新歯科医師臨床研修制度の評価に関する調査研究

文献情報

文献番号
200937008A
報告書区分
総括
研究課題名
新歯科医師臨床研修制度の評価に関する調査研究
課題番号
H19-医療・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
俣木 志朗(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 新田 浩(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 秋山 仁志(日本歯科大学附属病院 総合歯科)
  • 平田 創一郎(徳経歯科大学 社会歯科学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科医師臨床研修が、平成18年度より必修化された。新歯科医師臨床研修制度における4年目の修了時期にあたり、今後、本制度の運用、改善に向けた見直しを行うためには、新制度の現況をさまざまな側面から経年的に調査し、新制度の有効性、効率性を評価することが必要である。本年度は平成18年度、19年度、20年度の研究成果を踏まえ、アンケートによる調査研究を行った。
研究方法
歯科医師臨床研修プログラム検索サイトD-REISに登録された平成21年度の歯科医師臨床研修施設の施設長宛に、今回の「新歯科医師臨床研修制度の評価に関する調査研究」でのアンケート調査協力の依頼状を送付した。単独型および管理型臨床研修施設長には、各施設の研修歯科医に対して、アンケート調査協力の依頼状を送付した。調査期間は平成22年2月1日から28日までとした。調査項目は、研修内容・研修効果、研修歯科医のメンタルヘルス、研修歯科医の分布状況、中断・休止・再開事例の検討である。
結果と考察
本研究の結果、新歯科医師臨床研修制度の歯科医師の資質向上への貢献度に関しては、研修歯科医から75.4%、単独型・管理型施設からは93.3%、および協力型施設からは94.6%の肯定的評価(「貢献した」「少しは貢献した」)の回答を得た。メンタルヘルスに関する研究では、研修歯科医に健康問題がおきるリスクはほぼ標準的な全国レベルであり、研修歯科医の43.1%が「抑うつ状態」である可能性が示された。研修歯科医の全国的な在籍分布状況について、すべての研修プログラムを対象に調査を行った結果、平成21年度に1年目の研修歯科医の総数は2381名であった。月平均の都道府県ごとの研修歯科医数は、最大が東京都で401.1名(17.0%)、最小が高知県の3名(0.1%)であっ。平成21年1月現在で休止例は4例、中断例は9例、前年度までの中断・休止からの再開例や研修開始の遅延が数例認められた。
結論
研修歯科医および指導歯科医から、新歯科医師臨床研修制度は、歯科医師としての資質の向上に貢献しているとの肯定的評価が得られた。必修化4年目における指導歯科医のメンタルヘルスに関する調査の結果、研修歯科医の43%が「抑うつ状態」である可能性があることが示唆された。今後は指導歯科医に対するストレスマネージメントについて検討も必要となろう。研修歯科医の地域偏在の是正のためには、今後、歯科大学・大学歯学部附属病院以外の研修施設の募集定員の増加および協力型研修施設のさらなる拡充が望まれる。研修中断が著しく減少したことから、採用時のマッチングや群内マッチングおよび研修実施中の指導の充実がうかがわれた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200937008B
報告書区分
総合
研究課題名
新歯科医師臨床研修制度の評価に関する調査研究
課題番号
H19-医療・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
俣木 志朗(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 新田 浩(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 )
  • 秋山 仁志(日本歯科大学附属病院 総合歯科)
  • 平田 創一郎(東京歯科大学 社会歯科学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成18年度より歯科診療に従事しようとする歯科医師は1年以上の臨床研修を行うことが義務付けられた。今後、歯科医師臨床研修制度の運用、改善に向けた見直しを行うためには、経年的に歯科医師臨床研修制度に関する基礎資料を収集することが必須である。そこで平成19-21年度にかけて、研修歯科医、単独型・管理型臨床研修施設および協力型研修施設の指導歯科医、臨床研修プログラムを対象にして調査研究を行った。
研究方法
