免疫修飾薬による多発性硬化症の治療成績向上を実現する探索的研究

文献情報

文献番号
200936272A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫修飾薬による多発性硬化症の治療成績向上を実現する探索的研究
課題番号
H21-難治・一般-217
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山村 隆((独) 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 雅文((独) 国立精神・神経医療研究センター 神経内科)
  • 佐藤 典子((独) 国立精神・神経医療研究センター 放射線診療部)
  • 中林 哲夫((独)国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナルメディカルセンター臨床研究支援部)
  • 三宅 幸子((独)国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
  • 岩渕 和也(北海道大学医学部 遺伝子病制御研究所病態研究部門)
  • 大木 伸司((独)国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
  • 荒浪 利昌((独)国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
  • 佐藤 準一(明治薬科大学薬学部生命創薬科学科)
  • 案浦 洋一(アスビオファーマ株式会社生物医学研究所創薬化学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
360,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
NCNPで同定された免疫制御物質である糖脂質OCH(Nature 413:531, 2001)を、難治性神経疾患である多発性硬化症(MS)の治療薬として実用化することを目的とする。OCHはNKT細胞の抗原受容体に結合するリガンドで、種々の自己免疫動物モデルに対して抑制効果を示す。経口薬剤であること、安全性に優れること、多様な自己免疫病態に対して有効である、などの既存薬にない特色を有する。
研究方法
OCHの医師主導型臨床試験を国立精神・神経医療研究センター(NCNP)で実行するために、病院、研究所、治験管理部門が一体となって運営する医療技術開発プラットフォーム(スーパー特区)の整備を開始し、並行して(1)GMP原薬の合成、(2)GLP安全性試験(理化学試験、安全性薬理試験、毒性試験など)、(3)MSの臨床試験に有用なバイオマーカーの探索、(4)霊長類のNKT細胞解析技術確立の研究、(5)POCを早期に得るための患者血液リンパ球解析技術の開発、(6)OCHの有効性が期待されるMSの免疫学的特徴の解明などの研究を進めた。
結果と考察
(1)GMP原薬の合成
 OCHのGMP原薬合成が、委託先企業において開始された。
(2)GLP安全性試験
 既存のGLP基準OCH、および放射性標識OCHを用いて、安全性試験を開始した。
(3)MSの臨床試験に有用なバイオマーカーの探索
 MSの髄液において特異的に上昇するメモリーT細胞は、ケモカイン受容体CCR2およびCCR5の両者を発現する細胞であることを発見した(論文投稿中)。同細胞はMSの病態で重要な役割を果たすMMP-9やオステオポンチンを発現しており、この細胞の動態を解析することで、MSの活動性を評価できる可能性を示した。またMSの類縁疾患において、特定のB細胞集団が増加することを見いだした(論文投稿中)。
(4)霊長類のNKT細胞解析技術確立の研究
 カニクイサルのNKT細胞を染色する方法論を確立した。OCHをカニクイサルに投与してバイオマーカーを探索する研究の準備が整った。
 
結論
多発性硬化症の治療薬OCHを実用化するために、平成23年度内に医師主導型治験を実行するための準備が進んでいる。ヒトに近く免疫学的解析も比較的容易なカニクイサルを用いたOCH投与実験など、治験プロトコールの概要を決定するための基礎研究も開始し、次年度に大きく発展させられる目処が立った。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
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