わが国におけるサラセミアの実態把握と無侵襲胎児遺伝子診断法および治療基準作成の試み

文献情報

文献番号
200936264A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国におけるサラセミアの実態把握と無侵襲胎児遺伝子診断法および治療基準作成の試み
課題番号
H21-難治・一般-209
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
北川 道弘(国立成育医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 高林 晴夫(金沢医科大学 FDD-MBセンター)
  • 鈴木 信太郎(関西学院大学 理工学部)
  • 関沢 明彦(昭和大学病院 産婦人科)
  • 林   聡(国立成育医療センター 胎児診療科)
  • 池谷 美樹(国立成育医療センター 産科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における重症サラセミアの実態把握を行うとともに、母体血有核赤血球(NRBC)を用いたサラセミアの無侵襲胎児遺伝子診断を開発する。
研究方法
1)わが国におけるサラセミア重症の実態調査について、全国の日本血液学会専門医研修施設(470施設)に調査票を送付し有病者数を検討するとともに治療法や遺伝子診断状況の把握を試みた。
2)正常妊娠各週の妊婦52名より末梢血7ml採取し、パーコールによる比重遠心後、レクチン法にて有核赤血球を分離し、FISH法にて性別判定を行い、胎児由来有核赤血球の判定を行った。
3)我が国で報告のあるαサラセミア2変異、βサラセミア9変異を組み込んだアレイCGHを作成する。
4)このアレイを用いてサラセミア遺伝家系の妊娠例や妊娠中期以降に原因不明の胎児貧血例を対象に、単離した有核赤血球をWGA(全遺伝子増幅)後、遺伝子診断を行う。
結果と考察
1)アンケート調査結果・・全国470の病院・施設にアンケート調査を行ったが、回収率54.2%(255/470施設)であった。日本人で重症型は80名(αサラセミア7名、βサラセミア73名)であり、ヘテロの軽症型を含めると相当数の患者がいると考えられた。これまで九州地方に多いとされていたが、今回の調査で、関東や近畿地方にも患者が多く分布していることが判明した。治療法は輸血、ステロイド療法、造血剤投与などで、遺伝子治療を行った施設は1施設であった。
2)妊婦末梢血からのNRBC分離・・妊娠各週の正常妊婦52名から得られたNRBCは平均3.1個/mlであった。性別判定でも100%の診断率であり、妊娠16週以下の男児懐胎妊婦12名(妊娠8‐16週)から得られたNRBCをYプローブでFISHを行ったところ、胎児由来NRBCは49.1%であった。
3)アレイCGHの作成・・日本人に多いαサラセミア2変異、βサラセミア9変異のプローブを作成した。今後WGA施行後FISHを行う。
結論
アンケート調査にてわが国のホモ重症型サラセミア分布の概要が把握できたが、予想より多く認められた。この重症型はサラセミア全体の氷山の一角で、ヘテロの軽症型は数多く存在する事を示唆している。母体血中のNRBCの分離・回収はほぼ100%成功した。今後症例を増加させ回収細胞数を増加させる技術の検討を行う。アレイCGHを用いた診断は現在研究途中であり、難治性疾患であるサラセミア対象患者が研究者の施設にいないので、他院の協力を得て血液の供給を得て本検査法の正診性を今後検討する。

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936264C

成果

専門的・学術的観点からの成果
サラセミアは我が国では稀少疾患ではあるものの、欧米、東南アジアではキャリアーを含めると比較的多い疾患である。
現在、研究段階のこの診断技術が完成すれば、我が国だけではなく、世界的に利用される診断法で国際的・社会的貢献は多大である。また、妊娠早期から母児に安全性の高い診断法が確立され、学術的意義は高い。
臨床的観点からの成果
我々の作成したアレイCGHを用いて、コントロール血液(日本人、インドネシア人の遺伝子診断のついている患者血液)に対する反応性の精度を検証する。精度確認後、実際の臨床応用を行う。
ホモの重症型と診断されれば、現在研究段階ではあるものの、胎児遺伝子治療の道が開ける。
ガイドライン等の開発
検討中
その他行政的観点からの成果
これまでサラセミアの診断法は煩雑で、高価な検査であり、生まれてから後の検査であった。我々の開発中の診断法は胎児の時期から、しかも母児に安全な検査法であり、我が国のみではなく全世界で利用される検査法となる。
その他のインパクト
無し

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
第20回化学とマイクロ・ナノシステム研究会「微小間隙とダイアフラム構造の組み合わせによる胎児由来有核赤血球の捕捉および回収」
学会発表(国際学会等)
1件
CNAPS-VI(6th International Conference on C irculating Nucleic Acids in Plasma and Serum)
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-