)
  • 副島 久美子(聖路加国際病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
2,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新しい卒後医学教育プログラムによる救急医療におけるケアの質への影響を調べるため、新旧卒後臨床研修プログラム(PGME)修了の医師間で、救急医療におけるケアの質および救急ケアへの意識を比較した。
研究方法
研究デザインとして、断面的調査を行った。研究対象者として、卒後4~9年の医師279名中208名の回答を得た(75%)。研究方法として、26場面の様々な急性病態に対する治療選択に関する質問票を用いて救急医療におけるケアの質の評価を行った。各質問には6つの選択肢が用意され、そのうち正解は1つである。効果量は、総スコアの差をスコア分布の標準偏差で割り求めた。救急医療における意識は、様々な救急医療状況で急性疾患の患者を治療する際、どれくらい自信を持って行っているかについて尋ね、自己報告した4段階により評価した。
結果と考察
ケアの質の平均スコアは、旧PGMEプログラム群(12.8)と比較し、新PGME群(15.3)で有意に大きかった。治療分析においてスコアの差は2.5 (p<0.01)で、そのエフェクト・サイズは中程度の差(0.47)が存在すると考えられた。個々の医師の共変量について補正がなされた総スコアの直線回帰にても同様の結果を示し、調整後スコア差は2.5(p<0.01)、調整後エフェクト・サイズは0.47であった。救急医療における意識についての4項目に関しては、新PGMEプログラム群では、旧PGMEプログラム群と比較し、有意に自信が増す傾向が示された(全てp<0.05)。
結論
新卒後臨床研修プログラム修了医師は、旧卒後臨床研修プログラム修了医師と比較して、救急医療においてより高い質のケアを提供している。また、新卒後臨床研修プログラム修了医師は、旧卒後臨床研修プログラム修了医師と比較して、救急医療においてより大きな自信を持っていると考えられる。以上のことから、新卒後臨床研修プログラムは医療の質向上に有効であったと証明される。

公開日・更新日

公開日
2010-03-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200937024B
報告書区分
総合
研究課題名
医学部教育、臨床研修制度、専門研修を縦断するカリキュラムの作成と医師養成の在り方に関する研究
課題番号
H20-医療・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
徳田 安春(国立大学法人筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 福井 次矢(聖路加国際病院 )
  • 後藤 英司(横浜市立大学 )
  • 大滝 純司(東京医科大学)
  • 小俣 富美雄(聖路加国際病院 )
  • 高橋 理(聖路加国際病院 )
  • 大出 幸子(聖路加国際病院 )
  • 石田 也寸志(聖路加国際病院 )
  • 副島 久美子(聖路加国際病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臨床研修重点化のため、近年モデル・コア・カリキュラムが日本の医学部教育に導入された。今回我々は、新卒医師の卒後臨床研修に対する準備度についての意識を調査し、教育環境および医師国家試験(NMLE)合格率と研修準備度との関連性を評価した。
研究方法
郵送による断面的調査を行い、2429名のPGY-1(卒後年数1年)の研修医からデータを得た(回答率は36%)。日本の80の大学における学習環境の評価にはDundee Ready教育環境評価(DREEM)の質問票が用いられた。臨床能力準備度は、米国医学部(医科大学)卒業生協会のアンケートより採用された6つの質問に基いて評価された。NMLE合格率のデータは厚生労働省から得た。
結果と考察
研修医のうち一般臨床技術において準備ができていたと感じた者は17%、診断の基礎知識と医学管理一般においては29%、コミュニケーションスキルにおいては48%、EBM関連スキルにおいては19%、技術的手技においては54%、身体検査に必要なスキルにおいては37%であった。卒業生の準備の認識については、大学間でかなりの差が認められた。全臨床分野における研修準備度とより良い教育環境の間には有意な正の相関が認められたが(全てp<0.01)、NMLE合格率はどの臨床分野に対する研修準備度とも有意な関連を示さず、合格率と教育環境との関係についても同様であった(全てp>0.05)。
結論
大学間の教育環境の差が、卒後臨床研修に際し、医学生が自己認識する研修準備度の差の一因となっている可能性が考えられる。従来のカリキュラムからより臨床に重点をおいたカリキュラムへ、または国家試験のありかたついての見直しが、医学部卒業生の準備度の問題に取り組むためには必要と考えられる。また、今回の研究では、実践に対する準備度とNMLEとの間の関連の低さを認めていた。自己認識による準備度が外部評価による準備度と同様である場合、NMLEは現在重点がおかれている部分ではなく実際の臨床能力を反映するように見直されるべきであろう。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200937024C