難治性疾患由来外来因子フリー人工多能性幹細胞の委託作成とバンク化

文献情報

文献番号
200936224A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性疾患由来外来因子フリー人工多能性幹細胞の委託作成とバンク化
課題番号
H21-難治・一般-169
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
江良 択実(熊本大学発生学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 北川 道憲(熊本大学発生医学研究所)
  • 西中村 隆一(熊本大学発生医学研究所)
  • 尹 浩信(熊本大学大学院生命科学研究部)
  • 房木 ノエミ(ディナベック株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
100,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
希少性が高く有限である難治性疾患の生体試料を有効利用するために、難治性疾患由来人工多能性幹細胞(iPS細胞)の医師や研究者からの委託作製と、作製したiPS細胞のバンク化システムの構築が研究目的である。
研究方法
iPS細胞作製について所属機関の倫理委員会へ申請書類の提出を行う。承認と患者からの同意の下、皮膚生検後、iPS細胞樹立のための皮膚線維芽細胞の樹立を行う。次に、SeVベクターにて初期因子を一過性に発現させ、もっとも簡便で、確実なiPS細胞作製方法の確立を行う。また他の研究グループ代表者と連絡をとり、疾患研究のためのiPS細胞樹立に対しての説明を行い、iPS細胞樹立の要請があれば樹立を行う。樹立したiPS細胞については、1)未分化マーカー発現2)三胚葉系細胞への分化を誘導し、多能性を確認する。
結果と考察
バンク事業に関わる基盤研、理研と共同で事業を行う体制を確立し、生体試料の収集に向けての規則、患者への説明・同意書を厚生労働省担当者らと共に作製した。iPS細胞の樹立について所属機関の承認を得て、さらにこれらの連携バンク事業についても、その書類を一般、ゲノム、臨床倫理委員会に申請した。iPS細胞作製については、合計10症例、皮膚生検後に線維芽細胞を樹立した。このうち4症例については、研究分担者と共に、1症例から10株以上のiPS細胞クローンの分離が終了し、現在分化能力や未熟マーカーを検査中である。残り6症例中、4症例ではすでにiPS細胞誘導に向けての初期化因子導入済みであり、コロニー形成が進行中である。また、未分化マーカーを免疫染色にて解析する方法を確立し、分化マーカーの発現を検出する定量PCR用プライマーを作成してiPS細胞確認方法の標準化を確立し、樹立したiPS細胞の次年度以降の検定準備を進めた。線維芽細胞樹立のためには皮膚生検が必要であり、樹立まで1ヶ月かかる。そこで血液細胞からの樹立を検討中である。
結論
バンク化を進めるために他のバンク事業の連携が重要である。皮膚由来線維芽細胞でiPS作製は可能であるが、よりよい生体試料を検討することが望まれる。また、iPS細胞の樹立ではセンダイウイルスベクターによる方法は効率が高く有用な方法である。今後、多くのiPS細胞を作製するために事業を広くPRする必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-