文献情報
文献番号
200936195A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性角膜混濁の実態把握と診断法確立のための研究
課題番号
H21-難治・一般-140
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山田 昌和(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター 視覚研究部)
研究分担者(所属機関)
- 東 範行(国立成育医療センター眼科学)
- 大橋 裕一(愛媛大学医学系研究科医学専攻高次機能制御部門・感覚機能医学講座視機能外科分野・眼科学)
- 西田 輝夫(山口大学大学院医学系研究科眼科学)
- 東城 博雅(大阪大学大学院医学系研究科生化学分子生物学生命機能研究科細胞ネットワーク・生化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
先天性角膜混濁は頻度は少ないものの、小児の視覚障害の原因として重要な疾患である。先天性角膜混濁は欧米では1万の出生に1人の割合とする報告があるが、本邦での疫学的資料はこれまでになかった。本研究では先天性角膜混濁の実態と臨床像を把握し、的確な診断方法や治療方法の可能性について検討することを目的とした。
研究方法
全国の大学病院116施設、小児医療センター21施設、合計137施設に調査票を送付し、平成21年1年間に初診の先天性角膜混濁症例の有無、診断名、罹患眼を1歳未満と1歳以上の症例に分けて調査を依頼した。また、先天性角膜混濁のうち頻度が高い前眼部形成異常と輪部デルモイドについて臨床像を把握するために国立成育医療センターの症例調査を行った。
結果と考察
先天性角膜混濁の全国症例調査では91施設(66.4%)から回答を得ることができ、1歳未満の初診症例90例、1歳以上の初診症例60例を登録した。先天性角膜混濁の原因疾患として、前眼部形成異常と輪部デルモイドが主要なものであり、特に両眼性の症例では前眼部形成異常の割合が多いことが示された。国立成育医療センターの症例調査では前眼部形成異常139例について検討し、罹患眼は両眼性が74%、片眼性が26%であった。視力予後は眼数ベースでは、6割以上が0.1未満、4割以上が0.01未満と重度の視覚障害を呈し、症例ベースで検討した場合にも両眼性の例では視力0.5未満のロービジョンが41%、0.1以下の社会的失明が35%となった。一方、輪部デルモイド42例は全例が片眼性で視覚障害の原因にはならないが、罹患眼は弱視を伴いやすく、弱視の治療や管理が必要であると考えられた。
先天性角膜混濁発症者数は年間120-140例程度、出生8000-9000人に1名の頻度と推定された。このうち30-40例が視覚障害児になると推定され、先天性角膜混濁は視覚障害児全体の10-14%を占める小児の視覚障害の原因として重要な疾患であると考えられた。
先天性角膜混濁発症者数は年間120-140例程度、出生8000-9000人に1名の頻度と推定された。このうち30-40例が視覚障害児になると推定され、先天性角膜混濁は視覚障害児全体の10-14%を占める小児の視覚障害の原因として重要な疾患であると考えられた。
結論
先天性角膜混濁の視力予後は不良であり、両眼性の割合が高いために小児の視覚障害の原因になりやすいと考えられた。視力予後や晩発合併症などには不明の点が多く、長期経過の調査も必要と考えられる。診断の面では前眼部超音波検査やOCT、遺伝子診断の有用性が検討されるべきであり、治療の面では角膜移植の実態、予後の調査を行うことで、手術の適応基準、適切な手術方法の選択や標準化が必要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2010-05-25
更新日
-