ゲノムインプリンティング異常症5疾患の実態把握に関する全国多施設共同研究

文献情報

文献番号
200936191A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノムインプリンティング異常症5疾患の実態把握に関する全国多施設共同研究
課題番号
H21-難治・一般-136
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
有馬 隆博(東北大学 未来医工学治療開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 洋一(東北大学大学院医学系研究科臨床遺伝学)
  • 八重樫 伸生(東北大学大学院医学系研究科発生・発達医学講座婦人学)
  • 秦 健一郎(国立成育医療センター周産期病態研究部)
  • 加藤 聖子(順天堂大学医学部産婦人科学講座)
  • 栗山 進一(東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、先天性ゲノムインプリンティング異常症:Beckwith-Wiedermann症候群(BWS)、Angelman症候群(AS)、Prader-Willi症候群(PWS)、Silver-Russell症候群(SRS)、新生児一過性糖尿病(TNDM)5疾患について、全国規模の疫学調査を行い、インプリント病の発生頻度、病態、治療実態の把握を行う。さらに、試料の収集と遺伝子診断を行い、発症機序と影響を受ける遺伝子の解析を行う。さらに生殖補助医療やメチル化異常との関連について実態を把握し、リスク要因について評価する。
研究方法
本調査は、受療患者数推計のため、療育センターや重症心身障害者施設含む多施設の産科・小児科医の協力下に第1次調査(調査対象科3158科)と、臨床疫学像実態把握のための第2次調査(14項目)に分けて実施した。さらに試料DNAを用いて遺伝子(メチル化)解析を行なった。
結果と考察
調査対象科3158科のうち、1602科から有効回答があり(有効回答率56.3%)、報告患者総数は1818人であった。BWSが216人、ASが415人、PWSが992人、SRSが161人、TNDMが34人。第1次調査報告患者1818例のうち27.7%にあたる504例の第2次調査票を回収。AS以外の4疾患で、近年増加傾向にあることが示唆された。特にBWS、SRSは最近5?10年間に急増。PWS、BWS、AS、SRSの疾患のそれぞれ1.5%、8.6%、1.6%、9.5%が不妊治療を受けていた。またほとんどの症例は体外受精(IVF)あるいは顕微授精(ICSI)によるもので、いずれの4疾患も発症率は高く、特にSRSでは11.2倍、BWSでは10倍と高値を示した。
結論
全国3158施設の実態調査を行い、対象5疾患を治療している380施設のうち171施設より、臨床像や治療法等14項目についての特徴や実態が明らかとなった。現在454名の患者の遺伝子解析を行っており、その結果を加えて結論づけたい。
その結果を基に臨床の現場に役立つ遺伝子診断と発症機序の頻度に基づいたフローチャートを作成する。また遺伝子型と臨床型の病態や重症度との関連性について明らかにし、患者により良い医療とケアのため、治療実態や合併症に関する情報を提供する。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936191C

成果

専門的・学術的観点からの成果
インプリント遺伝子のDNAメチル化は、エピジェネティックな修飾として変化を受けやすい特徴があり、先天性疾患の原因となる。配偶子操作を行う生殖補助医療は、インプリントが獲得・維持される時期の配偶子を操作するため、その影響について懸念され、BWSやAS等の先天性疾患の発症頻度が増加しているとの報告が数多くみられる。今回の解析した症例数はこれまでの報告例では最も多く、PWSの報告は世界ではじめてである。
臨床的観点からの成果
典型的症状以外にBWS:耳介の溝 (50.0%)ギョロ眼 (25.7%)の頻度が高い。
AS:難治性てんかん(88.0%)や色白(72.0%)、下顎突出(65.0%)の頻度も特徴的
C.PWS:色白(76.0%)、アーモンド様眼瞼(82.0%)が認められた。その他、典型的なとみられていた症状を示さない症状も見られた。小児癌との関連では、BWSに8例(11.4%)に小児癌が認められ、PWS、SRSにも1例ずつ認められた。
ガイドライン等の開発
アンケート調査と遺伝子診断の結果をもとに、各種疾患の頻度、程度 を評価する。また、発症機序の分類と臨床像(臨床症状、重症度等)、患者背景について比較し、臨床の現場に役立つ遺伝子診断と発症機序の頻度に基づいたフローチャートを作成する。
その他行政的観点からの成果
配偶子操作を行う生殖補助医療(ART)はインプリントが獲得・維持される時期の配偶子を操作するため、その影響について懸念され、BWSやAS等の先天性疾患の発症頻度が増加しているとの報告が数多くみられる。今回の解析した症例数はこれまでの報告例では最も多く、PWSの報告は世界ではじめてである。これら疾患が増加傾向に有り、ART治療と関連する事が示唆される。少子化、晩婚化の社会情勢により、今後もART患者の増加が見込まれるため、次世代社会の最重要な行政的問題と考えられる。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
なし
なし
なし

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-