文献情報
文献番号
200936193A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性脳小血管病の病態機序の解明と治療法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-難治・一般-138
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 理(新潟大学 脳研究所)
研究分担者(所属機関)
- 西澤 正豊(新潟大学 脳研究所)
- 脇田 英明(国立長寿医療センター研究所)
- 水野 敏樹(京都府立医科大学,神経内科学)
- 冨本 秀和(三重大学大学院医学系研究科 神経病態内科学)
- 吉田 豊(新潟大学医歯学総合研究科附属腎研究施設構造病理学分野)
- 山田 真久(理化学研究所 脳科学総合研究センター 山田研究ユニット)
- 丹羽 正美(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科神経薬理学分野)
- 佐藤 俊哉(新潟大学脳研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
脳小血管病は大脳白質を中心とする変化で,認知症,脳梗塞,出血性脳梗塞の発症に密接に関わっている.しかし,診断基準が確立されておらず,有効な治療方法も確立されていない.希に,家族性に脳小血管病を起こす遺伝性脳小血管病が報告されている.遺伝性脳小血管病には,常染色体性優生遺伝形式をとるCADASILや,劣性遺伝形式をとるCARASIL等が知られている.我々はCARASILの原因遺伝子を同定し TGF-βファミリーのシグナル伝達の更新が,その背景にあることを明らかにした.本研究班では本邦における,遺伝性脳小血管病の頻度,および症状を明らかとし,これらの遺伝子変異が,血液脳関門や,脳小血管に与える影響を検討する.
研究方法
本邦における遺伝性脳小血管病患者の実態調査と生体資料収集を行う.そのために,まず本症患者を集積し診断基準の確立を目指した.CADASILはNotch3受容体の変異で引き起こされNotchシグナル異常の関与も推定されている.一方CARASILではセリンプロテーゼの異常により結果としてTGF-βファミリーシグナルの亢進を引き起こす.本研究班では,これらのシグナル伝達の関与をモデルマウスで検討する.脳小血管病モデルマウスにて脳小血管病を引き起こす遺伝子の機能,およびその下流のシグナル伝達を検討した.血液脳関門を再現したBBBキットを用い,TGF-βファミリーシグナルの亢進による血液脳関門機能を検討した.
結果と考察
CADASILの遺伝子診断が除外された,若年性ビンスワンガー病患者36名を集積しCARASILの原因遺伝子HTRA1の変異の有無を検索した.その結果,新たなアミノ酸置換を伴うミスセンス変異のホモ接合体を1例見いだした.同変異は正常高齢者400染色体では認められず,また,非発症者の同胞ではヘテロ結合体であり,本遺伝子変異が,本例の発症に寄与していると判断した.また臨床的にはCARASILの三徴である,白質脳症,変形性腰椎症,禿頭のうち,禿頭を欠く.これらの結果からCARASILの診断には禿頭は必須ではないと判断した.この結果をふまえ,CADASILおよびCARASILの診断基準を設定した.基礎的には,初代培養系を用いた脳血管関門のin vitroモデルを用いて,TGF-βによって血液脳関門の透過性が増すことを示した.またノックアウトマウスを用いて,TGF-βファミリーシグナルの受容体が血液脳関門の機能維持に重要な役割を果たしていることを示した.
結論
本症の診断基準を作製し,サイトカインシグナルが血液脳関門の制御に密接に関わっていることを示した点で重要である.
公開日・更新日
公開日
2010-06-07
更新日
-