Alagille症候群など遺伝性胆汁うっ滞性疾患の診断ガイドライン作成、実態調査並びに生体資料のバンク化

文献情報

文献番号
200936226A
報告書区分
総括
研究課題名
Alagille症候群など遺伝性胆汁うっ滞性疾患の診断ガイドライン作成、実態調査並びに生体資料のバンク化
課題番号
H21-難治・一般-171
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
須磨崎 亮(筑波大学 人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部)
  • 木村 昭彦(久留米大学 医学部)
  • 田澤 雄作(仙台医療センター 小児科)
  • 乾 あやの(済生会横浜市東部病院 小児科)
  • 鹿毛 政義(久留米大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Alagille症候群について、全国疫学調査、診断基準案の策定、遺伝子診断法の改良、長期予後の検討を行う。さらに、本症と類縁の遺伝性胆汁うっ滞性疾患である進行性家族性肝内胆汁うっ滞症や先天性胆汁酸代謝異常症について、主として鑑別診断の点から班研究を推進する。

研究方法
全国の大学病院小児科、小児専門病院、300床以上の総合病院小児科を対象として、全621施設に一次アンケート調査を実施した。PubMedで調査し得た本症に関する論文45編、米国NIHのデータベースを参考にして、わが国の現状に合致した診断基準案を策定した。
臨床的にAlagille症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、胆汁酸代謝異常症と診断された患者を対象にして、各施設の倫理基準を遵守して、症例研究を行った。
結果と考察
 Alagille症候群の患者数は、全国で200名程度以下と推定された。多くが臨床的な症候により診断されていた。一方、熱変性高速液体クロマトグラフィー法(DHLPC)-シーケンシング法の導入によって、遺伝子診断がより簡便に実施できることが判明した。本症患者について問題とっている症候を調査したところ、肝胆道系が75%で、心疾患や肺血管の異常が52%で治療の対象になっていた。欧米で大きな問題となって脳血管異常は、今回の調査では2例(1.8%)のみであった。本症の長期予後は必ずしも悪くない例も多いことが示唆された。
 進行性家族性肝内胆汁うっ滞症の1型と2型の鑑別には、肝組織内のBSEP:Bile Salt Export Pumpの発現を免疫組織学的に検討することが、極めて有用であることが判明した。また、3型についても、MDR3:Multidrug Resistance 3の検出が有用であることが示唆された。
 先天性胆汁酸代謝異常症には多様な病型が含まれるが、尿中胆汁酸の分析により効率的にスクリーニングできることが明らかになった。
結論
本年度の研究によって、Alagille症候群の患者数の把握、診断基準案の策定、簡便な遺伝子診断法の導入が行われた。さらに、本症に類縁の進行性家族性肝内胆汁うっ滞症や先天性胆汁酸代謝異常症について、実用的な診断法を見出すことができた。今後、これらの成果を社会に広く周知して、我が国におけるAlagille症候群を含む遺伝性胆汁うっ滞症の診断の向上に寄与していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936226C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アラジール症候群について、全国疫学調査、診断基準案の策定、遺伝子診断法の改良、長期予後の検討を行った。さらに、本症と類縁の遺伝性胆汁うっ滞性疾患である進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1?3型や多種類の先天性胆汁酸代謝異常症について、これらの病気を正確に診断できる検査法(簡便な遺伝子診断法、免疫病理学的診断法、尿中胆汁酸分析)を開発した。
臨床的観点からの成果
アラジール症候群の診断法や患者さんの抱える医療上の問題点について、全国調査を行った。大部分の症例が臨床病理所見によって診断されており、遺伝子診断のみによるものは7%、両方法を併用している症例は9%であった。胆汁うっ滞と心・肺血管奇形、発達遅延が主要な問題であり、日本では米国で問題となっている脳血管障害の報告は2例(1.8%)と少数に留まっていた。少数例で長期予後も検討できた。合併症の長期治療ができれば、その結果は必ずしも悪くない症例も多いことが示唆された。
ガイドライン等の開発
アラジール症候群の診断基準(案)が作定された。本症は肝内胆管の減少という肝病理所見と特異な臨床症状を伴う症候群として提唱されたが、その後、病気の原因遺伝子が同定され、遺伝学的知見も含めた診断基準が求められていた。新たな診断基準(案)では、本症を典型例、非典型例、変異アリルを有するが症状の乏しい不完全浸透例に分けて、各々について診断方法を示した。典型例は従来の診断基準と同一内容である。近年導入された遺伝的診断法を用いて非典型例や不完全浸透例を診断する基準を明らかにした。
その他行政的観点からの成果
アラジール症候群の患者数やその分布は、従来は不明であった。本研究班によって実施された全国調査によって、患者数は全国で150?200名程度と推計された。しかし、都道府県別にみると、その分布は大きく偏在していた。また、日本肝移植研究会の登録では、平成20年までに本症患者59名に肝移植が実施されていた。従ってアラジール症候群で肝移植の必要な割合は、約1/3と推定された。
その他のインパクト
マスコミに取り上げられたことはなかった。
稀少疾患であり、専門家以外に正確な診断の困難な「アラジール症候群及びその類縁の遺伝性胆汁うっ滞性疾患」の診断が、本研究班の成果によって容易になった。そこで、これらの成果を全国の医療機関に周知して利用してもらえるために、一般医師向けの診断支援のためのウェブサイトを作成した。また、そのサイトには、患者さんの支援のための各種情報を盛り込んだ。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-