文献情報
文献番号
200936213A
報告書区分
総括
研究課題名
原因不明小腸潰瘍症の実態把握、疾患概念、疫学、治療体系の確立に関する研究
課題番号
H21-難治・一般-158
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
日比 紀文(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院)
- 藤山 佳秀(滋賀医科大学 医学部)
- 渡辺 守(東京医科歯科大学 医学部)
- 山本 博徳(自治医科大学 医学部)
- 岡崎 和一(関西医科大学)
- 松本 主之(九州大学 医学部)
- 清水 誠治(大阪鉄道病院)
- 田中 正則(弘前市立病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
小腸は悪性腫瘍や炎症性疾患も比較的頻度が少ないことからほとんど顧みられてこなかった臓器であった。クローン病やNSAIDs潰瘍などはその中でも比較的頻度が多いため原因・病態もかなり解明され、診断・治療法も整備されているが、単純性潰瘍、非特異性多発性小腸潰瘍症は、辛うじて疾患概念が提唱されているものの、臨床疫学、原因・病態、診断法、治療指針などはまったく確立されていない。この2疾患以外にも血管炎に伴う小腸潰瘍や希少な原因不明の小腸潰瘍症が存在することが明らかとなってきた。これらの難治性小腸炎症性疾患に対して、疫学的、臨床像、病態学的な解析を進め、さらに診断・治療法の整備・確立を目標としてアプローチした。
研究方法
原因不明の小腸潰瘍症に対する疫学調査、実態調査を、対象疾患を単純性潰瘍、非特異性多発性小腸潰瘍症の2疾患に絞って重点調査を行った。非特異性多発性小腸潰瘍症と診断された患者の家族歴を詳細に聴取し家系調査を行った。過去の報告例の検討、実態調査の解析、集積した画像検査の形態学的検討により、単純性潰瘍および非特異性多発性小腸潰瘍症に対する診断基準の確立を行った。単純性潰瘍/腸管ベーチェット病に対するインフリキシマブの有効性を検討した。
結果と考察
疫学調査、実態調査では、重点施設実態を実施し、実態が明らかにされつつあると考えられる。単純性潰瘍/腸管ベーチェット病に関しては、完全型ベーチェット病には腸管病変が少ないこと、手術例での再燃率が高いことが明らかとなった。非特異性多発性小腸潰瘍症における家系調査では、家族歴が判明した10例のうち60%で血族結婚がみられ、40%で同胞の発症が推測された。診断基準の確立では、過去の報告例の検討、今回実施した実態調査の解析、集積した内視鏡/X線造影の形態学的検討、分担研究者・研究協力者とのコンセンサス形成により、診断基準(案)を確立した。単純性潰瘍に対するインフリキシマブ治療効果の検討では、2施設にて探索的にインフリキシマブを使用された症例の治療効果と臨床背景について検討を行い、9例中4例(44%)で有効である一方で、手術例も3例(33%)と高率であった。
結論
本邦において初めて大規模な実態調査を行い、過去の報告例の検討なども併せて診断基準の確立を図った。一方、治療法に関しては単純性潰瘍に対するインフリキシマブの有効性を明らかとした。
公開日・更新日
公開日
2010-07-09
更新日
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