文献情報
文献番号
200936245A
報告書区分
総括
研究課題名
Fuchs角膜内皮変性症および関連疾患に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-難治・一般-190
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
坪田 一男(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
- 榛村重人(慶應義塾大学医学部)
- 西脇祐司(慶應義塾大学医学部)
- 木下 茂(京都府立医科大学医学部)
- 島崎 潤(東京歯科大学眼科)
- 大橋裕一(愛媛大学医学部)
- 杉山和久(金沢大学医学部)
- 天野史郎(東京大学医学部)
- 羽藤晋(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Fuchs角膜内皮変性症(以下F症)は進行性に内皮細胞数の減少をきたし、加齢とともに水疱性角膜症に進行する失明原因疾患である。現在のところF症の原因は特定されておらず、視力を回復するには角膜移植手術以外に方法はない。F症の実態把握と診断基準の作定を目的として、平成21年度に本研究参加施設によるレトロスペクティブな臨床調査を行った。
研究方法
平成21年度から、参加施設においてF症のおおよその有病率と実態把握のための臨床調査を開始した。まず、各施設の角膜移植適応症例中のF症の占める割合の集計をレトロスペクティブに検討し、F症の実態把握を行った。
次に、平成21年度における各施設の眼科外来で角膜内皮細胞検査を受けた全症例のデータを集計し、hospital baseでの有病率を測定した。角膜内皮細胞数と年齢との相関を解析することで、新たな診断基準の作成を達成した。
次に、平成21年度における各施設の眼科外来で角膜内皮細胞検査を受けた全症例のデータを集計し、hospital baseでの有病率を測定した。角膜内皮細胞数と年齢との相関を解析することで、新たな診断基準の作成を達成した。
結果と考察
眼科外来受診者計29,186例のうち、F症症例は31例で、有病率は0.11%であった。角膜移植適応症例のうち、内皮機能不全による水疱性角膜症は全体の62%をしめ、F症は全体の5%を占めた。計3,298眼の角膜内皮細胞検査結果と患者年齢から導出した角膜内皮細胞減少率(カッコ内)を比較すると、「正常(F症なし(-0.6%)」「単純滴状角膜(-0.9%)」と、「F症初期(-2.7%)」、「F症進行期(-3.1%)」の間に格差が存在した。すなわち「単純滴状角膜」のままでF症に進行しない疾患群の存在が明らかとなった。そこで、内皮細胞数減少率を-1.7%とした減少曲線をF症の診断基準線と仮定したところ、この基準線による判定は感度95.5%、特異度83.6%、偽陽性率1.1%であり、診断基準として妥当であることが示された。
結論
29,186例という多数の外来症例数をレトロスペクティブに調査することによって、F症のおおよその有病率を算出できた。今回の結果でF症とは「滴状角膜があり」かつ「角膜浮腫を生じるほど角膜内皮が減少する」疾患であることが明らかとなり、「単純滴状角膜で角膜内皮細胞数の減少、角膜浮腫の悪化がみられないものはF症と区別すべき」であると考えられた。本研究により作成された診断基準線でのめやすは、40歳で約2000 cells/mm2以下、50歳で約1700 cells/mm2以下、60歳で約1400 cells/mm2以下、70歳で約1200 cells/mm2以下である。F症の診断基準を明確に作成できたことは学術的・国際的に非常に意義のある結果である。
公開日・更新日
公開日
2010-06-26
更新日
-