白斑の診断基準及び治療指針の確立

文献情報

文献番号
200936236A
報告書区分
総括
研究課題名
白斑の診断基準及び治療指針の確立
課題番号
H21-難治・一般-181
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
片山 一朗(国立大学法人大阪大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 民夫(国立大学法人山形大学大学院医学研究科 )
  • 深井 和吉(大阪市立大学大学院医学系研究科)
  • 佐野 栄紀(国立大学法人高知大学大学院医学研究科 )
  • 山口 裕史(名古屋市立大学大学院医学系研究科)
  • 大磯 直毅(近畿大学医学部)
  • 金田 眞理(国立大学法人大阪大学大学院医学研究科 )
  • 種村 篤(国立大学法人大阪大学大学院医学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
白斑には尋常性白斑などの後天性の色素脱失症と眼皮膚白皮症やまだら症、結節性硬化症等の先天性遺伝性色素脱失症など病因病態の全く異なる疾患が混在している。現時点ではこれら白斑の診断基準や治療指針がない為、多くの患者が確定診断されずに、効果の低い治療法を漫然と施行されている。そこでまず、種々の白斑の診断基準を確立し、全国的な疫学調査で各白斑の頻度、治療効果を明らかにすると伴に、各白斑に対する治療指針を示し、白斑の診断と治療の為のガイドラインを作成し、正確な診断と症状にあった治療法の確立を目指す。
研究方法
白斑の疫学調査及び診断と治療のガイドラインの作製。
 白斑は異なった病因病態の疾患をひとまとめにした疾患群であり、個々の疾患によりその治療法が異なってくる。白斑によっては難治性で再発傾向が強く治療に苦慮する疾患である。一方白斑によっては合併奇形の検索のためにも正確な診断が不可欠であるにもかかわらず、確定診断には遺伝子検査が必要な場合もあり、診断が正確におこなわれていない事も多い。そこでまず、本邦に於ける白斑の診断基準を作成しさらに全国的な疫学調査を施行し各白斑の発症頻度と治療効果を明らかにするとともに治療指針を確立し白斑の診断及び治療のガイドラインを作成して適切な診断と治療法の確立をめざす。
結果と考察
白斑の疫学調査、診断治療のガイドラインの作成
 現在白斑、白皮症の臨床的な分類は明確なものがないため、先天性、後天性それぞれの白斑・白皮症の病型分類を行った。この病型分類によりアンケートを作成し、主に全国の特定機能病院に送付し、全国262施設(新患総数は年間912,986余り)より回答を得た。先天性の白皮症患者は1748名、後天性の白斑患者は6,359名であった。今回のアンケートにより日本人における白斑を呈する疾患の頻度が確かなデータに基づいて明らかとなった。このことは、遺伝性疾患においては次世代への再発率推定に大きな役割を果たすとともに、後天性疾患についてはその疾患対策の社会的重要性を明らかにした。これまでにこのような報告はなく極めて重要なデータである。
結論
本研究により新しい白斑の発症機序、患者数の把握、患者QOLの評価、本邦患者でのEBMに基づいた治療法が確立されることになれば、今までの治療が無効であった症例にも有効な治療を提供できることになり、その医学的社会的利益は多大である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936236C

成果

専門的・学術的観点からの成果
白斑は現時点で適切な診断基準、治療指針がなく確定診断がつかずに放置される患者や有効な治療が受けられず社会生活を行う上で精神的苦痛を強いられている患者が多数存在する。本研究により白斑/白皮症の発症頻度や治療効果が明らかにされ難治性疾患と認識されることにより患者の精神的苦痛が緩和される。白斑の診断基準と治療のガイドラインが作成されることにより遺伝性先天性の白斑に関して、早期に確定診断がつき、他の合併奇形の精査や治療を早期より開始できる。また白斑の発症機序に関しても新知見を得ている。
臨床的観点からの成果
尋常性白斑に対し各種治療が施行されているが有用性の比較はされていない。多施設で症例数を集め尋常性白斑に対し施行した各種治療の長期成績を1)再発率2)改善率3)満足度などの指標に従い検討する。1)は半年単位の経過観察2)は経時的に写真撮影後画像解析もしくはLabにて直接機器にて計測。必要時VASIをスコア化する。3)は患者にアンケート調査をする。3つの観点から統計学者と症例数、解析法につき検討した上各種治療の有効性を判断する。各班員、研究協力者の所属施設にて検討を開始した。
ガイドライン等の開発
各分野の白斑に精通した皮膚科専門医を主体に白斑の診断基準、治療指針を確立しそれに基づき白斑診断治療ガイドライン作成するため、全国の特定機能病院に治療アンケートを送付し、治療の現状を検討した。併せて現在行われている標準的な治療のエビデンスレベルを検討した。本年度は疾患別、部位別、臨床症状別に治療ガイドライン試案を作成した。次年度は現在行われている治療の適用基準、適用部位、治療期間、治療法、小児患者への適応基準、副作用の評価と防止法、合併症への対応を加味した最終的な治療ガイドラインを作成予定。
その他行政的観点からの成果
治療法が確定しない尋常性白斑の様な後天性白斑は系統だった治療や各疾患、時期に応じ最も有効な治療法選択が可能となる。治療有効率改善が期待でき、多くの患者が精神的苦痛から解放される。早期診断・治療が可能になり、無駄な治療が削減され医療経済の観点からも有意義である。精神的苦痛のため社会的活動の制限を余儀なくされていた患者の社会復帰や労働生産性の向上に寄与する。本研究により新しい治療法が確立されれば、今までの治療が無効だった症例にも有効な治療を提供でき、その医学的社会的利益は多大であると考えられる。
その他のインパクト
尋常性白斑患者は部位や範囲により、容姿や対人関係に影響を受ける事が想像できる。過去にQOLが低下した報告はあるが、治療のため定期的通院を要したり、カムフラージュの化粧等に要する時間も含めてこの疾患が患者の社会活動に影響し、その労働生産性が低下する可能性も考えられるため尋常性白斑の労働生産性の障害の影響につき検討した。WPAI-GHスコアに基づき、通院中の尋常性白斑患者の障害率を示した労働時間は特に障害を受けないが、日常生活での活動障害性があった。患者QOLの指標として今後症例を増やし検討する。

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
2016-06-20