文献情報
文献番号
200936186A
報告書区分
総括
研究課題名
カナバン病の実態把握とケア指針作成のための研究
課題番号
H21-難治・一般-131
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
星野 英紀(国立成育医療研究センター 内科系診療部 )
研究分担者(所属機関)
- 久保田 雅也(国立成育医療研究センター 内科系診療部)
- 井上 義人(金沢医科大学総合医学研究所 人類遺伝学研究部門 生化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
カナバン病 は酵素欠損によるN-acetyl-aspartate (NAA) の蓄積で生じる大脳白質変性症で、乳児期より精神運動発達遅滞, 大頭, 筋緊張低下が出現,退行する. NAAは髄鞘化に必要なアセテート供給源であり、カナバン病ではNAAの蓄積により細胞間質やオリゴデンドロサイトに浮腫性変化を起こす。尿試料を用いたガスクロマトグラフによるNAAの分析法でカナバン病患者の化学診断が可能である.尿採取によるNAA測定は簡便で、スクリーニングとしての意義は大きい.日本でのカナバン病症例の集積および尿中NAA測定によるスクリーニングの意義を検証する目的で研究は行われた。
研究方法
カナバン病の診断または疑い大脳白質変性疾患患者の経験を全国921の小児病院、中核病院小児科、療育施設にハガキ送付しアンケート調査を施行した。668施設(回答率72.5%)より回答を得た
カナバン病現存例の尿中NAA濃度測定が行われた。正常対照群として26-34歳の11名の健常者の尿中NAAを測定した。
カナバン病現存例の尿中NAA濃度測定が行われた。正常対照群として26-34歳の11名の健常者の尿中NAAを測定した。
結果と考察
カナバン病確定診断症例の診療経験がある施設は、わずかに2施設2症例のみであり、日本で非常に稀少な疾患であることが改めて示された.当院のほかに診療経験を持つ施設の症例はすでに死亡しており、生前の病態の詳細な聴取は困難であった。カナバン病患者1名を含む6名のNAA濃度をそれぞれの年齢相当群に対する異常度n[n-(NAA濃度-対照群平均値)/ 対照群標準偏差値]で求めた。結果、Canavan病患者が依然高い異常値を示す一方、対照群ではすべて正常範囲内に収まった。
今回のアンケート調査で、日本においてはカナバン病の症例が少なくその実態を把握するには不十分であった。カナバン病の治療としては、Assadiらが、カナバン病の6例でリチウム投与により、H-MRSで脳室内の過剰NAAが減少し白質の髄鞘化が進行し、神経症状が改善したことを報告しており、尿中NAAの正常対照群でのデータをまとめ、未診断の臨床的カナバン病疑い群を抽出し、早期発見のためのスクリーニング検査法の確立と治療法の解明につなげていきたいと考える。
今回のアンケート調査で、日本においてはカナバン病の症例が少なくその実態を把握するには不十分であった。カナバン病の治療としては、Assadiらが、カナバン病の6例でリチウム投与により、H-MRSで脳室内の過剰NAAが減少し白質の髄鞘化が進行し、神経症状が改善したことを報告しており、尿中NAAの正常対照群でのデータをまとめ、未診断の臨床的カナバン病疑い群を抽出し、早期発見のためのスクリーニング検査法の確立と治療法の解明につなげていきたいと考える。
結論
カナバン病の実態把握およびケア指針作成のため、アンケートによる全国調査を施行した.結果、カナバン病の診療経験はわずか2施設2症例のみであった.本例では現在も尿中NAAは対照と比較して高値であり、診断的特異性も高い.未診断の大脳白質変性疾患のスクリーニング検査として価値が高い.
公開日・更新日
公開日
2010-05-31
更新日
-