調査項目は、研修内容・研修効果、研修歯科医、新制度全般に関するアンケート調査、研修歯科医のメンタルヘルス調査の経年的検討(平成19-21年度)、プログラム責任者のメンタルヘルス調査(平成19年度)、指導歯科医のメンタルヘルス調査(平成20年度)、および研修歯科医の動向、分布状況、中断・休止・再開事例の検討である。
結果と考察
本制度の歯科医師の資質向上への貢献度については延べ研修歯科医1,995名、単独型・管理型臨床研修施設347施設、協力型臨床研修施設805施設から回答を得た。本制度の目標である新制度の歯科医としての資質の向上の貢献度に関しては、研修歯科医の結果では、「貢献した」19.9%、「少しは貢献した」53.0%との回答を得た。同様に単独型・管理型臨床研修施設で「貢献した」47.6%、「少しは貢献した」44.4%、協力型臨床研修施設で「貢献した」47.1%、「少しは貢献した」46.1%であった。したがって本制度は研修歯科医と臨床研修施設双方にある一定の評価を得られたことが示された。また、メンタルヘルスに関するアンケート調査結果から、研修歯科医、プログラム責任者、指導歯科医の健康リスクは健康問題が起きるリスクが全国一般の標準的な集団と比較して変わらない傾向があること、抑うつ状態自己評価尺度(CES-D)でみた結果、研修歯科医の約半数が「抑うつ状態」である可能性、プログラム責任者、指導歯科医の3割強が「抑うつ状態」である可能性が示唆された。そして、研修歯科医の全国的な在籍分布状況について、すべての研修プログラムを対象に調査を行った結果、ほぼすべての新規参入し開始が臨床研修を受けていることが明らかとなった。また、臨床研修を受けていない者や未修了者も若干名いることが伺われた。中断・休止例も認められるが、平成21年度には減少傾向にあった。
結論
本調査研究により、特に経年的に新歯科医師臨床研修制度が定着していることが明らかにされた。しかし、一方で多くの問題点も抽出され、今後の本制度の運用、改善に資する貴重な情報を収集することができた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200937008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成19~21年度に新歯科医師臨床研修制度に関する研修内容・研修効果、新制度全般に関するアンケート調査を研修歯科医、単独型・管理型臨床研修施設、協力型臨床研修施設を対象に行った。本制度の目標である新制度の歯科医としての資質の向上の貢献度に関しては、研修歯科医の結果では、肯定的評価は平均72.7%であった。同様に単独型・管理型臨床研修施設では92.0%、協力型臨床研修施設では93.3%であり、新制度は研修歯科医と臨床研修施設双方から一定の評価を得たことが示された。
臨床的観点からの成果
研修目標の到達に関しては基本習熟コースでは「応急処置」、基本習得コースでは「救急処置」、「地域医療」の達成度が低かった。3年間の推移では、全体的に達成度が漸減している。指導歯科医の指導状況に対する評価については各評価項目で70%以上が肯定的評価であった。しかし、「研修意欲の高め方」、「研修歯科医を取り巻く状況への配慮」に関しては評価が低かった。3年間の推移では「研修歯科医を取り巻く状況への配慮」の達成度は漸増しており、改善が認められた。
ガイドライン等の開発
メンタルヘルスに関する調査結果から、研修歯科医、プログラム責任者、指導歯科医の健康リスクは健康問題が起きるリスクは標準的な傾向であること、抑うつ状態自己評価尺度(CES-D)でみた結果、研修歯科医の約半数が「抑うつ状態」である可能性、プログラム責任者、指導歯科医の3割強が「抑うつ状態」である可能性が示唆された。2010年3月12日、平成21年度歯科医師臨床研修制度研修管理委員会・委員長研修において秋山仁志が「臨床研修施設でのメンタルヘルスに対する新たな対策、プログラム責任者の役割」を講演した。
その他行政的観点からの成果
全国的な在籍分布状況について、すべての研修プログラムを対象に調査を行った結果、ほぼすべての新規参入歯科医師が臨床研修を受けていることが明らかとなった。一方、臨床研修を受けていない者や未修了者も若干名いることが伺われた。中断・休止例も認められるが、平成21年度には減少傾向にあった。研修歯科医の都道府県別の分布状況は大都市集中の傾向に大きな変化は認められなかった。今後、研修歯科医の地域偏在の是正のため、一層の歯科医師臨床研修施設の拡充が必要と考えられる。
その他のインパクト
2007年7月7日第26回日本歯科医学教育学会総会・学術大会(岐阜市)において俣木志朗(オーガナイザー)、平田創一郎、新田浩、秋山仁志がシンポジウム「新歯科医師臨床研修1年終了後の検証」を講演した。2008年11月15日第21回歯科医学会総会(パシフィコ横浜)において俣木志朗がシンポジウム「歯科医師臨床研修制度の今後を考える」:「今後の管理型施設の役割」を講演した。

