再発性多発軟骨炎の診断と治療体系の確立

文献情報

文献番号
200936198A
報告書区分
総括
研究課題名
再発性多発軟骨炎の診断と治療体系の確立
課題番号
H21-難治・一般-143
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 登(聖マリアンナ医科大学 医学部 免疫学・病害動物学)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 承一(聖マリアンナ医科大学 医学部 内科学)
  • 宮澤 輝臣(聖マリアンナ医科大学 医学部 内科学)
  • 肥塚 泉(聖マリアンナ医科大学 医学部 耳鼻咽喉科学)
  • 中島 康雄(聖マリアンナ医科大学 医学部 放射線医学)
  • 須賀 万智(聖マリアンナ医科大学 医学部 予防医学)
  • 岡 寛(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター)
  • 遊道 和雄(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再発性多発軟骨炎(以下RP)は原因不明で稀な難治性疾患である。国内外共に疫学情報や病態研究は不十分で、診断・治療のための明確な指針も作成されていない。気道などの臓器病変を伴う患者の予後は極めて不良であり診断・治療法の確立が急務である。我々は本邦で初めてのRPに対する疫学調査を行ない、患者実態ならびに治療状況の把握に加えて、免疫抑制剤や生物学的製剤等の治療薬の有効性に関する新たな知見を得た。
研究方法
全国基幹医療機関のRP診療担当科(耳鼻咽喉科、呼吸器科、リウマチ科等)を対象にアンケート調査を行い臨床像と治療の実態を解析した。本研究は聖マリアンナ医科大学生命倫理委員会臨床試験部会において疫学調査の臨床試験、臨床検体採取の臨床試験について承認された。採取した血清のサイトカイン・ケモカイン濃度を網羅的に測定した。
結果と考察
一次調査票1,894通の送付に対して856通の回答を得た。そのうちRP症例「治療経験有り」は240通、「経験なし」は616通であった。次に二次調査票395通を送付し、121施設から回答があり 239 症例(男性127例、女性112例)の臨 床情報を得た。RP 239例の平均発症年齢は52.7歳、初発症状として耳介軟骨炎138例 (58 %)、気道病変 (気管軟骨炎、喉頭軟骨炎) 119例 (50 %)、骨髄異形成症候群4例 (2%)であった。

ステロイド治療歴は219例 (92 %)にあり、重症例では免疫抑制剤治療ならびに生物学的製剤が用いられていた。気道病変に対しては気管切開42例 (18%)、気管内ステント挿入22例 ( 9%)、二相式気道
陽圧療法12例 ( 5%) に施行されていた。免疫抑制剤ではメソトレキサート、シクロフォスファミド、シクロスポリンの3剤の有用性が示唆された。これらでの治療抵抗例には生物学的製剤が用いられる場合があった。気道病変を来した119 例の解析では、ステロイドのみでは気道病変を防止できないことが示唆された。臨床経過は、治癒・改善が73 %、不変13 %、悪化 4 %、死亡が 8 %であり、全死亡患者22例中RP関連死が半数であった。
結論
本邦RP239例の疫学調査を行った。ほぼ全例がステロイド治療の適応で、重症例では免疫抑制剤、生物学的製剤が使われる場合があった。一割弱に患者死亡が認められ、新規の診断・治療法の開発が強く望まれる。

公開日・更新日

公開日
2010-06-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936198C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本邦で初めて再発性多発軟骨炎(以下RP)に対する疫学調査(239症例)を行った。患者実態(初発年齢、性差、臨床像、予後)ならびに治療状況の把握に加えて、免疫抑制剤や生物学的製剤等の治療薬の有効性に関する新たな知見を得た。これらは日本リウマチ学会関東支部学術集会(平成21年12月)、日本リウマチ学会学術集会(平成22年5月)、患者友の会との交流会および本班会議研究会において高い評価を得た。原著論文を国際的学術誌に投稿し、RP患者血清の疾患特異的バイオマーカーの候補分子を同定した。
臨床的観点からの成果
全国の主要な病院を対象に疫学実態調査を実施し、本邦において240余例のRP患者が存在する事と患者の診断・治療の実態を明らかにした。本年度の成績から、気道病変を持つ患者では予後不良で免疫抑制剤の早期使用を提唱した事、本疾患では1割弱の患者が死亡する等の実態を公表したが、これらはRPの診療に関わる医師に対する重要な指針となっている。今後、さらに患者の臨床像・治療成績の詳細を公表する事で、RP患者の治療成績向上に貢献できる。
ガイドライン等の開発
我々は平成21年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業[研究課題名:再発性多発軟骨炎の診断と治療体系の確立]において、平成21年11月末現在、RP239症例の疫学調査を行い、患者の病態や治療状況の解析を行った。その結果、本邦の患者実態(有病率、初発年齢、性差、臨床像、予後)に加えて、RP治療に関する以下の注目すべき知見を得た。この知見をもとに、再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis)診断・治療指針(案)2009年度版を作成した。
その他行政的観点からの成果
平成21年度疫学調査における患者データから、本症患者は平均2.3科を受診し、医療費は外来通院において月額 22,396円、年間268,752円を要し、患者の負担が大きいことが明らかになった。さらに公的補助を受けている患者は、身体障害者として認定された約1割程度のみであることを初めて明らかにした。こうした患者実態を詳細に検討していくことで、本疾患患者の医療と福祉ならびに、医療行政の向上に向けて貢献できるものと考える。
その他のインパクト
再発性多発軟骨炎中間報告会 福岡市 2009年9月27日 産経新聞 「難病指定へ福岡で全国初 支援団体」同年10月21日 公明新聞「1日も早い難病指定を」同年同日 再発性多発軟骨炎神奈川公開シンポ 川崎市 同年11月15日 再発性多発軟骨炎公開シンポ 福岡市 2010年3月14日毎日新聞福岡都市圏版 「軟骨炎」症例 同年3月15日メディカルトリビューン誌「難病の再発性多発軟骨炎の臨床像が明らかに」同年4月26日メディカルトリビューン誌「再発性多発軟骨炎の特定疾患の認定を呼びかける」同年同日

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
投稿中
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-