非致死性骨形成不全症の実態把握と治療指針作成

文献情報

文献番号
200936253A
報告書区分
総括
研究課題名
非致死性骨形成不全症の実態把握と治療指針作成
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-難治・一般-198
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 奉延(慶應義塾大学 医学部小児科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 石井智弘(慶應義塾大学 医学部小児科学教室)
  • 長谷川高誠(岡山大学 医学部小児科)
  • 大関覚(獨協医科大学越谷病院 整形外科)
  • 藤枝憲二(旭川医科大学 小児科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、本邦における非致死性骨形成不全症(以下OI)の実態を把握し、内科的治療指針を作成することである。具体的な計画は以下の5点である。
1.包括的遺伝子解析と遺伝子型―表現型解析、2.ビスホスホネート(パミドロン酸二ナトリウム、以下PA)による内科的治療の実態調査、3.疫学調査(一次調査)、4.患者から厚生労働行政および医療従事者への要望の調査、5.内科的治療指針の作成。

研究方法
1. 慶應義塾大学医学部倫理委員会の承認のもと、遺伝子解析の同意を得られた44例を対象に5つの責任遺伝子を包括的に解析し、責任遺伝子変異の遺伝子型―表現型関連の有無を検討した。2.2-4ヶ月毎PA点滴静注治療を受けた26名を対象に治療の安全性及び有効性を検討した。3.全国小児内分泌科医を対象として一次調査を行い、本症の有病率およびビスホスホネート治療歴を有する割合を算出した。4.患者会「骨形成不全症協会」に研究目的を説明し、協力を依頼した。5.内科的治療指針の作成:研究代表者および研究分担者が討論した。
結果と考察
1. 36例に変異を同定した。COL1A1変異26例において、グリシン残基のミスセンス変異は重症、早期終始コドンおよびスプライス変異は軽症となり、遺伝子型―表現型関連が存在することを証明し、重症化決定因子を明らかとした。COL1A2変異8例に遺伝子型―表現型関連はなかった。本邦初例となるLEPRE1変異2例を同定した。 2. 2-4ヶ月毎PA点滴静注治療のほぼ全例に骨折回数の減少及び骨密度の上昇効果が認められた。重篤な副作用は認められなかった。したがって2-4ヶ月毎PA点滴静注治療は有効かつ安全である。3.平成22年1月1日時点における有病率は10万人当たり少なくとも2.56(95%信頼区間 2.32-2.80)人であった。ビスホスホネート治療を要すると判断された有病率は10万人当たり少なくとも1.87(95%信頼区間 1.67-2.09)人であった。今後、二次調査により、本症の長期予後、後遺症の有無を明確にする。4.患者はPA2-4ヶ月毎点滴静注治療の保険収載を強く要望している。今後、2-4ヶ月毎PA点滴静注治療の保険収載を目指す。5.内科的治療指針の作成:2-4ヶ月毎PA点滴静注治療に関する治療指針を作成した。
結論
1.遺伝子型―表現型解析、2.現行の内科的治療実態の調査、3.疫学調査(一次調査)、4.患者から厚生労働行政および医療従事者への要望の調査、5.内科的治療指針の作成、について大きな成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936253C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本人骨形成不全症において、5つの責任遺伝子(COL1A1,COL1A2,LEPRE1,CRTAP,PPIB)の遺伝子解析を行い、36/44例に変異を同定した。COL1A1変異26例において、グリシン残基のミスセンス変異は重症、早期終始コドンとスプライス変異は軽症であった。COL1A1遺伝子変異例に遺伝子型―表現型関連が存在することを初めて示し、重症化決定因子を明らかとした。一方、COL1A2変異8例に遺伝子型―表現型関連はなかった。また本邦初例となるLEPRE1変異2例を同定した。
臨床的観点からの成果
内科的治療である2-4ヶ月毎パミドロン酸二ナトリウム(以下PA)点滴静注治療のほぼ全例に骨折回数の減少及び骨密度の上昇効果を認めた。投与に関連する重篤な副作用はなかった。以上より、2-4ヶ月毎PA点滴静注治療は有効かつ安全である。さらに2-4ヶ月毎PA投与から月1回PA点滴静注治療に変更を行った6例について骨折回数の有意な増加はなく、骨折や手術を受けた2名を除き骨密度の低下はなかった。重篤な副作用は認められなかった。月1回PA点滴静注治療は有効かつ安全である可能性が高い。
ガイドライン等の開発
非致死性骨形成不全症(以下OI)に対するビスホスホネート治療に関する治療指針を作成した。すなわち、小児OIに対してはパミドロン酸二ナトリウム(無水物)として以下の量(一日投与量は60mgを越えない)を4時間以上かけて3日間点滴静脈内投与を行う。この投与を1クールとし、以下の投与間隔で繰り返す。 年齢/投与量/投与間隔の順に、2歳未満/0.5mg/kg×3日/2ヶ月、2歳以上3歳未満/0.75mg/kg×3日/3ヶ月、3歳以上/1.0 mg/kg×3日/4ヶ月。
その他行政的観点からの成果
疫学調査により、平成22年1月1日時点における我が国の非致死性OIの有病率は10万人当たり少なくとも2.56(95%信頼区間 2.32-2.80)人であること、ビスホスホネート治療を要すると判断された非致死性OIの有病率は10万人当たり少なくとも1.87(95%信頼区間 1.67-2.09)人であることを明らかにした。本邦における非致死性OIの有病率、およびビスホスホネート治療を必要とする割合が初めて明らかになった。
その他のインパクト
非致死性骨形成不全症患者である「特定非営利活動法人 骨形成不全症協会」(通称ネットワークOI)を通じ、患者が厚生労働行政および医療従事者に対して、パミドロン酸二ナトリウム2-4ヶ月毎点滴静注治療の保険収載を強く要望していることを確認した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
第27回小児代謝性骨疾患研究会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-