経口妊娠中絶薬導入後における人工妊娠中絶の実態調査及び適切な情報提供等に関する研究

文献情報

文献番号
202327031A
報告書区分
総括
研究課題名
経口妊娠中絶薬導入後における人工妊娠中絶の実態調査及び適切な情報提供等に関する研究
課題番号
23DB0201
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
中井 章人(公益社団法人日本産婦人科医会)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 潤一(聖マリアンナ医科大学 産婦人科学)
  • 後藤 あや(福島県立医科大学 総合科学教育研究センター)
  • 林 昌子(山口 昌子)(日本医科大学多摩永山病院 女性診療科・産科)
  • 福嶋 恒太郎(福嶋クリニック)
  • 松田 秀雄(松田母子クリニック)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、研究計画書に従い経口妊娠中絶薬(メフィーゴパック)導入後における、術式別実施状況をはじめとする我が国の人工妊娠中絶の現状についてデータ収集を行い、妊娠初期の人工妊娠中絶に関する実態を把握するとともに経口中絶薬導入に伴う医療機関・患者への影響を評価する。
研究方法
調査では、全国の母体保護法指定医師が1名以上在籍している3,941施設に対してアンケートを送付し、令和5年5月~10月に施行した人工妊娠中絶の種類と件数、合併症、搬送や時間外受信が必要であった症例の数、人工妊娠中絶前に施行する検査の種類、人工妊娠中絶を受けられる方に対する支援の実施状況、反復中絶の予防策などについて回答を求めた。
結果と考察
その結果2,096施設(回答率53.2%)より回答を得られた。回答施設では6か月間に36,007件の人工妊娠中絶が施行され、採用されていた方法は掻把法4,984件(13.8%)、吸引法22,513件(62.5%)、掻把・吸引併用8,075件(22.4%)、メフィーゴパック435件(1.2%)であった。人工妊娠中絶での重篤な合併症は114件(0.317%)であり、子宮穿孔・子宮破裂7件(0.019%)、輸血を要する大量出血5件(0.014%)、遺残による再手術63件(0.175%)が含まれていた。メフィーゴパック使用例での重篤な合併症は0件であった。メフィーゴパック使用症例での搬送や時間外対応の件数は6件(1.379%)であり、メフィーゴパックを使用していない人工妊娠中絶症例での30件(0.084%)より高率であったが、メフィーゴパック使用症例での6件は全て処方した病院での時間外対応であり、前述の重篤な合併症が0件であることや、薬剤の特徴を考慮に入れると、自宅待機中の出血など、軽微な事象での受診であったと推定された。また、妊娠12週未満の人工妊娠中絶前に常に施行する検査は、メフィーゴパックの場合には血算11.2%、血液型11.5%と実施率が低かった。人工妊娠中絶を行った症例に対するその後のケアに関して、避妊法についての情報提供は多くの施設で行われていたが、グリーフケア、メンタルヘルスケアや自治体団体等の窓口の紹介などの支援実施は低率であった。
結論
本研究により、本邦における人工妊娠中絶が安全に行われていることが確認された。また、以前の研究と同様に、手術法の中では吸引法で合併症が最も低いことが示された。さらに、メフィーゴパック使用例での重篤な合併症の報告はなく、問題なく運用できていることが推定できた。本研究で作成した一般国民向け資材はすべての人工妊娠中絶実施施設に送付し、人工妊娠中絶を検討または受けられた方に提供される予定である。また、人工妊娠中絶実施施設に対する提言も、全人工妊娠中絶実施施設に提示され、さらにウェブサイトでも閲覧可能とした。
本研究の結果でメフィーゴパックの安全性が確認されたことを受け、メフィーゴパックを採用する施設がさらに増加する可能性が高い。また、手術法実施施設では、吸引法の実施率がさらに上昇する可能性がある。資材の普及にともない、人工妊娠中絶を検討している方においては適切な方法を選択し、また人工妊娠中絶を受けた方においては適切なケアを受ける機会が増加すると考えられる。さらに提言の提示により、人工妊娠中絶実施前の検査の実施や人工妊娠中絶方法の選択などの面で、より安全な方法を採用する施設が増加するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2024-07-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-07-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202327031C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1)「人工妊娠中絶実態調査」の実施
(2)本研究により、本邦における人工妊娠中絶が安全に行われていることが確認された。また、以前の研究と同様に、手術法の中では吸引法で合併症が最も低いことが示された。手術法実施施設では、吸引法の実施率がさらに上昇する可能性がある。
臨床的観点からの成果
(1)「人工妊娠中絶実態調査を受けて実施施設への提言」を作成した
(2)提言の提示により、人工妊娠中絶実施前の血液型検査、決算検査の実施や人工妊娠中絶方法の選択尾の面で、より安全な方法を選択する施設が増加するものと考える。
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
本研究の結果で経口妊娠中絶薬の安全性が確認されたことを受け、経口妊娠中絶薬を採用する施設がさらに増加する可能性が高い。また、手術法実施施設では、吸引法の実施率がさらに上昇する可能性がある。
その他のインパクト
資材「人工妊娠中絶をお考えの方へ」を配布した施設からの追加要望や転載許諾利用申請もあり、資材の普及にともない、人口妊娠中絶を検討している方においては適切な方法を選択し、、また人工妊娠中絶を受けた方においては適切なケアを受ける機会が増加すると考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-06-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
202327031Z