医療安全に係るコミュニケーションスキルに関する研究‐患者ハラスメントに焦点をあてて‐

文献情報

文献番号
200937001A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全に係るコミュニケーションスキルに関する研究‐患者ハラスメントに焦点をあてて‐
課題番号
H19-医療・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
兼児 敏浩(国立大学法人 三重大学医学部附属病院 安全管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 廣瀬 昌博(国立大学法人 島根大学医学部附属病院  病院医学教育センター)
  • 長谷川友紀(東邦大学医学部 社会医学)
  • 江村 正(国立大学法人 佐賀大学医学部附属病院 卒後臨床研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療施設における患者ハラスメントの被害の深刻さを一般社会に認知させるとともにその特殊性を考慮した効果的な発生防止対策と発生時の対処方法を提言することを目的とする。
研究方法
「医療提供者に対する患者や患者家族による不当な要求や暴言、身体的暴力、セクシャルハラスメント」を患者ハラスメントと定義し全国の施設に事例の提供を依頼した。アンケート方式ではなく原則として著者が協力施設に直接出向き、施設管理者・安全管理者等の研究協力者に趣旨を説明の上、協力を依頼した。研究協力者が2007年から2009年に自施設内で調査し、解析し得た事例を調査表に記載したものを回収した。
結果と考察
全国の29の病院から594件の患者ハラスメント事例を得た。内訳は身体的暴力が231件(38.9%)、暴言が175件(29.5%)、セクハラが82件(13.8%)、不当な要求が91件(15.3%)であった。女性看護師を中心にハラスメント被害が深刻であることが窺えた。身体的暴力は精神科関連に多いが、一般病棟でも身体的暴力を振るう患者の約80%が何らかの精神障害を有していた。一方、セクハラや暴言の加害者は70%以上、不当な要求を行う加害者の90%以上が精神状態は正常であると考えられた。身体的暴力やセクハラの大半は被害者側にまったく落ち度のないいいがかりであるが、暴言や不当な要求の被害者は、40%以上の事例で医療側にも非があると考えていた。ハラスメント対策の基本は組織で対応することであるが、患者ハラスメントを組織的に一括して収集している施設は少ない。加害者の精神状態が問題のない場合の身体的暴力やセクハラに対しては犯罪として厳しく対応するべきである。患者の精神状態に起因する身体的暴力についてはケアの手順を再検討し、暴力被害にあわないような、あっても被害が最小となるように整備を進める必要がある。一方、暴言や不当な要求についてはまずは「医療側の非」というその契機を与えないように、医療安全面と患者サービス面の充実がもっとも重要である。ハラスメントが発生したら個人に深刻な被害が及ぶことがないように組織での対応が求められる。
結論
患者ハラスメント事例を組織全体で把握・共有していく体制の構築が必要である。実務的にはハラスメントを身体的暴力、セクハラ、暴言・不当な要求と分類し対策を講じることが効果的であると考えられるが、暴言・不当な要求によるハラスメント対策は今後の検討課題である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200937001B
報告書区分
総合
研究課題名
医療安全に係るコミュニケーションスキルに関する研究‐患者ハラスメントに焦点をあてて‐
課題番号
H19-医療・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
兼児 敏浩(国立大学法人 三重大学医学部附属病院 安全管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 廣瀬 昌博(島根大学医学部附属病院 病院医学教育センター)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部 社会医学)
  • 江村 正(佐賀大学医学部附属病院 卒後臨床研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者ハラスメントの実態を把握し、効果的な発生防止対策と発生時の対処方法を提言することを目的とする。患者ハラスメントの実態や対処方法についての定期的な発信は、患者と医療者の良好な関係構築に寄与し、医療現場における労働環境の改善つながりことから、医療安全の推進とともに医療提供者の離職防止、医療現場の崩壊に歯止めをかけることも目的とする。
研究方法
患者ハラスメントを「医療提供者に対する患者や患者家族による不当な要求や暴言、暴力(セクシャルハラスメントも含む)」と定義し、主任研究者の兼児は平成19年度から21年度までの3年間で、全国の29施設の病院から、主として当該施設の安全管理者を通じて、患者ハラスメント事例を収集し解析した。20年度からの分担研究者である廣瀬は、20年度は大学病院と大規模病院、21年度は救急・一般病床中心の中小規模病院、および、療養・介護中心の中小規模病院の職員に対して患者ハラスメントに対するアンケート調査を実施、解析した。21年度からの分担研究者である長谷川と江村はそれぞれ大学病院において、看護師、研修医を対象とした患者ハラスメント被害に関する調査・解析を行った。
結果と考察
研究結果および考察については本年度の総括・分担研究報告書を参照されたい。
結論
患者ハラスメントは医療施設の性格や職種を問わず、全ての医療提供者が被害者となりうることが明らかになった。患者ハラスメント対策にまず必要なことは、ハラスメント事例を組織全体で把握・共有していく体制の構築である。実務的にはハラスメントを暴力、セクシャルハラスメント、暴言・不当な要求と分類し対策を講じることが効果的であると考えられるが、暴言・不当な要求によるハラスメント対策は今後の検討課題である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-03-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200937001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
患者暴力に対する対策はいくつかの先行研究によって研究・提言されているがいずれも医療現場特有の問題(患者は弱者であること、患者の精神状態が正常とは限らないこと、医療側にも原因があることが多いこと等)を十分に考慮した内容ではない。本研究ではこれらの問題を中心的な課題と捉えて研究・提言を行っていることが画期的である。
臨床的観点からの成果
患者ハラスメントに対する組織的対応の重要性を啓蒙した。さらに患者ハラスメントを医療現場特有の問題に着眼して分類し、具体的な未然に防止する対策、発生時の対策を提言した。これらの提言によって患者ハラスメントによる被害が軽減すれば、医療の質の向上に資するだけでなく、スタッフのモチベーションの低下から離職いたる連鎖を断ち切ることが可能となり、いわゆる医療崩壊を防ぐための一助となる。
ガイドライン等の開発
患者によるハラスメントを医療現場特有の問題に着眼して分類し、個別の未然に防止する対策、発生時の対策を提言した。今後さらに検証を重ね、ガイドライン化とすることを検討している。
その他行政的観点からの成果
本研究によって提言した患者ハラスメント対策によってハラスメント被害が軽減すれば、スタッフのストレス軽減に直結し、医療安全と医療の質の向上に期待できる。さらに、離職の防止効果も期待でき、医療現場から”働き盛り”のスタッフが去るいわゆる医療崩壊を未然に防ぐための一助となることも期待される。医療崩壊の防止は行政上の大きな課題のひとつであり、本研究は行政的観点においても成果があったと考える。
その他のインパクト
学会発表に加え、県内外の医療施設、看護協会等で講演・研修を実施している。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
兼児敏浩、石橋美紀、日比美由紀
患者ハラスメントの実態調査とその対策に関する研究
日本医療マネジメント学会雑誌 , 10 (2) , 399-403  (2009)

公開日・更新日

公開日
2017-06-05
更新日
-