ゲノム異常症として歌舞伎症候群原因遺伝子同定と遺伝子に基づく成長障害治療可能性の研究開発

文献情報

文献番号
200936189A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム異常症として歌舞伎症候群原因遺伝子同定と遺伝子に基づく成長障害治療可能性の研究開発
課題番号
H21-難治・一般-134
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
吉浦 孝一郎(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 木下 晃(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 新川 詔夫(北海道医療大学 個体差健康科学研究所)
  • 太田 亨(北海道医療大学 個体差健康科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は (1) 歌舞伎症候群の原因遺伝子の同定と病態生理の解明,(2) 病態生理,分子病態にもとづいた歌舞伎症候群の症状,特に出生後成長障害,女児の思春期早発の治療方針策定の基礎データを得ることである。
研究方法
研究期間中に,下口唇窩または下口唇中央溝をもつ典型例を収集し不死化細胞株を樹立する。加えて,すでに当教室で凍結保存している典型例・非典型例の本症患者のlymphoblastoid cell line (LCL) 細胞とあわせて解析対象とする。

歌舞伎症候群を優性遺伝と想定しAffymetrix Cytogenetics Whole - Genome 2.7M Array を用いての全ゲノム微少コピー数異常領域の同定する。データ解析はPartek Genomics SuiteおよびChromosome Analysis Suite (ChAS) Softwareを使用する。

結果と考察
6名の患者解析をGenome 2.7M Array を用いて行った。1名につきおよそ100カ所のコピー数変化が見られる。このうち,歌舞伎症候群の原因として可能性があるのは,多型としてデータベースに登録されておらず,かつ遺伝子領域を含んでいる部位である。候補領域として選択された領域は各個人において,1カ所から25カ所まで様々であった。
  歌舞伎症候群が単純な機能喪失による疾患であれば,2.7 M Array 解析により63例中に欠失が認められるであろうし,原因は見つけられると期待できる。今後は,遺伝子同定を行い歌舞伎症候群患者の病態生理を明らかにし,骨格系の異常あるいは内分泌系の異常に対して有効な治療法を考案できるように研究を進める。
結論
本年度新たに収集した歌舞伎症候群症例を含めDNAとして利用可能な試料が63症例となった。
2.7M arrayの解析は,消耗品の供給が年度末近くになったために,まだ進んでいないが,確実に解析を進めスクリーニングが完了できるであろう。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936189C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本年度新たに収集した歌舞伎症候群症例を含めDNAとして利用可能な試料が63症例のDNAを解析可能となった。世界的にもこれほど多くの症例を収集し,分子生物学的な解析を行っている施設はない。2.7M arrayの解析を開始し,まだ6名と少ないが,ゲノム構造異常のプロファイリングを開始しており今後の進展が期待される。
臨床的観点からの成果
臨床的には,極まれな疾患(1/32,000)といわれるが,典型例として述べられている数字である。新川らの臨床的観察により,特徴的顔貌と下口唇窩あるいは下口唇中央溝をもつ典型例と特徴的顔貌+精神発達遅滞をともなう例があることがわかり,少なくとも歌舞伎症候群が2疾患群の集まりである可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
歌舞伎症候群が特徴的な顔貌からのみ診断されているが,その中でも2群に分かれる可能性があることが示唆された。原因遺伝子が判明した場合には,特徴的顔貌がなく精神発達遅滞+多発奇形をもつ非特異的症候群患者にも歌舞伎症候群原因遺伝子が原因となっている疾患も予想される。精神発達遅滞を伴い患者群の原因確定,確定診断に重要な遺伝子である可能性がある。
その他のインパクト
なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kuniba H, Yoshiura K, Kondoh T et al.
Molecular karyotyping in 17 patients and mutation screening in 41 patients with Kabuki syndrome.
Journal of Human Genetics , 54 (5) , 304-309  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-