低フォスファターゼ症の個別最適治療に向けた基礎的・臨床的検討

文献情報

文献番号
200936209A
報告書区分
総括
研究課題名
低フォスファターゼ症の個別最適治療に向けた基礎的・臨床的検討
課題番号
H21-難治・一般-154
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大薗 惠一(大阪大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 島田 隆(日本医科大学大学院)
  • 折茂 英生(日本医科大学大学院)
  • 織田 公光(新潟大学大学院)
  • 五関 正江(日本女子大学)
  • 大嶋 隆(大阪大学大学院 歯学部)
  • 安井 夏生(徳島大学大学院 感覚運動系病態医学)
  • 道上 敏美(大阪府立母子保健総合医療センター研究所 環境影響部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
15,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
低フォスファターゼ症は先天性骨疾患であり、TNS-ALPの欠損により引き起こされる。正確な頻度は不明であり、人種差が大きい。一般的に、発症時期が早いほど重症であるが、胎内発症の症例でも長期生存可能な病型が存在する。症状が多彩であること、酵素補充療法が開発されつつある事より、現時点で正確な病型分類を行い、個別の治療・管理指針を確立する必要がある。また、酵素補充療法は高額であるため、次世代治療法として、ALP高発現細胞を用いた細胞療法やiPS細胞を用いた遺伝子修復療法の開発をめざす。
研究方法
A. 患者実態把握のためのアンケート調査、広報活動(1-3年目)
B. 遺伝子型-表現型の相関の検討(1-3年目)
C. 乳歯早期脱落に対する調査(1-3年目)
D. 治療効果の判定(1-3年目)
E. 次世代治療法の開発(1-3年目)
結果と考察
A.遺伝子検査の依頼のあった、小児科医;産科医にアンケート調査を行い、合計24名の患者の存在が確認。胎児期発症した例が15名と過半数を占めた。論文発表した胎児;新生児期発症良性型以外に、従来の致死型に相当すると考えられる重度の骨変形;低石灰化例でも、呼吸管理の進歩により、長期生存している例があることが判明した。
B.TNSALP遺伝子診断を直接シークエンス法で行う手技には習熟しており、迅速、かつ確実な診断ができる。また、変異型ALPの多面的な機能解析を行本症の治療・管理ガイドラインの策定を行った。
C.外力によらない乳歯早期脱落の経験についてアンケート調査を行い、基礎疾患としての低フォスファターゼ症の可能性を検討する。また、処置として乳歯早期脱落後義歯となった例について調査する。実際に3例の歯限局型の診療を行っているので、骨の表現型について検討する。
D.Pyrophosphateの測定法を確立したので、診断指針に明記し、は臨床検査レベルでは行われないので、本研究班において実験室レベルで測定する。
E.1x105個のヒト皮膚線維芽細胞より通常10-20個程度のiPS細胞コロニーが得られた。モデルマウスでALP高発現細胞療法を行い、効果を認めた
結論
歯の症状を取り入れた診断管理指針(案)を作成し、初年度の目標を達成した。2年目は本指針案の妥当性について検討し、その後、普及を図る。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936209C

成果

専門的・学術的観点からの成果
次世代治療法の開発を試みている。一つは遺伝子治療であり、ALPノックアウトマウスにおける効果を検討したところ、体重増加不良、けいれんなどが改善した。もう一つはiPS細胞を用いて変異遺伝子を修復し、患者に戻す方法で、山中4因子を、ヒト線維芽細胞に導入することによりiPS細胞を作製した。さらに、本症の治療に用いることができるよう改善していく予定である。また、本症の診断、治療効果判定への活用を目的として、ALPの自然基質である無機ピロリン酸(PPi)の定量法を確立した。
臨床的観点からの成果
小児科医・産科医にアンケート調査を行い、合計24名の患者の存在が確認された。胎児期発症した例が15名と過半数を占めた。論文発表した胎児・新生児期発症良性型以外に、従来の致死型に相当すると考えられる重度の骨変形・低石灰化例でも、呼吸管理の進歩により、長期生存している例があることが判明した。歯科大学へのアンケートでは16名が登録された。患者の実態把握に役立つものと考えられる。
ガイドライン等の開発
歯の症状を取り入れた診断管理指針(案)を作成した。主症状 1. 骨石灰化障害 骨単純X線所見として骨の低石灰化、長管骨の変形、くる病様の骨幹端不整像 2. 乳歯の早期脱落(4歳未満の脱落)、主検査所見 1. 血清アルカリフォスファターゼ(ALP)値が低い(年齢別の正常値に注意)に参考所見を組み合わせ、診断に困った場合は、本班研究事務局を相談窓口とした。
その他行政的観点からの成果
具体的にはなし。今後、酵素補充療法の日本への導入の際には、行政との連携が大切となる。
その他のインパクト
平成21年10月大阪で、患者会むけに、骨疾患に関するセミナーを開いた。このセミナーの様子は、患者会のホームページでも紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
「低フォスファターゼ症の診断方法」 「骨密度予測方法および遺伝子多型分析用用試薬キット」
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakamura-Utsunomiya A,Michigami T,Ozono K et al.
Clinical characteristics of perinatal lethal hypophosphatasia:a report of 6 cases.
Clin Pediatr Endocrinol , 19 (1) , 7-14  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-