ゲノムコピー数異常を伴う先天奇形症候群(ウォルフヒルシュホーン症候群を含む)の診断法の確立と患者数に関する研究

文献情報

文献番号
200936234A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノムコピー数異常を伴う先天奇形症候群(ウォルフヒルシュホーン症候群を含む)の診断法の確立と患者数に関する研究
課題番号
H21-難治・一般-179
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
福嶋 義光(信州大学)
研究分担者(所属機関)
  • 涌井 敬子(信州大学 医学部)
  • 古庄 知己(信州大学 医学部附属病院)
  • 大橋 博文(埼玉県立小児医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Wolf-Hirschhorn 症候群を含む先天奇形症候群の診断精度を向上させ,染色体の量的変化と臨床症状との関連を明らかにすることを目的とする.
研究方法
ゲノム上のコピー数の変化を網羅的に検出するゲノムアレイ解析法を用いて,次の研究を行った.
1)Wolf-Hirschhorn 症候群の欠失範囲と臨床症状との関係を明らかにする.
2)原因不明の先天奇形症候群とゲノムコピー数異常の関係を明らかにする.
3)ゲノムアレイ解析で問題となる CNV(copy number variation)について,日本人のデータを集積し,精度の高いゲノムアレイ解析法を確立する.
結果と考察
ゲノムアレイ解析を行ったWolf-Hirschhorn症候群4症例では,欠失範囲が大きくなるにつれ,合併症や精神遅滞の程度が重症化する傾向がみられた.また,原因不明の多発奇形/精神遅滞症候群(MCA/MR syndrome)27例を対象に行ったゲノムアレイ解析では,全症例に何らかのゲノムコピー数の変化を認め,そのうち少なくとも3例(11%)は臨床症状と関連があるコピー数異常の可能性が高いと考えられた.ゲノムアレイ解析は先天奇形症候群の診断に有用であるが,適切にコピー数の変化を評価するためには,必要に応じて患者および両親のmetaphase FISH解析を実施するなど追加解析を行う必要がある.また,臨床症状に直接関係しないコピー数多型(CNV)に関して今後日本人を対象としたデータベース構築が必要である.
結論
ゲノムコピー数異常を伴う先天奇形症候群の診断にゲノムアレイ技術は極めて有効であるが,最終的な診断を下すためには,日本人のCNVに関する情報の集積が必要である.

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936234C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ゲノムアレイ解析はウォルフヒルシュホーン症候群(WHS)を含む先天奇形症候群の診断に大変有用であると考えられるが,適切な臨床的評価を行うためには,必要に応じて実施する追加解析の結果もあわせて総合的に解釈することが必要である.本研究により,その具体的なプロセスを示すことができた.特に,病気の原因とは直接関係のないCNVかどうかの判断は,人種差があるため,今後,日本人CNVデータベースを構築する必要があることを明らかにした.
臨床的観点からの成果
ゲノムアレイ解析を行ったウォルフヒルシュホーン症候群4症例の4番染色体短腕の欠失範囲は,4pテロメア側からそれぞれ,8.77Mb, 8.77Mb, 7.50Mb, 5.48Mb であり,欠失範囲が大きくなるにつれ,合併症や精神遅滞の程度が重症化する傾向があることを明らかにした.原因不明の多発奇形/精神遅滞症候群(MCA/MR syndrome)27症例を解析し,少なくとも3例(11%)に臨床的に意味のあるゲノムコピー数異常を検出した.
ガイドライン等の開発
遺伝情報サイトであるGeneReviews Japan <http://grj.umin.jp/>にウォルフヒルシュホーン症候群に関する最新情報(疾患の特徴,頻度,診断・検査,鑑別診断,臨床像,合併症,マネージメント,遺伝カウンセリング等)を掲載した.
その他行政的観点からの成果
埼玉県立小児医療センターにおける年間平均初診患者数は約300名で,その内,36%は染色体異常(内ウォルフヒルシュホーン症候群は0.6%),34%は既知の奇形症候群,20%は多発奇形・精神遅滞を有するものの,確定診断がなされておらずゲノムコピー数異常である可能性のある患者であった.染色体異常症の出生頻度は1000人に約8人といわれているので,ゲノムコピー数異常の可能性のある新生児は,1000人につき,2名程度生まれていると推定された.
その他のインパクト
2010年12月18日(金)に,埼玉県立小児医療センターにおいて,ウォルフヒルシュホーン症候群の患者・家族を対象とした勉強会を開催し,本疾患についての最新の情報提供を行うとともに,患者・家族間のコミュニケーションの推進を図った.

発表件数

原著論文(和文)
15件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
GeneReviews Japan <http://grj.umin.jp/>への掲載,勉強会の開催

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
福嶋義光
遺伝と疾病
内科学書(改訂第7版)Vol 1 , 15-20  (2009)
原著論文2
福嶋義光
遺伝子診療と倫理
糖尿病学の進歩 2009 , 86-89  (2009)
原著論文3
福嶋義光、涌井敬子、松田和之
染色体検査・遺伝子関連検査
臨床検査法提要改訂第33版 , 1113-1164  (2009)
原著論文4
福嶋義光
遺伝子診断と生命倫理
小児科 , 50 , 813-817  (2009)
原著論文5
涌井敬子
染色体検査結果をどう読むか
最新医療情報雑誌アニムス特集遺伝医学 , 59 , 21-26  (2009)
原著論文6
Kosho T,Wakui K, Fukushima Y
A New Ehlers-Danlos Syndrome With Craniofacial Characteristics, Multiple Congenital Contractures, Progressive Joint and Skin Laxity, and Multisystem Fragility-related Manifestations
Am J Med Genet Part A  (2010)
原著論文7
Kosho T,Wakui K, Fukushima Y
Progressive aortic root and pulmonary artery aneurysms in a neonate with Loeys-Dietz syndrome type 1B.
Am J Med Genet A. , 152 (2) , 417-421  (2010)
原著論文8
Kosho T,Wakui K, Fukushima Y
Cold-induced sweating syndrome with neonatal features of Crisponi syndrome: longitudinal observation of a patient homozygous for a CRLF1 mutation.
Am J Med Genet A. , 152 (3) , 764-769  (2010)
原著論文9
古庄知己
13トリソミー症候群
小児科診療増刊号「小児の症候群」 , 72 , 15-  (2009)
原著論文10
古庄知己
18トリソミー症候群
小児科診療増刊号「小児の症候群」 , 72 , 19-  (2009)
原著論文11
古庄知己
染色体異常症のファミリー・サポートグループ
小児内科 , 41 (6) , 910-915  (2009)
原著論文12
古庄知己
13トリソミー
小児内科 増刊号「小児疾患診療のための病態生理2」 , 41 , 233-235  (2009)
原著論文13
古庄知己
18番染色体異常症
小児内科 増刊号「小児疾患診療のための病態生理2」 , 41 , 240-242  (2009)
原著論文14
古庄知己
Ehlers-Danlos症候群,Marfan症候群
小児内科 増刊号「小児疾患診療のための病態生理2」 , 41 , 973-980  (2009)
原著論文15
古庄知己
SGAの疫学と発症要因 胎児側の要因
周産期医学「特集:SGAをめぐる諸問題」 , 40 (2) , 170-173  (2010)
原著論文16
古庄知己
先天異常児の発達支援
周産期医学  (2010)
原著論文17
古庄知己
18トリソミーの自然歴およびマネジメントの確立をめざして
小児科学会誌  (2010)
原著論文18
大橋博文
4番染色体異常
小児疾患診療のための病態整理(第4版) , 41 , 223-225  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-