文献情報
文献番号
200936262A
報告書区分
総括
研究課題名
血管新生黄斑症に対するペプチドワクチン療法
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-難治・一般-207
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大路 正人(滋賀医科大学 医学部眼科学教室)
研究分担者(所属機関)
- 辻川 元一(大阪大学 医学部眼科学教室)
- 白神 史雄(香川大学 医学部眼科学教室)
- 高橋 寛二(関西医科大学 医学部眼科学教室)
- 中村 祐輔(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
血管新生黄斑症は加齢黄斑変性等により引き起こされ失明の主要な原因となっているが、治療法も確立されていない。同疾患においては近年抗VEGF薬の硝子体注射(抗VEGF療法)が行われるようになったが、効果が不十分であること、硝子体注射を何度も繰り返す必要があるため失明にいたる合併症である眼内炎を回避できないことなど問題が多い。本研究ははこの疾患に対して病的新生血管に多く発現しているVEGFR1、2を特異的に認識し傷害する細胞障害性T細胞を誘導することができるHLA-A*0201およびA*2401拘束性のエピトープペプチドを皮下に注射することによりVEGFR特異的CTLを誘導して眼内血管新生を阻害するという新しい概念のペプチドワクチン療法を開発を目的としている。
研究方法
従来療法が無効である症例に対してペプチドワクチンの第I相臨床試験を行う。
結果と考察
第I相臨床試験については現在までに16例の症例に対して投与を行った。対象は現在のところの標準治療である抗VEGF療法や光線力学的療法無効の重症例だが、解剖学的にも著効した症例があった。また、同意取得したもののHLA不適合により治療ができなかったものを対照として視力の推移を比較したところ有意によい視力が得られた。また、安全性においても投与部の発赤、腫瘤は認めるが、重篤な副作用は発生していない。しかしながら、ワクチン療法においては細胞障害性T細胞が誘導されるのに一定の月日が必要であるために療法開始から効果が得られるまで最低で2週間ほどかかる。機能の保持が重要である眼科領域においては効果が得られるまでに時間がかかりすぎる。一方、抗VEGF療法は即効性はあるものの、効果を維持するためには高価で危険な硝子体注射を繰り返す必要がある。我々はこの二つの療法の欠点を相補ために、まず定法通り月に1回、3か月の抗VEGF療法による導入と同時にワクチン療法の導入も開始しその後の必要である抗VEGF療法の硝子体注射の回数を減らすことが目的でとした第II相試験を、滋賀医科大学、大阪大学、香川大学、関西医科大学眼科にて施行予定であり、各大学の倫理委員会に計画書を提出し、審議、許可を得たうえで施行予定である。
結論
当ワクチン療法は従来療法無効例に対し、および、現存の抗VEGF療法の欠点を補完できる可能性がある。現在進行中の臨床試験の結果が重要である。
公開日・更新日
公開日
2010-06-03
更新日
-