遺伝性ポルフィリン症の全国疫学調査ならびに診断・治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200936182A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性ポルフィリン症の全国疫学調査ならびに診断・治療法の開発に関する研究
課題番号
H21-難治・一般-127
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 雅雄(東京都市大学 人間科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀江 裕(済生会江津総合病院 消化器内科)
  • 前田 直人(鳥取大学 医学部 )
  • 上出 良一(東京慈恵会医科大学付属第三病院 皮膚科)
  • 大門 真(山形大学 医学部)
  • 中野 創(弘前大学 医学部)
  • 川田 暁(近畿大学 医学部)
  • 高村 昇(長崎大学大学院 医歯薬研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝性ポルフィリン症はヘム合成系に関与する7つの酵素のいずれかが遺伝的に障害されることによって発症する代謝異常症である。本症には8病型が知られ、このほとんどが常染色体優性遺伝であるが、原因不明の病型も知られている。本症の実体は不明であるが、年間数十例が発症する極めてまれな疾患であり、診断方法や診断基準もいまだに統一されておらず、効果的な治療法もいまだに確立されていない。本研究では患者の立場に立って、疾患マニュアルの作成を行うことを目的とする。
研究方法
本研究の趣旨「治療のための指針またはそれに順ずるものを取りまとめ、疾病の実態把握に努めること」に従い、①全国疫学調査の実施、②診断法の開発ならびに診断基準の作成、③遺伝子解析による実態解明、④治療法の開発ならびに治療指針の作成、⑤患者のQOLの向上および相談窓口の開設についての調査研究を行った。
結果と考察
1.全国疫学調査:2009年1月から同年12月までに全国の医療機関を受信した推計患者数は急性ポルフィリン症35.5人、皮膚型ポルフィリン症172.5人であり、総計208.0人(各病型の内訳は省略)であった。また、1920年に本邦で第1例報告されてから2008年12月までに学会や論文などで報告された患者数は898例であった。2010年に第2次調査を行う予定である。2.診断法の開発ならびに診断基準の作成:新たに早期診断法ならびに鑑別確定診断法を開発し、診断基準の作成が進行中である。3.遺伝子解析による実態解明:全病型について遺伝子診断法を開発し、患者の実態について遺伝学的に検討中である。4.治療法の開発ならびに治療指針の作成:光線過敏の治療法を開発した。現在、患者への臨床応用を検討している。また急性ポルフィリン症に対する未承認薬ヘムアルギニン酸の治験の準備が整い現在患者への適用を検討中である。5.患者のQOLの向上及び相談窓口の開設について:済生会病院を中心として全国相談窓儀地を開設した。また、患者の会(さくら友の会)と協力して患者のQOL向上に対する様々な取り組みを開始した。
結論
遺伝性ポルフィリン症は極めて希少性が高く、これまでに本症の実体は殆ど不明であった。しかし、本研究事業にて、診断基準の作成、患者数の把握などを通じ、疾患概念の確立を目指すという初期の目的は十分に達成することができた。さらに、遺伝子診断による潜在的未発症の検出という発症予防手段の具体的方法を確立することができたため、人命を救いえる、かつ、医療経済上有用な情報をもたらす研究といえる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936182C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1.全国疫学調査及び過去に学会や論文として報告された全ポルフィリン症の集計が進み、実態解明に向けた成果が得られつつある。2.生体試料中のポルフィリン誘導体及び異性体の同時一括自動分析法を開発した。これによって、ポルフィリン症の生化学的診断法としての鑑別確定診断が可能になった。3.7病型のポルフィリン症の遺伝子診断法を開発し、未発症患者の早期診断を可能とするばかりでなく、患者の遺伝子異常の多様性及び実態解明に向けた研究が可能となった。また、世界で報告されていない遺伝子異常を見出した。
臨床的観点からの成果
1.早期診断を目的として、臨床現場にて採取される尿や血液に光を照射して簡単にポルフィリンの陽性反応を判定できるペンライト方式のポルフィリン検出器を開発した。2.皮膚型ポルフィリン症の主症状である光線過敏症の予防を目的とした治療法を開発した。3.済生会江津総合病院を中心として、患者と臨床家との全国相談窓口を開設し、医師への啓蒙ならびに患者のQOL向上に貢献している。
ガイドライン等の開発
1.患者の会(全国ポルフィリン症代謝障害患者の会:愛称(さくら友の会)と共同にて「病気を正しく理解していただきためのパンフレット」を作成(平成22年3月31日)し、患者に配布した。2.遺伝性ポルフィリン症の診断基準及び治療指針に関する案文を作成した。
その他行政的観点からの成果
平成21年度の研究において、ポルフィリン症の現状がある程度解明され、民主党による「ポルフィリン症を考える議員連盟」が結成された。
その他のインパクト
平成21年度内に山陰放送、TBS,NHK、福島テレビ、朝日新聞など多くのメディアで、ポルフィリン症に関する研究が厚生労働科学研究費補助金にて開始されたことが紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-