若年性線維筋痛症の診断・疫学、病因・病態の解明と治療法の創出

文献情報

文献番号
200936181A
報告書区分
総括
研究課題名
若年性線維筋痛症の診断・疫学、病因・病態の解明と治療法の創出
課題番号
H21-難治・一般-126
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
横田 俊平(横浜市立大学 医学研究科 発生成育小児医療学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 清次(島根大学 医学部小児科 小児科)
  • 武井 修治(鹿児島大学 医学部保健学科)
  • 伊藤 保彦(日本医科大学 小児医学講座)
  • 森 雅亮(横浜市立大学 附属市民総合医療センター 小児科)
  • 村田 卓士(大阪医科大学 小児科)
  • 今川 智之(横浜市立大学 附属病院 小児科)
  • 岩田 直美(あいち小児保健医療総合センター 予防診療科)
  • 宮前多佳子(横浜市立大学 医学部 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
線維筋痛症(FM)は、他覚的所見が極めて乏しく、その病態や疾患概念の把握が容易ではない。小児例では成人例に用いられる薬剤の有効性は低く、治療薬が全くない現況にある。本研究は若年性FMの実態を把握し、その病態をコエンザイムQ10や脂肪酸代謝などこれまでとは異なるアプローチにより解明し診断と治療応用を図ることを目的とした。
研究方法
(1)若年性FM症例における臨床症状、治療経過の評価
症例の検討を標準化するために、痛みはアメリカリウマチ学会のFM分類基準の特徴的圧痛点評価を、疲労度は小児慢性疲労症候群国際診断基準などを用いた。
(2) 若年性FM症例における酸化ストレスの関与についての評価
遊離脂肪酸などを酸化ストレスの指標として臨床症状との関連を検討した。
(3)総コエンザイムQ10濃度、%CoQ10の測定:ユビキノール経口補充投与を行う。本薬投与を二重盲検法にて行った。効果の客観的評価として、臨床症状と酸化ストレスマーカーを経時的に評価検討した。
結果と考察
(1)若年性FM症例における臨床症状、治療経過の評価
FM24例(男児6例、女児18例)について検討した。発症時の平均年齢は11.7才、平均罹病期間は2.3年間であった。疼痛の部位は全身痛24/24例、関節痛19/22例、筋肉痛13/15例であった。痛覚閾値低下の所見は20/24例が陽性であった。
(2)(3) 若年性FM症例における酸化ストレスの評価
若年性FM症例の総コエンザイム(CoQ)濃度はユビキノール開始2週後に4,358μMと有意に上昇を認めた。酸化ストレスの指標である%CoQは8.0%であったが、ユビキノール補充により有意な低下を認め、同時に疲労の改善が得られた。またプラセボにより総CoQは886μMと低下し、臨床的にも疲労感の増悪を認めた。若年性FM症例は年齢に比し酸化ストレスの亢進状態と評価された。ユビキノール補充は、酸化ストレスと慢性疲労の改善に有用で、FMにおけるQOL改善薬としての有用性が示唆された。
結論
若年性FMの実態把握を試みた結果、成人例と共通する臨床症状や、小児例独特の特徴が把握できた。若年性FM例において酸化ストレスの亢進状態にあることが判明し、この改善にユビキノールの補充が有効である可能性が判明した。今後、更なる病態解明と小児にも適応可能な治療法の確立へ展開させてく所存である。

公開日・更新日

公開日
2010-06-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-03-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936181C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 若年性線維筋痛症症例の疾患特性を明らかとするため、疾患登録を行い各症例の症状経過に関して調査検討を行い、さらに疾患病態の解明として酸化ストレスの疲労に関する検討を行った。症状経過に関して不登校の頻度が高い、また成人に比べて抗うつ薬など薬物治療無効例が多いなどの小児疾患としての特徴が明らかとなった。そして酸化ストレスに関して血中の各種脂肪酸、ビタミンやコエンザイムを測定し、疲労感と酸化型コエンザイム上昇との間に相関を認めた。本疾患の病態に酸化ストレスが関連していることが示唆された。
臨床的観点からの成果
 若年性線維筋痛症の実態把握を試みた結果、成人例との共通症状や小児例独特の特徴が把握できた。さらに酸化ストレスの検討をコエンザイムを用いて行い、健常小児に比べて酸化型コエンザイムの上昇を認めた。さらにユビキノールの補充治療により倦怠感など臨床症状の改善に一致して酸化ストレスの正常化を認めた。この結果より若年性線維筋痛症において酸化ストレスの増加が病態に関連していることが明らかと成った。この成果より今後、若年性線維筋痛症に対するユビキノールの補充が治療法として有効である可能性が示された。
ガイドライン等の開発
 若年性線維筋痛症に対する診断ガイドラインは今後、必要となる可能性が高いと思われるが、わが国の若年性線維筋痛症症例に適したガイドラインを作成する上で必要となる疾患の特性について、今年度行った若年性線維筋痛症の実態把握を用いることが可能と思われる。
その他行政的観点からの成果
 若年性線維筋痛症の臨床的な特性を明らかとし、その小児疾患としての特徴に不登校など心理的要因の頻度が多く認められた。一方、わが国において不登校をはじめとした問題が小児期における問題となっている。若年性線維筋痛症は成人に比して社会的な認知が進んでいない。このため不登校などの原因に本疾患も関連していることを明らかとし、今後不登校症例に対して適切な治療・対応できる可能性が本研究により示された。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-