文献情報
文献番号
199700692A
報告書区分
総括
研究課題名
ポジトロンCTによる覚醒剤使用者の脳内ドーパミン再取り込み部位に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
伊豫 雅臣(浜松医科大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 脳科学研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
覚せい剤は、ドーパミン・トランスポーター(DAT)を介して、ドーパミンのシナプス間隙のドーパミンを増加させることにより、その主な作用を発現させると考えられている。このDATと覚せい剤との関係についてはいくつか報告がなされている。ヒト死後脳研究では、覚せい剤使用直後ではDATが減少している。とか、ラット及びサルでは、覚醒剤の反復投与により、線条体DATは長期にわたり減少いる。しかしながら、現在までヒトにおける覚せい剤使用に伴うDATの経時的変化についての報告はなされておらず、また生きたヒトを対象とした研究も報告されていない。そこで今回われわれはポジトロンCT検査により覚せい剤乱用者を対象にDATを測定し、DATの覚せい剤最終使用からの経時的変化および精神症状との関係について調べることとした。
研究方法
覚せい剤乱用者4名と、性別、年齢を合わせた健常者5名を対象としたPET検査を施行した。トレーサには、cocaineの類似体であり、DAT阻害剤である[11C]2-b-carbomethoxy-3b-(4-fluorophenyl)tropane (11C-b-CFT)を用いた。
PET計測前に各被験者から文書による説明・同意を取得した。トレーサは右腕の静脈からが静注した。静注直後より、動脈採血(左正中動脈)およびPET計測を90分間施行した。動脈採血は最初は10秒から15分毎に採取した。一方、PET計測では1フレーム30秒から15分間隔とした。動脈血サンプルから血漿中のリガンド濃度を測定した。また、同時にTLC-BAS法により、代謝産物と非代謝産物を分離し、血漿中リガンド濃度を測定した。
関心領域 (Regions of interest; ROIs) は小脳と線条体に設定した。各ROIの動態曲線と血中放射能動態を用いた3-compartment、 4-parameter modelによりDATの結合能(BP: binding potential)を算出した。BPはk3/k4であり、Bmax/Kdであり、最大結合数Bmaxを反映する指標として用いることができる。
PET計測前に各被験者から文書による説明・同意を取得した。トレーサは右腕の静脈からが静注した。静注直後より、動脈採血(左正中動脈)およびPET計測を90分間施行した。動脈採血は最初は10秒から15分毎に採取した。一方、PET計測では1フレーム30秒から15分間隔とした。動脈血サンプルから血漿中のリガンド濃度を測定した。また、同時にTLC-BAS法により、代謝産物と非代謝産物を分離し、血漿中リガンド濃度を測定した。
関心領域 (Regions of interest; ROIs) は小脳と線条体に設定した。各ROIの動態曲線と血中放射能動態を用いた3-compartment、 4-parameter modelによりDATの結合能(BP: binding potential)を算出した。BPはk3/k4であり、Bmax/Kdであり、最大結合数Bmaxを反映する指標として用いることができる。
結果と考察
11C-b-CFTでは線条体にのみ高い放射能集積が認められ、DATへの高い選択性が認められた。Compartment model解析によりDAT結合能を算出した。その結果、覚醒剤使用者の線条体におけるDAT結合能は、健常者と比較して約20%有意に低下していた。また、この低下は最終使用からの時間経過とは相関しなかった。覚せい剤使用者では、健常者と比較して、線条体DATにおいて、結合能の有意な低下(20%程度)が認められた。MAP使用者の覚せい剤の休薬期間は、7日から1年半と、様々であったが、いずれの症例についてもほぼ同等の結合能の低下が認められた。このことから、覚せい剤によりDATは減少し、この減少は長期にわたり持続することが予測された。
結論
[11C]b-CFTをトレーサとしたPETにより、4名のMAP使用者と5名の健常者について線条体DATの測定を行った。MAP使用者では、健常者と比較して、線条体DAT結合能が有意な低下(20%程度)を示していた。
公開日・更新日
公開日
-
更新日
-