文献情報
文献番号
200936184A
報告書区分
総括
研究課題名
高プロリン血症の臨床的多様性の解明と新しい診断基準及び長期フォローアップ体制の確立
課題番号
H21-難治・一般-129
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
三渕 浩(熊本大学医学部附属病院新生児学講座)
研究分担者(所属機関)
- 遠藤 文夫(熊本大学医学部付属病院小児科)
- 奥山 虎之(国立成育医療センター臨床検査部)
- 知念 安紹(琉球大学医学部病態解析医科学講座育成医学分野)
- 安東 敏彦(味の素株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
遺伝性高プロリン血症はⅠ型とⅡ型の2つのタイプに分類されている。高プロリン血症Ⅰ型の症状は難治性のけいれん、精神発達の遅れや統合失調症を示す症例があるが、臨床症状を全く示さない報告もある。高プロリン血症Ⅱ型でも難治性のけいれんや精神発達の遅れを示す症例と臨床症状を全く示さない報告がある。プロリン代謝異常と臨床症状との関連は不明な点が多く、発生頻度も不明である。本研究ではプロリン血症の実態を調査し、長期フォローアップ体制を構築するとともに、診断基準、治療法を確立させる。
研究方法
一次調査として全国の大学病院、基幹病院にアンケート調査を行う。二次調査、文献調査を行う。長期フォローアップ体制を検討するとともに、診断基準、治療法を確立させる。さらに、正常成人、精神疾患、新生児のマススクリーニングで血中プロリンを測定する。判明した高プロリン血症に対して遺伝子診断を行う。
結果と考察
アンケート調査では高プロリン血症Ⅱ型1例が判明したが、Ⅰ型は文献調査により2例報告を認めた。Ⅱ型の1例はインフルエンザ脳症を発症したことで診断されていた。日本人症例と文献的考察を基に高プロリン血症の診断指針を作成した。健常人の調査では人間ドッグにおいて血中プロリン値は正規分布をとるが、中には+2.5SD以上の人がいる。また老健施設において高プロリン血症疑い例1例を確認した。新生児マス・スクリーニングろ紙血を用いたプロリン測定は可能と考えられ、データ取得中である。高プロリン血症は非常にまれな疾患であることが示唆されたが、Ⅱ型の1例はインフルエンザ脳症を発症したことで診断されていた。Ⅱ型においては、けいれん閾値の低下、脳症感受性の亢進が示唆された。したがってけいれんや脳症、他の発達障害の中に本症が隠れている可能性もある。また、責任遺伝子の異常と臨床型との関係は欧米における文献から整理すると、酵素活性が著しく障害される例において、発達障害、けいれん、統合失調症との強い関連が示唆された。また、最近はプロリン代謝と細胞増殖、抑制、分化に対する制御機構の関連も証明されている。
結論
高プロリン血症の実態はまだまだ不明であり、スクリーニングによる血中プロリンの検討、我が国における高プロリン血症の遺伝子型、統合失調症におけるPRODH遺伝子異常を明らかにし、長期のフォローアップ、治療、支援体制について検討する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2010-06-08
更新日
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