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
宇塚聡、織田薫、伊波千亜紀 他
歯科医師臨床研修プログラムにおける矯正歯科ユニットの受講形式と研修態度および学習項目到達度との関連
日本歯科医学教育学会雑誌 , 15 (1) , 15-21  (2009)
原著論文2
2) Hirata S, Mataki S, Akiyama H et al.
Geographic distribution of postgraduate dental trainees in Japan.
Bull Tokyo Dent Coll. , 50 (1) , 63-70  (2009)
原著論文3
大山篤、清水チエ、高島明子 他
歯科総合診療部における初診患者の臨床教育・臨床研修への協力の現状
日本口腔診断学会雑誌  , 21 (2) , 212-217  (2008)
原著論文4
大山 篤、濱野英也、毎熊容子 他
医療面接における研修歯科医と模擬患者の相互理解の相違に関する研究
日本歯科医学教育学会雑誌 , 24 (3) , 314-320  (2008)
原著論文5
平田創一郎、岡田眞人、酒寄孝治 他
新歯科医師臨床研修制度における都道府県の研修プログラム数による臨床研修実施能力についての検討
日本歯科医学教育学会雑誌 , 24 (3) , 306-316  (2008)
原著論文6
高橋俊之、杉山利子、山倉大紀 他
東京歯科大学千葉病院臨床研修歯科医による協力型臨床研修施設に関する検討
日本歯科医学教育学会雑誌 , 24 (2) , 202-206  (2008)
原著論文7
大山 篤、毎熊容子、佐藤光生 他
臨床研修におけるポートフォリオの評価基準に関する検討
日本歯科医学教育学会雑誌 , 24 (2) , 175-181  (2008)
原著論文8
大山 篤、毎熊容子、佐藤光生 他
臨床研修準備のためのスキルスラボ実習.
日本歯科医学教育学会雑誌 , 24 (1) , 80-86  (2008)
原著論文9
礪波健一、塩沢育己、佐々木好幸 他
患者の歯科臨床教育への協力に関する研究-患者の協力承諾の意思決定に影響を及ぼす因子-
日本歯科医学教育学会雑誌 , 24 (1) , 9-16  (2008)
原著論文10
俣木志朗、平田創一郎、新田 浩 他
新歯科医師臨床研修1年終了後の検証
日本歯科医学教育学会雑誌 , 23 (3) , 273-277  (2007)
原著論文11
住友雅人、石井拓男、出口眞二 他
歯科医師の臨床研修施設群内における協力型臨床研修施設と研修歯科医とのマッチングシステムの開発に関する研究
日本歯科医学教育学会雑誌 , 23 (2) , 199-205  (2007)
原著論文12
大山 篤、新田 浩、清水チエ 他
本学歯学部附属病院における臨床研修記録としてのポートフォリオ導入
日本歯科医学教育学会雑誌 , 23 (2) , 143-149  (2007)

公開日・更新日

公開日
2020-05-27
更新日
-