自己免疫性内耳障害の実態把握のための多施設研究

文献情報

文献番号
200936268A
報告書区分
総括
研究課題名
自己免疫性内耳障害の実態把握のための多施設研究
課題番号
H21-難治・一般-213
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
柿木 章伸(東京大学医学部付属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 山岨 達也(東京大学医学部)
  • 渡辺 行雄(富山大学医学部)
  • 青木 光広(岐阜大学医学部付属病院)
  • 池園 哲郎(日本医科大学医学部)
  • 伊藤 壽一(京都大学医学部)
  • 宇佐美 真一(信州大学医学部)
  • 肥塚 泉(聖マリアンナ医科大学医学部)
  • 鈴木 衞(東京医科大学医学部)
  • 高橋 克昌(群馬大学医学部付属病院)
  • 工田 昌也(広島大学医学部付属病院)
  • 武田 憲昭(徳島大学医学部)
  • 土井 勝美(大阪大学医学部)
  • 長沼 英明(北里大学医学部)
  • 山下 裕司(山口大学医学部)
  • 山口 拓洋(東京大学医学部付属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自己免疫性内耳障害は、自己抗体もしくは免疫担当細胞が内耳を標的とすることにより発症する、進行性の難聴およびめまいを有する疾患である。本疾患は根本的な原因は不明であり、根治的な治療法が確立しておらず、かつ後遺症を残すおそれがある。患者数が少ないため、多施設間で臨床的および基礎的研究を行い、自己免疫性内耳障害の治療のための指針又はそれに準ずるものを取りまとめ、疾病の実態把握に努めることを目的とする。さらに、基礎的臨床的研究により本疾患の解明を行うことを目的とする。
研究方法
後ろ向き研究による自己免疫性内耳障害の臨床的特徴の抽出と治療指針(案)の作成のために、研究分担者に平成21年1月1日から12月31日に新規発症して受診した自己免疫性内耳障害および疑い例を抽出してもらった。臨床的特徴を抽出するためのアンケートを作成し配布した。このアンケート結果をもとに診断基準(案)を作成した。
基礎研究:①マウス蝸牛における音響障害後の炎症性サイトカインと熱ショック転写因子の発現の変化に関する研究。②プロスタグランジンの内耳障害治療機転に関する基礎的検討。③モルモットのアレルギー性内リンパ水腫。以上3項目に関して行った。
臨床研究:各施設における自己免疫性内耳障害症例を検討した。
結果と考察
アンケート結果をもとに、自己免疫性内耳障害診断基準案を作成した。
基礎研究:①テプレノン投与により炎症性サイトカインの発現に変化が認められた。②マウス内耳においてプロスタグランジンの産生に関与するCOX1、COX2は血管条基底細胞に発現することが判明した。③モルモットをジニトロフェニールアスカーリスで全身感作し、DNP-BSAを皮下注しアレルギー反応を誘発すると内リンパ水腫が形成されることが分かった。さらに、ロイコトリエン受容体拮抗薬は内リンパ水腫形成を抑制することも分かった。新しい治療薬の可能性が示唆された。
臨床研究:血管炎が主体となるMPO-ANCA陽性群が一つの疾患概念となる可能性が示唆された。ステロイド治療により速やかに自己免疫性疾患の血液検査結果が陰性化することがあるので、治療前に必ず検査をしないと原因不明例となる危険性あることが判明した。
結論
自己免疫性内耳障害の実態調査を行ったが、診断基準が存在しないため症例の収集に苦慮した。そのため、本研究では、診断基準案を作成した。
基礎研究においては、テプレノン、ロイコトリエン受容体拮抗薬に新しい治療薬の可能性がみられた。
臨床研究においては、診断基準の必要性、検査方法の注意点、治療方法の検討が確認された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936268C

成果

専門的・学術的観点からの成果
自己免疫性内耳障害には診断基準がないため、後ろ向き研究により、自己免疫性内耳障害および疑い例を抽出し、治療指針を作成するための診断基準案を作成した。
基礎研究:プロスタグランジンの内耳障害治療機転に関する基礎的検討において、臨床的に治療薬として使用されているプロスタグランジンの内耳での作用部位が同定された。
テプレノン、ロイコトリエン受容体拮抗薬が治療薬となる可能性が示唆された。
臨床的観点からの成果
治療指針を作成するための診断基準案を作成した。
臨床研究:原因不明の感音難聴のうち自己免疫性内耳障害が含まれている可能性が示唆された。血管炎が主体となるMPO-ANCA陽性群が一つの疾患概念となる可能性が示唆された。ステロイド治療により速やかに抗核抗体等の自己免疫性疾患の血液検査血管が陰性化することがあるので、ステロイド治療の前には必ず検査をしないと原因不明例となる危険性あることが判明した。治療抵抗性で聾に至る症例もあるため、治療法の検討が課題である。
ガイドライン等の開発
自己免疫性内耳障害には診断基準がないため、後ろ向き研究により、自己免疫性内耳障害および疑い例を抽出し、治療指針を作成するための自己免疫性内耳障害診断基準案を作成した。
その他行政的観点からの成果
本研究を続けることで、自己免疫性内耳障害の診断および治療方法が標準化され、その患者数や臨床経過等が明らかにされ、これまで診断のつかなかった難治性進行性難聴めまい患者の診断の確定、治療方針の決定に役立つことが期待される。また、難治性進行性難聴めまい患者は確定診断にいたるまで、複数の施設を受診し続ける傾向があるため、本研究による治療指針(案)の作成、本疾患を有する患者の生活の質の向上だけでなく、医療経済の面からも貢献することが期待される。
今回は、自己免疫性内耳障害診断基準案を作成した。
その他のインパクト
厚生労働省 難治性疾患克服研究事業自己免疫性内耳障害の実態把握のための多施設研究班平成21年度 報告会を開催
日時:平成22年2月27日(土) 9:55?14:50
場 所 : 興和ホール (興和株式会社 東京支店 11階)

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-