軟骨無形症の臨床診断基準の作成

文献情報

文献番号
200936240A
報告書区分
総括
研究課題名
軟骨無形症の臨床診断基準の作成
課題番号
H21-難治・一般-185
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
安井 夏生(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 運動機能外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 芳賀 信彦(東京大学 リハビリテーション科)
  • 松井 好人(富山大学大学院 医学薬学研究部(医学))
  • 鬼頭 浩史(名古屋大学大学院 医学系研究科整形外科)
  • 奥住 成晴(神奈川県立こども医療センター肢体不自由児施設)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
軟骨無形成症の表現型は比較的均質であり、骨系統疾患の専門家にとって診断は難しくない。しかし一般の整形外科医や小児科医にとって他の骨系統疾患との鑑別は必ずしも容易でない。FGFR3の遺伝子診断は信頼できるが保険適応となっておらず、特定の施設で研究レベルでの実施しか行われていないのが現状である。
本研究の目的は日常診療で誰もが使える軟骨無形成症の診断基準を作成することである。
研究方法
研究代表者と研究分担者(以下班員)が軟骨無形成症患者の身体所見とX線所見を持ち寄り、診断規準として採用すべき項目につき検討した。目標を100例とし、乳幼児期、小児期、成人期にわけ身体所見と画像所見を定量的に解析した。また身体所見と画像所見から典型的軟骨無形成症と診断した症例と遺伝子診断まで確定した軟骨無形成症との臨床所見の差につき検討した。非典型例には順次遺伝子診断を追加した。また他の骨系統疾患との鑑別の目的でFGFR3以外の遺伝子検査も行った。
結果と考察
 本研究で調査対象とした症例は軟骨無形成症:124例、軟骨低形成症:17例、その他の骨系統疾患:20例、対照(正常者):45例であった。軟骨無形成症のうちFGFR3遺伝子のG380R変異を確認されたものが30例、軟骨低形成症のうちFGFR3遺伝子のN540K変異が確認されたものが8例あった。その他の骨系統疾患で遺伝子異常まで確認したものは6例であった。
身体所見として身長、体重、指極、頭囲などを計測した。また鞍鼻、三尖手、肘伸展制限、腰椎前彎、などの有無を検討した。X線所見として大腿骨長と脛骨長比、脛骨・腓骨長比、腰椎椎弓根間距離、椎体高と前後径、骨盤の縦横径比、小骨盤腔の縦横径比、大腿骨頚部長と大小転子間距離の比などを測定した。また水平の臼蓋や腰椎椎体後方の陥凹の有無などを検討した。
結論
軟骨無形成症の身体所見として診断規準に含めるべき項目は ①身長が正常の-5SD 以下、②指極/身長比が0.96以下、③鞍鼻あり、④三尖手ある。X線所見として診断規準に含めるべき項目は ⑤腓骨長/脛骨長>1.1、⑥大腿頚部長/転子間距離<0.8、⑦椎弓根間距離L4/L1<1.0、⑧椎体後方陥凹(posterior scalloping)あり、⑨水平の臼蓋あり、である。以上の9項目を満たせば間違いなく軟骨無形成症と診断してよいと考える。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936240C

成果

専門的・学術的観点からの成果
軟骨無形成症は四肢短縮型骨系統疾患の代表であり、その表現型は比較的均質である。専門家にとって診断は難しくないが、一般の整形外科医や小児科医にとって他の骨系統疾患との鑑別は必ずしも容易でない。遺伝子診断は信頼できるが保険適応となっておらず、特定の施設で研究レベルでの実施しか行われていないのが現状である。本研究では軟骨無形成症の臨床診断基準を作成をめざし遺伝子型と表現型の関連につき調査した。
臨床的観点からの成果
身体所見として診断規準に含めるべき項目は 身長が正常の-5SD 以下、指極/身長比が0.96以下、鞍鼻あり、三尖手あり、の4項目である。X線所見として診断規準に含めるべき項目は 腓骨長/脛骨長>1.1、大腿頚部長/転子間距離<0.8、椎弓根間距離L4/L1<1.0、椎体後方陥凹(posterior scalloping)あり、水平の臼蓋あり、の5項目である。
ガイドライン等の開発
身体所見として診断規準に含めるべき項目は 身長が正常の-5SD 以下、指極/身長比が0.96以下、鞍鼻あり、三尖手あり、の4項目である。X線所見として診断規準に含めるべき項目は 腓骨長/脛骨長>1.1、大腿頚部長/転子間距離<0.8、椎弓根間距離L4/L1<1.0、椎体後方陥凹(posterior scalloping)あり、水平の臼蓋あり、の5項目である。
その他行政的観点からの成果
厚生労働化学研究費補助金難治疾患克服研究事業「軟骨無形成症の臨床診断規準の作成」平成21年度総括・分担研究報告書を作成した。
その他のインパクト
軟骨無形成症の患者と家族の会(つくしの会)の総会(平成22年4月17日東京)で分担研究者:鬼頭浩史が講演した。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
Achondroplasia/hypochondroplasia meeting 2010 Tokyo
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
軟骨無形成症の患者と家族の会(つくしの会)2010年総会で講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
安井夏生
骨系統疾患における脚延長術と変形矯正
日本整形外科学会雑誌 , 83 (10) , 803-807  (2009)
原著論文2
芳賀信彦
骨系統疾患における診断の基本
整形外科 , 60 (10) , 1109-1113  (2009)
原著論文3
芳賀信彦
骨系統疾患に対するマネージメントと国内の協力体制
日本整形外科学会雑誌 , 83 (10) , 793-796  (2009)
原著論文4
芳賀信彦
小児整形外科疾患の長期経過とリハビリテーション
J Clin Rehabil , 19 (3) , 210-215  (2010)
原著論文5
鬼頭浩史
小児疾患診療のための病態生理2 筋・骨・運動器疾患 軟骨無形成症
小児内科(増刊号) , 41 , 989-992  (2009)
原著論文6
鬼頭浩史
骨系統疾患の診断と治療
愛知県整形外科医会会報 , 24 , 18-22  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-