先天性無痛症の実態把握および治療・ケア指針作成のための研究

文献情報

文献番号
200936197A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性無痛症の実態把握および治療・ケア指針作成のための研究
課題番号
H21-難治・一般-142
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
芳賀 信彦(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 天野 史郎(東京大学医学部附属病院 角膜移植部)
  • 犬童 康弘(熊本大学医学部附属病院 小児科)
  • 久保田 雅也(国立成育医療センター 神経内科)
  • 田中 千鶴子(昭和大学保健医療学部 看護学科)
  • 田中 信幸(群馬整肢療護園 整形外科)
  • 冨岡 俊也(東京大学医学部附属病院 麻酔科・痛みセンター)
  • 馬場 直子(神奈川県立こども医療センター 皮膚科)
  • 三輪 全三(東京医科歯科大学 歯学部附属病院 育成系診療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝性感覚・自律神経ニューロパチー4型(先天性無痛無汗症:CIPA)と5型(先天性無痛症:CIP)は全身の無痛を特徴とする稀な疾患である。本研究の目的は、関連各領域の研究を行い、最終的に「総合的な治療・ケアのための指針」を策定することである。
研究方法
研究を、A.診療実態に関する調査、B.病態把握のための基礎・臨床研究、C.合併症に関する臨床研究、D.患者・家族の支援に関する研究、に分けて行った。
結果と考察
A.関連学会へのアンケート調査より、国内患者数を100名以上と予測した。検査や包括診療は、小児科・神経内科の多施設で可能であり、適切な診療体制作りが可能と考えた。
B.CIPA患者の臨床神経学的検査では、触・圧覚、振動感覚、関節覚、二点識別覚は、対照群と比べ低下していた。CIPA患者に対する脳磁図検査から、触圧覚をコードする末梢/中枢神経系には障害がないこと、Aδ/C線維の刺激によって皮質活動が見られること、が明らかとなった。
C.消化器症状と睡眠・覚醒リズム、ロコモーションの関連調査では、消化器症状が強いほど睡眠リズム、ロコモーションの発達が未熟であった。後足部骨折の5名を検討すると、明らかな外傷を契機としたものは1足のみ、踵骨骨折では特徴的な骨折線を示した。CIPAを対象とし視機能発達を評価し視機能発達に影響する因子を解析した結果、正常な視機能発達を達成するためには、角膜障害を起こさないこと、起きた場合の早期治療が重要であることがわかった。CIPA患者の皮膚の精査の結果、角層水分量、セラミド量が有意に低く、TEWLが上昇しており、皮脂量は変わらなかった。患者の歯について歯髄電気診による歯髄感覚検査を行ったところ、CIPAとCIPで感覚の有無に差があった。抜去歯の神経分布より、これまでpre-painの伝達機序がAβ線維とされていたがC線維である可能性が示唆された。
D.患者家族へのヒアリングや検診会を通じて、合併症、生活上の問題、これらの予防や対処法について明らかにし、「先天性無痛無汗症:わたしたちのケアガイド」を作成した。
結論
CIPおよびCIPAに関して多方面から多彩な研究を行い、一定の成果を出すことができた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936197C

成果

専門的・学術的観点からの成果
遺伝性感覚・自律神経ニューロパチー4型(先天性無痛無汗症:CIPA)と5型(先天性無痛症:CIP)は全身の無痛を特徴とする稀な疾患であり、特に前者は日本に患者が集積している。本研究は稀な疾患に対して各方面の研究者が参加し集学的に取り組んでおり、成果を結べば学術的に高い意味を持ちうる。本年度得られた成果はまだprimaryな研究結果を含んでおり、専門的・学術的観点からの成果は不十分である。
臨床的観点からの成果
医療機関へのアンケート調査より、大まかな国内患者数を予測できたこと、診断のための検査や包括的な診療体制構築の可能性を見出したことは臨床的意義が高い。また、温痛覚以外の感覚も低下していることが明らかになり、各種合併症の予防・治療などに際して役立つ成果と考える。また整形外科・眼科・皮膚科・歯科等の分野における合併症について明らかになってきたことから、臨床的な問題点の一部は明らかになったと考える。
ガイドライン等の開発
医療機関へのアンケート調査より、診断のための検査や包括的な診療を行うことのできる機関がリストアップされたので、これを今後公開できることを目指す。診療ガイドラインの作成を目標としたが、今年度は作成に至らず、「ケアガイド」の作成にとどまった。「ケアガイド」自体は、家庭や教育現場における留意点を網羅したことで患者福祉に役立つと考えるが、診療ガイドライン策定には臨床研究を進め、エビデンスを構築する必要がある。
その他行政的観点からの成果
患者数を100名以上と把握したことには行政的に意味があり、今後患者側を対象とした調査を加えることでより正確な患者数・有病率を算出できれば、難治性疾患の行政に役立つと考える。患者家族へのヒアリングや検診会を通じて、合併症、生活上の問題、これらの予防や対処法について明らかにし、「先天性無痛無汗症:わたしたちのケアガイド」を作成した。このような活動は、他の難治性疾患においてもモデルとなる可能性がある。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Iijima M, Haga N
Evaluation of nonnociceptive sensation in patients with congenital insensitivity to pain with anhidrosis
Childs Nerv Syst (published online)  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-