遺伝性鉄芽球性貧血の診断分類と治療法の確立

文献情報

文献番号
200936259A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性鉄芽球性貧血の診断分類と治療法の確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-難治・一般-204
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
張替 秀郎(東北大学大学院医学系研究科血液・免疫病学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 土屋 滋(東北大学 大学院医学系研究科小児病態学分野)
  • 古山 和道(東北大学 大学院医学系研究科分子生物学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
鉄芽球性貧血は骨髄に環状鉄芽球が出現することを特徴とする難治性貧血である。鉄芽球性貧血は、遺伝性鉄芽球性貧血と後天性鉄芽球性貧血に大別されるが、遺伝性鉄芽球性貧血の発症頻度や病態についての詳細な調査・解析はなされていない。そこで、今回、遺伝性鉄芽球性貧血の全国調査を行い、その疫学・病態を明らかにする臨床研究を計画した。遺伝性鉄芽球性貧血の診断指針、特に後天性鉄芽球性貧血との鑑別診断法および治療指針を確立することが本研究の最終的な目的である。
研究方法
最初に、鉄芽球性貧血全体の症例数を把握する予備調査を行う。予備調査で鉄芽球性貧血の症例が確認された施設に対し、検査値、家族歴、治療歴などの一次調査を依頼する。一次調査にて、遺伝性鉄芽球性貧血が疑われる症例については、二次調査として遺伝性鉄芽球性貧血の原因遺伝子の変異解析を行い、遺伝性鉄芽球性貧血の診断を確定する。既知の遺伝性鉄芽球性貧血の原因遺伝子の変異が認められない症例については、連鎖解析などにより、原因遺伝子を同定する。最終的に、原因遺伝子の違いによる病態の相違について検討し、臨床像・血液検査所見を基にした診断基準を作成する。
結果と考察
予備調査で、全国で遺伝性鉄芽球性貧血疑い例14例、後天性鉄芽球性貧血疑い例286例、計300例の鉄芽球性貧血症例が確認された。これらの症例のうち、42例について一次調査のデータが回収された。その結果、後天性鉄芽球性貧血(MDS-RCMD)24例、遺伝性鉄芽球貧血疑い例14例、遺伝性鉄芽球貧血確定例4例の診断に至った。一次調査で遺伝性鉄芽球性貧血が疑われた症例14例中4症例について遺伝子解析を行った。このうち、2症例についてはALAS2遺伝子の変異が確認された。その他の2例については既知の原因遺伝子の変異が認められず、現在新たな遺伝子の同定を試みている。一次調査・二次調査の診断をもとに、遺伝性鉄芽球性貧血確定群と後天性鉄芽球性貧血確定群で、臨床データを比較したところ、遺伝性鉄芽球性貧血確定群は全員が男性であり、有意にMCV、CRPが低値であり、血清鉄値が高い傾向が認められた。
結論
本邦において、300例に上る鉄芽球性貧血症例が存在することが確認された。本研究により遺伝性鉄芽球性貧血の遺伝子変異の解析基盤が確立されたことから、後天性との鑑別が可能となり、今後、遺伝性鉄芽球性貧血の病態が明らかになると考える。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936259C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究により、本邦における鉄芽球性貧血の疫学、病態、特に遺伝性鉄芽球性貧血、後天性鉄芽球性貧血のそれぞれの臨床的特徴をとらえることが、初めて可能になった。また、遺伝性鉄芽球性貧血の遺伝子変異の解析基盤が確立できたことから、今後、遺伝性鉄芽球性貧血疑い症例の確定診断が可能となり、より多くの遺伝性鉄芽球性症例の蓄積が期待される。

臨床的観点からの成果
これまでの本研究の解析結果から、本邦の遺伝性鉄芽球性貧血においては、赤血球におけるヘム合成系の初発酵素であるALAS2遺伝子の変異によって発症するX連鎖性遺伝性鉄芽球性貧血(XLSA)が特に多く認められた。これらの症例ではビタミンB6の治療効果が得られており、適切な診断がなされれば、貧血が改善する鉄芽球性貧血が存在することが示唆される。

ガイドライン等の開発
現在、遺伝性鉄芽球性貧血疑い症例の遺伝子解析を進めており、すべての症例の確定診断が得られた時点で、遺伝性鉄芽球性貧血の診断基準、後天性鉄芽球性との鑑別診断のガイドラインを作成予定である。

その他行政的観点からの成果
今後、本研究の成果により遺伝性鉄芽球性貧血と後天性鉄芽球性貧血との明確な鑑別法が確立されれば、輸血や輸血による合併症の治療、および造血幹細胞移植を回避できる症例を見出すことが可能となり、医療経済上の貢献が期待できる。
その他のインパクト
引き続き、平成22年度も調査解析を続けており、今後解析結果を国際学会、専門誌に発表する予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
ALAS2のExon11に遺伝子変異(T1731C変異)を認めたピリドキシン反応性X-linked鉄芽球性貧血の1例 玉井佳子、他 2009年第71回日本血液学会総会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
2016-06-20