新生児および乳幼児肝血管腫に対する新規治療の実態把握ならびに治療ガイドライン作成に関する研究

文献情報

文献番号
200936185A
報告書区分
総括
研究課題名
新生児および乳幼児肝血管腫に対する新規治療の実態把握ならびに治療ガイドライン作成に関する研究
課題番号
H21-難治・一般-130
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 達夫(国立成育医療研究センター 外科)
研究分担者(所属機関)
  • 熊谷 昌明(国立成育医療研究センター 固形腫瘍科)
  • 野坂 俊介(国立成育医療研究センター 放射線科)
  • 中澤 温子(中川 温子)(国立成育医療研究センター 病理部)
  • 星野 健(慶應義塾大学 小児外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新生児や低年齢の乳幼児にみられる難治性肝血管腫は、頻度は極めて少ないが、循環不全や凝固異常など致死的な症状を呈し、従来の治療には反応せず、治療に難渋する致死的疾患である。本研究では、短期の研究期間を考慮し、抗がん剤治療や新生児・乳児に対する技巧的な塞栓療法等の新規治療の応用の可能性や有用性を観察研究により検証することを目的とした。合わせて、本症の罹患数や治療の実態の概要を全国的な調査により把握する事を目指した。
研究方法
1)観察研究:
 新生児及び乳幼児の肝血管腫ならびに関連疾患として同年齢の巨大血管腫や新生児巨大腫瘍の症例を対象として、研究者の施設における抗がん剤治療や、塞栓療法、肝移植などの治療経過につき観察研究を行なった。
2)全国的一次調査:
 日本小児外科学会認定施設117施設を対象に個人情報を含まない形で過去5年かの治療症例数、治療法などについて調査した。
3)学術団体データベースや文献検索:
 当該疾患の頻度、治療実態につき日本病理学会剖検輯報などの既存のデータベースを検索した。
結果と考察
分担研究者らの施設における観察研究から、新生児ならびに乳幼児の難治性肝血管腫に対して、抗がん剤治療(ビンクリスチン、エンドキサン、アクチノマイシンD)や、肝動脈結さつ手術、肝移植、塞栓治療などが治療の選択肢として施行し得ることが検証された。従来の治療に反応せず、これらの治療により著明な効果が見られた症例が観察された。近年注目されるプロプラノロールの効果に関しては今後の検証が待たれる。組織学的には乳児血管内皮腫Ⅱ型に組織学的異形成と血管肉腫類似の進行性の臨床像があることが観察され、肝移植などの適応と関連して注目された。全国の小児外科施設を対象とした一次調査では、これらの施設で治療される症例は年間7.5例程度と集計され、80%は従来からのステロイド療法が行われていたが、上記のような新規治療との併用例が多く、ステロイド療法単独での治療効果は不十分であることが示唆された。
結論
新生児ならびに乳幼児の難治性肝血管腫に対して、抗がん剤治療(ビンクリスチン、エンドキサン、アクチノマイシンD)や、肝動脈結さつ手術、肝移植、塞栓治療などが治療の選択肢として施行しうること、従来の治療に反応しない症例中にこれらの治療で顕著な効果が得られる症例があることが検証された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936185C

成果

専門的・学術的観点からの成果
分担研究者らの施設における観察研究から、新生児ならびに乳幼児の難治性難治性肝血管腫に対して、抗がん剤治療(ビンクリスチン、エンドキサン、アクチノマイシンD)や、肝動脈結さつ手術、肝移植、塞栓治療などが将来的な治療の選択肢として施行し得ることが検証された。病理組織学的にはDehner、Ishakらの提唱する乳児血管内皮腫 Ⅱ型と、血管肉腫の臨床像に類似点が観察され、より重篤な臨床像を示唆する組織型として注目された。
臨床的観点からの成果
研究課題の疾患の罹患数や治療の実態に関する全国的な一次調査の結果から、80%の症例がステロイド療法を施行されていたが、同時に他の治療も併用されており、ステロイド単独では治療効果が不十分であり、集学的に複数の治療を組み合わせる必要性が示唆された。観察研究でも抗がん剤や塞栓療法、肝移植などの新規治療の有用性が示唆されたが、現状ではその適応や評価が固まっていない実態が浮き彫りにされた。
ガイドライン等の開発
ガイドライン策定の準備として、今年度の研究成果から「難治性新生児・乳児肝血管腫に対する新規治療総括・一覧(簡易版)」をまとめた。この中で本症に対して新規に使用されるようになった薬物に関する情報、塞栓療法の概要、肝移植を含む外科治療の情報などが観察研究結果と合わせて総括された。これは研究報告書に資料として添付され、一次調査で希望のあった全国の小児外科施設へ配布を予定している。
その他行政的観点からの成果
全国の日本小児外科学会認定施設を対象とした一次調査では、117施設中65施設より回答を得た。研究課題のような症例を過去5年間に治療している施設は23施設のみであり、これらの施設で治療される難治性症例は全国で年間に7.5例程度と極めて少数であることが推定された。治療施設の分布をみると地域の中核的な小児総合医療施設が多かった。一方で低年齢児に対する塞栓療法や肝移植などの先進的治療は高度の技術を要し、施行可能な施設が制限されるなどの問題が指摘された。
その他のインパクト
今年度の研究の一環として、研究課題の疾患について全国の小児外科施設に予備的な調査を行ったことから、本症のような症例に対する問題提起がなされ、今後、こうした症例に対する治療の在り方をどのようにすべきか協力して検討したいというメッセージを多くの施設から頂いた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
出生前診断の限界と有用性 日本小児放射線学会 2009.6.27 高松
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
全国の日本小児外科学会認定施設への疾患の広報と協力要請

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
2016-06-20