難治性発作性気道閉塞障害の病態把握に関する研究

文献情報

文献番号
200936267A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性発作性気道閉塞障害の病態把握に関する研究
課題番号
H21-難治・一般-212
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大矢 幸弘(国立成育医療センター 第一専門診療部アレルギー科)
研究分担者(所属機関)
  • 野村伊知郎(国立病院機構 神奈川病院 小児科)
  • 森澤 豊(医療法人慈昭会けら小児科アレルギー科)
  • 守本 倫子(国立成育医療センター 第二専門診療部耳鼻咽喉科)
  • 井上 徳浩(近畿大学 医学部 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性発作性気道閉塞疾患(PROD)を難治性喘息、Vocal Cord Dysfunction(VCD)、運動誘発性過呼吸(EIH: Exercise Induced Hyperventilation)、それら以外の発作性上気道閉塞の4つの疾患症候群に分類し、それぞれの疾患について難治化に至る病態を明らかにし診断と治療法の開発のためのデータ収集を目的とした。
研究方法
1.診断に関する予備疫学調査:日本アレルギー学会専門医で内科、小児科、耳鼻科のいずれかを専門とする医師2516名を対象に無記名郵送法にてアンケート調査を実施した。アンケート内容は、PRODのうち特に情動を契機とした喘息発作の経験や、VCDおよびEIHに対する認知度と診断経験について質問した。
2.症例集積とフローチャート作成:各研究者が経験したPRODの症例集積を行い、診断のカギとなる検査所見、臨床症状を参考にし診断フローチャートの作成を行った。
結果と考察
1:専門医全体の39.9%(1004名)から回答を得た。VCDを知っていると回答したのは専門医の32.3%で、このうち58.5%の医師にVCDの診断経験があった。EIHについては24.7%が知っていると回答し、72.4%に診断経験があった。情動変化に伴う発作性の喘鳴を経験した医師は多く、これらの疾患(VCDやEIHなど)の存在を知っていればより多くの患者が正しく診断されるものと思われた。
2:VCD23例、EIH5例を集積した。VCDには喘息の既往が多いが、発作時には経皮的酸素飽和度低下なしの症例が多く、すべての症例でリラクセーション訓練で症状が緩和された。EIHは全例スポーツエリートで、競技大会などの運動時に強い心理的負荷がかかるときに症状を起こしていた。EIHもすべての症例で腹式呼吸とリラクセーションにより症状を克服することができていた。これらの知見からフローチャートを作成した。
結論
PRODの疾患群はアレルギー専門医であってもわずかにしか認知されていないことが判明した。広く周知するためにPRODに関するホームページを開設するとともに、診断のためのフローチャートを作成し治療法の開発を目指した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936267C

成果

専門的・学術的観点からの成果
集積された症例を行動分析した結果、難治性発作性気道閉塞障害のうちVocal Cord Dysfunction(VCD)は喉頭筋群の緊張による声帯の内転を来して呼吸困難を伴う喘鳴を発生するが、対人関係の心理的負荷が条件刺激として働いていることが多いことが判明した。運動性過呼吸(EIH:Exercise Induced Hyperventilation)を経験した患者は全員スポーツエリートで運動に伴う心理的プレッシャーの出現が条件刺激となっていることが判明した。
臨床的観点からの成果
日本アレルギー学会の指導医と専門医へのアンケート調査により、気管支喘息の専門家とも言えども、VCDやEIHなどの発作性上気道閉塞障害に対する診断経験があるものは少なく、まして一般医家の間での診断経験はさらに少ないと思われ、発作性上気道閉塞疾患の患者の多くが誤診されている可能性が高いことが懸念される。今後正しい診断が普及するよう啓発が必要であることが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
診断フローチャートを含む「難治性発作性気道閉塞障害(PROD)診断の手引き」を作成し、アンケート調査に協力したすべての専門医に郵送配布した。またPRODに関するホームページを新たに開設し、各疾患群について動画を含めた詳細な疾患解説を掲載した。
その他行政的観点からの成果
症例集積された難治性発作性気道閉塞障害の患者は全員治療に成功しており、気管支喘息を合併していた患者は喘息治療薬の減量に成功している。日本全体で見た場合、本疾患の患者の大半が正しく診断されていないと思われる。今後、正しい診断と適切な治療法が普及すれば、医療費の削減に貢献できるものと思われる。
その他のインパクト
今回のアンケート調査により日本アレルギー学会の指導医と専門医(内科医・小児科医・耳鼻科医)には本疾患の認知が広まったため、今後VCDやEIHに関しては専門医の間での診断率が向上することが期待できる。ただし、日本全体では、まだ十分に本疾患の存在は周知されていないため、医師の診断を基準とする有病率・罹患率調査は不可能である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ホームページの公開 http://www.ncchd-allergy.jp/prod

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-